49話 スター
学校が冬休みになり、私は部屋にこもりっぱなしになった。隣の部屋の快晴も右に同じに。
——そういえば、近頃はあのいかれた目覚まし時計も静かだった。
ついに壊れたか……。
階下のリビングから大きな笑い声が聞こえてきた。
私はエアコンのスイッチを切ってから、部屋を出てリビングへと足を運んだ。人恋しさもあった。ひしひしとリビングのドア越しからも陽気な気配が伺えた。
「メリークリスマスっ!」
ドアを開けるなり、二人の声が部屋中に響いた。お母さんとマリアの頭には、それぞれサンタとトナカイのカチューシャ。私は、それとなく二人と会話を交わしたあと、椅子に座り、マリアが買ってきてくれたケーキを頬張りながら、二人の話に耳を傾けた。
あの日以来、お母さんは私に、勉強しろ、とは言わなくなった。
食べたあとは、すぐに自分の部屋に戻った。
窓を開けると、逃げ込むように冷気が暖まった部屋の中に入ってくる。やんわりと熱った頬を冷ます。白い息が、ほんの少し心の余白を空けた。
スマホ操作する。階下の二人が話していた渦中の人。推しのイケメンと言っていた。
ネット記事には、急激にSNSのフォロワーが減り、謝罪動画を投稿するも、おれはスターやから、と言う上から目線が、火に油を注ぎ燃えに燃えまくっていると書いてある。まあ、私には知ったこっちゃないが。
私は空に輝く星を眺める。
冬至を迎える十二月は、夜が長く星空を長い時間見ることができるという。あと、冬の星は綺麗に見えるとも。
ふと、華やかな星たちが気の毒に思ってしまう。
私には無理だ。
こんな真っ暗闇の中で光を放ち続けるなんて。いったい、どんなメンタリティなんだろ……
ふっと息を外に吐き、窓を閉めた。
頬が冷めたくなって、頭が冴えてきた。
困った、と体を反りかえるように天井を見つめて思った。
星空を見ると、神沢を思い出すようになった。神沢は今、何を思っているのだろうか。二0※※年もあとちょっとだ。
部屋の中がしんと底冷えしてきた。体を起こし、窓の外に目をやると、微かに雪がちらついていた。
寒いわけだ。
私はカーテンを閉め、よし、と気合いを入れる。電気ストーブのスイッチを入れ、ベッドの上の毛布を手に取り、そのまま椅子の上で包まる。
世間の電気代高騰の波は、星宮家にも押し寄せていた。
お正月もあっさりとしたものだった。
机に向き合いながら新年を迎え、そのまま毛布に包まったまま寝落ちして、目を覚ましたときには、もう朝とはいえない時刻になっていた。お正月らしいことといえば、お雑煮を食べた、そのくらいだろう。
結論から言ってしまうと、巨大隕石は降ってこなかった。
安堵? 不安? もう安心していいのだろうか。
そのどれもに違和感がないと言ったら嘘になった。
自分の内側だけに集中していると、外側の情報は、ただ事後報告を待つことだけみたいになって、虚無感みたいなものもある。
——お父さんは?
それでも私には、只々、机に向かって勉強するしかないのである。