28話 20※※年隕石落下
神沢のおじいちゃんは星崎神社の宮司だったようで、代々その家系なのだと言っていた。神沢の家も神社のすぐ側で、天体観測も苦ではないのだとも。
スマホで、宮司、と検索すると、神道に関わる人、神主、神社の責任者を務めている神職のことを指す、というウェブサイトに、いくつか行き当たった。
神、という文字の羅列に目が眩み、複数のタブをタップして閉じた。何だろ……
この気持ちは。急にどこか一般人には遠い世界に思えてきた。
神沢も将来は宮司に? 父親は自由に選択すればいい、と言っているとは聞いたけど。
私は一つ息を吐き出す。
——ちょっとばかり、頭の中を整理してみるか。
何となく気楽に、そう考えるようにした。
帰り道。神沢が自転車を手で引きながら話していた内容は、あまりにも現実離れしていたからだった。
湯気で曇ったスマホは浴槽の隅の方へと置いた。
まず、二人が持っている石については、神沢も真相はわからない。ただ、私の石が光るのを見て、神沢家で言い伝わる言葉を思い出したのだと言っていた。
大きく上に伸びてから、スマホを手に取り指で曇りを取る。
神沢から教えてもらったウェブサイトを閲覧する。迷わず翻訳をかけた。全て英文。このサイトには、主に宇宙物理学科について書かれているのだという。ブログの更新は五年前で途絶えていた。
そのまま、最新の記事に目を落とす。
ここには書けないけど何か重要な研究が進捗した、ということを皆に伝えたいのだと、文章から読み取れた。
前記事もざっと読み通し考えてはみるけど、私はこの手の知識については皆無だ。また専門用語ばかりで、理解に苦しんだ。
この筆者が神沢の憧れている研究者か、と浴槽の縁に頬杖をつく。
ぼんやりと画面を見つめていると、プロフィール欄の『ルーク・ブルーウォーカー』の名前に目が留まった。
ふざけてるのか?
映画か何かで、聞き覚えのある名前だった。
神沢はこのブログから、ある隕石の存在に辿り着いた。このリンクかな……
地球に接近する天体をすべてを発見できることを目標として設置された宇宙望遠鏡の映像がリアルタイムで見ることが可能だというサイトは。
あとこれか……
この羅列された英数字と訳のわからない記号のような文字。これらを用いた計算式により、かなりの確率かつ正確に星の動きを予想できるのだという。
何億年も先の動きを把握して生きてるとか、おまえは天才かよ。
だめだ。神沢の言葉が頭から離れない——
『その隕石が地球に落下する日わかるの?』
『……二0**年』
『はあっ⁈』
それはあまりに唐突だった。