11 断罪の町
周囲の反発を押し切って、私とテレンスの仲は日に日に深まっていた。毎日逢瀬を重ね、互いの心を通わせ合った。だけど、周囲の視線は冷たいままだった。どころか、その視線は苛烈さを増した。
ある日の夕暮れ時。いつものように人目を忍んで会っていると、突然頭上から石が降ってきた。
「きゃっ!」
辺りこそしなかったが、驚いて見上げると、見知った顔の主婦が二階から睨みつけていた。
「身分知らずめ! さっさと失せな!」
罵声を浴びせられ、テレンスが私をかばうように立ちはだかってくれた。
「大丈夫か、ルォシー」
「ううん、平気。でも、どうしてこんな……」
悲しみに顔を伏せる。するとテレンスが、優しく頬に触れてくれた。
「君は悪くない。ただ、世間の目が許さないだけだ」
「テレンス……でも、私たちは」
「ああ。この恋は、誰にも咎められない。二人だけの問題だ」
そう言って、テレンスは力強く私の手を握った。その温もりに、私は小さく微笑む。
けれど、それを許さないかのように、突如として野次馬が集まってきた。
「あれ見ろ! 噂の身分違いカップルだ! 襲うかァ!」
「風紀を乱すような真似しやがってよぉ! ぎゃひぎゃひぎゃひ」
嘲笑と罵声の数々。人だかりは瞬く間に大きくなり、まるで公開処刑のような様相を呈してきた。
「──いい加減にしないと、ただではすまないぞ」
品のない野次に、テレンスはルォシーを庇うように抱き寄せた。だが群衆はますます昂ぶるばかり。
「偉そうに、何様のつもりだ! あぁお貴族様だったなぁ!」
「賤民に手を出すたぁ言語道断! 変態さんがよぉ!」
怒号が飛び交う。あまりの険悪な空気に、二人とも言葉を失ってしまう。
「……行こう、ルォシー」
テレンスに手を引かれ、その場を後にした。だが人だかりは追ってくる。まるで魔女狩りのように、非難の目で私たちを追い詰めていく。
「待てよ! 恥を知れ!」
矢継ぎ早の咎めに、私たちは路地裏へと逃げ込んだ。ようやく人目から逃れられたと思ったが……。
「……身分違いは、ここまで忌避されるのね」
悲しげに呟く私に、テレンスは申し訳なさそうに目を伏せる。
「すまない。俺のせいで」
「ううん、私が貧民だから」
「ルォシー……」
お互いを思いやりながら、しかし、どうしようもない現実を思い知る。
この国の掟。身分によって人を差別し、隔てる非情な仕打ち。
それを変えるには、あまりにも大きな壁が立ちはだかっている気がした。
「……私たちは、どうしたら」
「ルォシー、聞いてくれ」
真剣な面持ちのテレンスが、両手で私の肩を掴んだ。
「俺は必ず、この状況を変える。君を、誰の目にも堂々と連れ歩けるようにしてみせる。国を変えてみせる──」
「テレンス……」
「だから、信じていてくれ。必ず道は開ける。俺たちの恋の前には、どんな障害だって」
その力強い言葉に、私の目に涙が滲んだ。
「……ええ。私、信じてる。貴方を、私たちを」
頷きながら、そっとテレンスに寄り添う。逆境の中でも、彼の腕の中にいれば、何も怖くないと思えた。
ざわめく街の喧騒。冷たい視線の数々。
それらを全て受け止めながら、私たちの恋は、確かに息づいている。
この先、どんな障害が待ち受けていようと、乗り越えていけると信じている。
二人の絆を、誰にも引き裂けはしない。そう心に誓いながら、テレンスの胸に顔を埋めるのだった。
貴重なお時間を割いてお読みいただき誠にありがとうございます。
お気に召しましたら☆☆☆☆☆からご評価いただけますと幸甚です。
ブックマークも何卒よろしくお願い申し上げます。
ご意見・ご感想もいつでもお待ちしております。




