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46話 戦友

 今日は、気晴らしがてら徳重にきていた。あれからというもの、私は週に一、二度程度、図書館を利用していた。



 今日はたまたま小春たちも居た。


「皆んなこのアプリ使ってるー?」


 美幸の言葉に、私と真由ちゃんは「知らなーい」と声をそろえる。

 すると私たちの向かいに座っていた神沢が、

「あ、おれ使ってるよ」と身を乗り出し、その横にいた神沢の友達も声を上げる。


「まじ? それおれも気になってたアプリ教えろっ」


 そしてそれを聞いた小春は、私の隣で立ち上がり、にこりとした笑顔で「じゃーん! 私も御用達ですー」皆に高らかとスマホを掲げ、私はあきれる。

 すぐに小春と神沢を中心にして集まった。

 小春は得意げにスマホを操作して見せびらかしている。私も少しの時間差で輪の中へと入る。


 ……なんだろ。


 この、とりとめのない瞬間一つ一つが楽しかった。

 でも、

「えー、まじかっ。AIと連動するのー?」

 美幸の大きな声に皆が、すごい、と同調したところで係員の人に注意される。

「他の利用者の方の迷惑になるので静かにして下さい」



「じゃ、私帰るわ~」「あ、なら私も~」「またねー」

 ここ最近なのだけど、何故だかこの面子が顔馴染みとなっていた。

 誰かが落ち合う声を上げることもなく、閉館時間が近づくと、ロビーにある自販機の前に集まり始める。ごく自然と。

 そして、特別な話しをするわけでもなく、他愛もない会話をして笑い、自販機で買った飲み物を飲み終えると、皆、自分のタイミングで別の戦場へと帰って行くのだった——



 家に帰ったあとは、ベッドの上であぐらをかき黙想をする。これは、近ごろ寝る前の日課となっていた。

 それは理屈っぽくいうのならば、これをするとしないとでは、翌日の機嫌と体調、集中力の調子がいい日の確率が、段違いに高いからである。

 まだ一カ月程度の統計ではあるけど、今のところは、これはやらないという手はない、という結論に至っていた。


 あと、これのおかげなのかはわからないけど、私の中の心の中の悪魔も大人しい。

 ついに掌握したのかもしれない。


 一つ大きく息を吐いてから、目を閉じる。

 呼吸を落ち着かせると、息が静かに奪われていき、少しずつ乱雑した感情たちが整理されていく感覚があった。

 今日は、図書館のメンバーに会えたせいか気分が良い。


 ほんと不思議だ。


 最初は一人、二人だったのが、いつの間にか三人、四人と集まるようになっていった。

 今日はいなかったけど、エリカにも会いたかった。先日、図書館でたまたま居合わせたエリカと一緒に帰った。エリカのお母さんの車で。そのお礼も言いたかった。


 何だか、一気に仲間ができたみたいだった。


 私は電気を消してから、布団に入り寝そべる。

 窓の外からの星の光のせいか、いつも眺めている天井の、四角い空も歩けるような気がした。


 今日はこのまま寝よ……


 厚手のカーテンに、ちょっと触れて閉めるのをやめる。

 床にした天井を走り回る自分を創造して、眠りにつく。

 明日もいい一日になりますように……。

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