9.最悪 (編集中)
今の音って銃声?でもどこから…。あ、また鳴った。
「なあ神代今のって…。」
「多分銃声だと思う。こっちにくるまで誰とも会わなかったから奥からだと思うけど…。」
「まさか、怪物が出たってことか?」
「それは…まだわかんない。…ねえ麻倉君。」
あたしは、さっき見つけた鞄を渡す。
「…おい神代、まさかとは思うけど行く気か?」
「うん。」
「お前はアホか!怪物がいるかもしれないところに行くとか!」
「あはは…。大丈夫だってちょっと様子を見てくるだけだから。」
「そんな必要ねえだろ!」
「そうはいかないよ。どんな奴がいるか確認しておかないとあった時に対処できないし、それにこっちに来るか確認しておかないと…。」
「なら俺も、」「だめ!」
「なんでだ!」
…麻倉君自分じゃ気づいてないみたいだけど、足が震えてる。
連れて行ってもし動けなくなったら…。
「もし怪物だったら、麻倉君はきっと動けなくなる。だから連れていけない。」
「っ!それは…。」
悔しそうな顔をする麻倉君にあたしは笑顔を作って、
「大丈夫!無理はしないから。麻倉君は2人のところに戻って。それですぐにセーフルームを探しておいて、あたしも後で合流するから。」
「けど、どうやって連絡とんだよ!」
「それは…あっそうだ!」
あたしはGフォンを取り出す。完全に忘れてた…。
「これで連絡が取れると思う。ほら麻倉君も出して!」
「お、おう。…ってなんか画面が変わってる。なんだこれ?」
「えっと…多分これかな?」
えっと…どうやるの?これ…通話のアプリに番号があったがからそれを…うん、多分出来たかな。
あたしの番号を麻倉君のGフォンに入れてもらい通話を押す。
「『聞こえる?』うん、大丈夫そう!じゃあ後で連絡するから!」
「お、おい!あークソ!気をつけろよ!」
心配してくれてる。なんだ、いいやつじゃん麻倉君。
麻倉君と別れて5分ぐらいかな、走ったから結構移動したと思うけど。
今の所何もない。ただ、あの後も何度か銃声は聞こえたからまだ争ってるとは思うけど…。
そう思いながら走っていると、
「いぎゃあああああああ!う、腕が!腕があああああ!」
!叫び声!ってことはやっぱり怪物か!一応どんなやつかは確認して…。
っ!心臓が痛い!鼓動の音がうるさい、それに寒気もする。
口の中も乾いて自分がすごく緊張しているのだとすぐにわかる。
…はは、麻倉君に色々言っておいてあたしもビビってるじゃん…。
向こうから見られないように気をつけながら先の通路を覗く。
そこにいたのは緑の怪物。
蛇の頭、身体中には緑の鱗、手足には大きな爪。
2足歩行で歩くそいつはまさしく蛇人間という言葉がぴったりの見た目をしている。
今日の朝に見たやつだ…。やっぱりこの階にいた。
「く、来るんじゃねえ!クソ!死ね!死ねよ!」
叫び声を上げながら銃を乱射する。
怪物にやられたのだろう、彼の体には腕が1本しかない。
そんな状態で狙いを定められるわけもなく、銃弾は当たらない。
「ああぁぁあ!!!クソ!クソ!クソォォォ!当たれよ!死ねって言ってんだろぉ!」
悲痛な叫び声と銃声だけが響く。
そんな彼を嘲笑うかのようにゆっくりと怪物が近づく。
「っひぃぃぃ!来るな!来るな!来るな!来るなぁぁぁぁぁ!」
!近づいてきたからか、銃弾が当たった。
少しのけぞり、体から血を流す。でもそんなことをしたら…!
「*******!!!!!」
「や、やめ!」
怪物は大きな爪を彼に突き立てた。体から血が吹き出し、ゆっくりと体が項垂れる。
…完全に体を貫通している。あれは…もう…。
吹き出した血で床が真っ赤に染まっていく。…昨日の光景が思い出し、吐きそうだ…。
「*************!!!!」
「っ!うるさ…。」
言葉とは思えない鳴き声を鳴らす。
耳を塞いでも聞こえてくる。蛇って鳴かないでしょ!
って何をして…。
「っ!う…!」
ミチミチと音を立てながら怪物は肉を引きちぎる。
そして、おもむろに真っ赤なそれを口に入れた。
「あいつ…、人間を…!」
食べていた。人間を。
大きな爪で器用に体を引き裂いていく…。
もうそこにあるのが人間だったかわからなくなるまで引き裂き続ける。
赤と黒で地面が染め上がっていく。そんな場所で貪るように人肉を食い続ける怪物。
……無理だ。もう無理!戻ろう!あいつを倒せる気がしない!
幸いまだ見つかってない。一旦戻って、
「おい、神代大丈夫か!」
……は?え…なんでここにいるの?麻倉君…。
それに相変わらず声が大きいよ…。今そんなことしたら、
「**********!!!!!」
最悪だ…。
見つかった、見つかった!見つかった!!
っ!最悪だ!
「逃げて!早く!走って!」
「っ!なんだ…あいつ!それにあいつの足元のあれ…。」
「麻倉!考えるのは後にして!早く行け!」
「え?あ、ああ…って神代!後ろだ!」
振り返るとすぐ後ろにいた。
っ!いつの間に!
まずい!避けられない!
「やめろ!」
怪物の爪が迫る…。ああ…これは死んだな。
そう思っていたら、怪物が後ろに下がった。?なんで?
ってあぶな?!ちょ、麻倉君!その鉈あたしに当たりそうだったんだけど?!まあおかげで助かったけど!
「********!!」
「うるさいな!これでも喰らってなさい!」
もう何度かぶっ放したからわかるけど、拳銃を撃つときはしっかりと踏ん張って狙いを定める!
引き金を引くと乾いた音が鳴り、衝撃が走る。
「******!」
叫び声をあげ血を吹き出しながらのけぞる。さっきもそうだったけどこれ効いてるの?!
わかんないけど、撃ち続けるしかない!
「いいぞ!効いてる!」
「わかってるから!この!」
引き金を引くたび乾いた音と、衝撃。
銃弾は一発一発確実に当てていく。このまま撃ち続ける…?!
腕が焼けるように痛い!っ!手の感覚が…?!手が震えて上手く狙いが定まらない!っく…それでも!
「お願い!当たって!!」
引き金を引く。乾いた音と一緒に、腕に衝撃が走る。
衝撃で拳銃が跳ね上がる…。あたしが握っていた拳銃が飛んでいく。感覚のない手じゃ握ってられなかった…。
なぜか焦りや、恐怖はなかった。きっとわかっていたんだと思う。
ああ……やっちゃった……。はぁ…もうちょっと力があればなぁ…。
「ごめん……麻倉君…。あたしのことはいいから逃げて…。」
「…………………。」
「今なら、あいつあたしを狙ってくると思うから。今のうちに行って…。」
「………………………。」
?どうしたの麻倉君。今ならあたしが餌になるから逃げられるよ?
…なんで逃げないの?…なんで鉈を構えてるの!…なんであたしの前に出るの!!
「何やってるの!早く逃げて!あたしのことはいいから!」
「…へっ嫌なこった!お前にばっかいい格好させるかよ!」
「*************!!!!!」
怪物はあたしから麻倉君に狙いを変える。
だめ、ダメ、ダメ!ダメ!!ダメ!!!やめて!
「******!!!!」
「っ!あぶねえ!食いやがれ!!」
怪物の爪を避け、鉈を振り下ろす。
怪物の肩に鉈が食い込む。傷口から血が吹き出し、麻倉君の顔が血塗れになる。まずい!
「うわ!なんだ!クソ!」
「!麻倉君離れて!」
「え!?うぐ!」
…………遅かった。
怪物の爪が彼の体の中心を捉え、体を貫く。
怪物が爪を引き抜くと開いた穴から血が流れ出る…。そしてゴミでも捨てるかのようにそれを地面に投げ捨てる。
投げ捨てられた体から流れ出た血が、ゆっくりと広がって地面を赤色に染めていく。
彼は…………ピクリとも動かなかった………。
「ああぁぁぁ!あああああああああああああああ!!!!!!」
なんで!どうして!ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
あたしは!あたしが!あたしのせいで!!!ああああああああああ………………
……………………。
腕の痺れはもうない。
私は地面に広がっている血肉に近づき、その中から拳銃を拾いあげる。…弾はまだあるな。
後ろから怪物の叫び声が聞こえる。
「******!!!!」
「だまれ。」
一発。放った弾丸は頭に当たる。
右側の眼球を貫き、血を吹き出す。それでもまだ生きている。
二発。再び頭に当たる。
残った左側の眼球を貫く。
「**…*……**…!」
「まだ生きてるか。」
引き金を引くがカチリと音が鳴る。
…弾切れか。なら…
私は怪物に近づく。足音で気づいたのか怪物は腕を振り回し抵抗する。
「ふっ!」
「***!」
投げつけた拳銃が頭にあたり怪物がのけぞる。
その隙に一気に近づく。そして肩に食い込んだ鉈を引き抜く。傷口からは血が噴き出ている。
気付いた怪物がこちらに腕を振るってくるが、回し蹴りを入れ体勢を崩す、そして
「死ね。」
ふらついた怪物の首に鉈を振るう。
切先が肉を捉え、骨を断つ。そのまま振り抜くと怪物の首は宙に舞った…。
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