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蛇が蠢く

 オロチから『蠢く蛇』の残党がこの学校を襲撃すると伝えてから8日後。その日はすぐに来た。

歴史の授業で眠気と格闘していると、ジリリリリとけたたましい音が鳴り響く。

『緊急事態発生。緊急事態発生。不審者数名が学校内に侵入。教員は教室の戸を即刻施錠し、生徒の安全を確保せよ。繰り返す。緊急————』

放送を聞いた教師は、慌てて教室の戸を閉める。

オロチから情報を貰っていた俺は、ハブ率いる『蠢く蛇』の残党が来たのだと確信する。叶うのであれば誤情報であって欲しかったが、残念ながらオロチの情報は正しかった。

俺とオロチはすぐさま認識阻害の魔法を自身にかけ、教室を飛び出す。

「敵は11人。ばらけて行動している。僕は第二校舎(ここ)を守る。クレインは第一校舎を」

「了解。頼んだぞ」

オロチの提案に従い、俺は窓から飛び出て第1校舎へ向かう。



クレインが第一校舎へ向かったのを確認してから、オロチは踵を返して教室へ戻る。

「ダメだねー、クレインは。僕なんかを信用しちゃって。やっとクレインからの監視が消えた。大暴れの時間だ♪」

オロチは魔法でクラスメイトと教師を眠らせる。

「ここまでは筋書き通り。一番の心配はクレインが爆速で襲撃犯を倒しちゃうことだけど…。ま、クレインとて()は一筋縄じゃいかないでしょ」

オロチはそう独り言つと、すやすや眠るシキを担ぎ、教室を去る。



「”火球(ファイアーボール)”」

クレインが火の玉を放ち、襲撃犯の1人を倒す。

クレインが第一校舎に突入してから51秒後。クレインは第一校舎にいる6名の襲撃犯の内、既に5名を撃破した。

オロチが警告した割には張り合いが無いことに、クレインは首を捻る。

「思ったより歯ごたえがないな。オロチが過大評価したのか?兎も角、これで第一校舎にいる敵はあと1人。場所は…職員室か」


シェーンブル魔法学校は国で一番の魔法学校。入学を許された生徒は例外なく素晴らしい才能を持った金の卵である。同時に、その金の卵たちを指導する教師もまた、一線級の魔法使いである。

今は授業中であるとはいえ、職員室には教師がそれなりにいる。だというのに職員室を単独で襲撃するなど、自殺行為以外の何物でもない。

逆に襲撃犯を保護することになるんじゃないか?

そんなことを考えながら、クレインは職員室へ向かう。


しかしクレインが職員室に着くと、目を疑うような惨状が広がっていた。

十数名の教師は1人残らず地面に伏しており、血の海の上に襲撃犯と思しき男が悠然と立っていた。驚いたことにその男はどう見ても10代後半の細身の少年であり、とても強そうには見えない。

少年はクレインに気が付くと、首を捻って訝しむ。

「ん?君は学校の生徒?なんで生徒が居るの?ま、いいや。死体に先生も生徒もないよね。出てこい、八岐大蛇」

少年は手を叩くと、黒い靄と共に八つの頭と八つの首を持った巨大な蛇が出現する。

異状の蛇。だだっ広い職員室が狭く感じるほどの巨体。何より、複数の色が混ざり合ってできる汚い灰色のような魔力。

1000年前、人類と魔王軍との戦いで何万人もの人間を食い殺したとされる、這いよる災害。八岐大蛇だ。

「小僧。まさかとは思うが、ニンゲン一匹を殺す為に我を呼び出したのか?」

「しょうがないだろ。僕は滅茶苦茶弱いんだから。文句言わずに、とっとと殺せ」

「誰に物を言っておる。雑兵が何人いようとも、殺すのに5秒もかからんわ」

八岐大蛇はそう吐き捨てると、8つある頭のうち1つから勢いよく炎を吐く。炎は大波のように広がり、職員室一帯を炎で満たす。

クレインは咄嗟に水魔法で防御するも、全ては防ぎきれず、制服の裾が焦げる。

「このレベルの炎!!まじで八岐大蛇かよ!なんで顕現してる!!!」

クレインは目の前の生物が本当に八岐大蛇であることに驚愕する。

同時に、八岐大蛇もまたクレインが八岐大蛇の一撃を耐えたことに驚愕する。

「我の一撃を防ぐとは、なかなかやりおる。雑兵と評したこと、ここに謝罪する。して、其方(そち)は何者だ?」

八岐大蛇の疑問に、クレインは挑発するような笑みを浮かべる。

「忘れたのか?悲しいなぁ。1000年前、お前を封印した魔術師だよ!!」

クレインの衝撃的な発言に、八岐大蛇は狼狽する。

「1000年前に我を封印しただと?戯言を………いや、その面、見覚えがある。我を封印したあの忌々しい魔術師と瓜二つ。まさか、転生か!!?」

「んなぁこたぁ、出来ねぇよ。それに、どうせ興味ねぇだろ?この戦闘狂(バトルジャンキー)!」

「ふむ。全くもってその通り。吾の心惹かれることは、其方のような強者との一戦交えることのみ!!」

八岐大蛇はそう叫び、8つの首からそれぞれ異なる魔法を同時に繰り出す。その凄まじい威力に、ルインは防御を諦め窓から屋外へと逃げる。

「逃げてばかりか?1000年前と変わらんな」

「その無駄に大きな体だと職員室はさぞ窮屈だと思って、外へ出てあげた俺の気遣いが分からないのか?頭は8つあるけど、脳みそは8つ無いみたいだな」

八岐大蛇とクレインは互いに煽り合いながら、魔法合戦を繰り広げる。

八岐大蛇のは8つ首という手数を活かして攻撃するも、クレインは8つの魔法を同時に発動して対抗する。

あまりに人間離れした光景は、決闘というより戦争と表現すべき苛烈さだ。

しかしそれほど高度な戦いも、ルインと八岐大蛇にとっては準備運動に過ぎない。

「ははは。やっと勘が戻ってきたわ!!」

八岐大蛇はそう言うと、自身が扱うことができる火、水、風、土、雷、氷、毒、鋼の計8種類の魔法を組み合わせた複合魔法を放つ。数種類の魔法が干渉し共鳴する複合魔法の威力は、1種類のみの単純な魔法とは次元が違う。まして八岐大蛇の魔力が込められれば、その威力は核兵器に等しい。爆ぜれば校舎など跡形もなく消し飛んでしまう。

「威力を考えろよ!クソ蛇が!空間魔法”異次元の亜空間”」

クレインはすかさず空間魔法を使い、複合魔法を空間ごと削り取る。

「空間魔法だと!それは魔王様が使っていた魔法。よもや、其方が使えるとはのう」

「なんか文句でもあるのか?」

八岐大蛇は首を振り、心底嬉しそうな声色で言い放つ。

「とんでもない。貴様を倒せば、我は魔王様より強いと証明できるのだろう?」

八岐大蛇みたいな戦闘狂、書いててたのちぃ

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