呪い
伏見城の茶室にて俺は父秀吉と共に今後に関して話し合いをしていた。
「のう捨よ、其方の言う通りに草薙の剣を額に当てた後から身体が軽く頭が澄み切っておるのじゃがどういうことか説明はできるかの?」
「はい父上…言いにくいことなのですが…熱田大神の加護を受ける前の前世では気付くことができませんでしたが、今ならば全てがわかります」
「ふむ…やはり呪いか?」
「はい…父上が病気になったり理性を失ったのも全て呪術のせいにございます」
「犯人はやはり内府か?」
「ええ内府配下の南光坊天海と金地院崇伝の仕業だと思われます」
「おのれ内府め」
「ねね様より父上を呪う際の媒介を譲り受けた内府の仕業により前世では暗殺されましたが、今世では私が受けし熱田大神の加護により父上がすぐに死ね歴史は呪いが祓われましたのでご安心ください」
「カッカッカッカ…そうかそうか」
「父上さえご健在ならば内府の好き勝手にされる未来を変えられると信じております」
ギラリと鋭い目つきをする父秀吉は恐ろしいほどの笑顔を浮かべて東を睨む。
「すまなかったのう捨や。しかし今後儂が健在とあれば未来は変えられる。豊臣家にあだなす者達と裏切り者達は許すべきにあらず。」
「父上、我ら豊臣家は後世では内府の企みにより罪人のような立場まで評判を落とされております。朝鮮出兵を推し進めた狂人、残虐な殺戮者、身分のない人間の策略による簒奪者などと酷い言われようです。しかし内府こそ源氏の名を語る偽物であり、家系図なども捏造しているのは周知の事実です。我々豊臣家は帝よりその存在を認められ日の本の守護をになった一族であります。豊臣家が徳川家に家格でおとることなどあり得ないことでございます」
「拾よよう言った!まさにその通りである。この太閤豊臣秀吉においては帝以外に見下せるものがいようか!豊臣家の豊臣家による世直しを否定することは誰にも出来んのじゃ」
「滅びの歴史の中で父上の遺骸は徳川家康の手により野風に長年晒されることとなります。おね様も豊臣家滅亡の原因でございます。」
「そうかそうか…やはりのう。情を捨てきれなかった儂の咎じゃ。あやつは破滅をもたらしたか。ならば毒を飲ませよう。子飼いの連中は儂の判断しだいかのう」
太閤豊臣秀吉は豊臣家を滅ぼす原因となった古女房の毒殺を示唆した。
石女…可哀想な存在であり太閤豊臣秀吉を支えた存在ではあったが、豊臣秀頼と淀君への嫉妬から豊臣家を滅ぼした悪女北政所の最後である。