15.友達
光明寺さんを連れてセーフルームを目指す。
まだ怖いみたいだから、ゆっくりと歩く。まあまだ時間はあるし焦る必要はないよね。
それにしても光明寺さん…スタイルいいなぁ。あたしよりも長身で、いろいろ大きい。…羨ましくないし。ないし!
「神代さん?どうしたのそんなじっと見て?」
「っは!いえなんでもないです。」
「?そう?ならいいのだけど…」
危ない、ちょっと見すぎちゃった。今は集中しないと。
周りは警戒してるけど、今のところは大丈夫そう。
「神代さん、聞いてもいいかしら?」
「ん?何?」
「神代さんはあの怖いのと、戦うのって初めてじゃないの?」
「うん、前に1回あったよ。」
「…怖くはないの?」
「あはは…そりゃあ怖いよ?けど死にたくないから。戦わなくてすむならそれでいいけど、さっきは光明寺さんを助けたいと思ったから。」
「そう…私にはできそうにないわ…。」
あたしも最初はそう思ってたなぁ…。怪物見た時とか怯えて逃げ帰ってたし、やっぱり怖いよねぇ。
でも今はなんていうか…慣れた?あいつを見てもあんまり怖いと思わなかった。全くないわけではないけど…
昨日まではビビってたけど…なんでかな?毒されてきてるのかな…
「んーまあ仕方ないんじゃない?あたしも最初はそうだったし。」
「そうなの?」
「うん。まあこんなのできるようにならないほうがいいよ…。」
「まあ…それは否定できないわね…。」
そう言って向けてくる視線はどこか哀れみを感じる。
まあいいんだけどね!あたしは必要だと思ってるから。もっと上手く戦えるようにならないと。
「そういえば、光明寺さんはいつ外に出たの?昨日?」
「私は昨日ね。まあ出たと言ってもすぐに別のセーフルームに入ったからあまり外の様子は知らないの。」
「そっかー…。まあ怪物がうろついてるし、あんまり1人でいると危ないからね。それが正しかったと思うよ。」
「ええ…私もそう思っていたのだけど、今日の映像を見て少し考えが変わってきてるの。」
「ああ…あのハゲの。そっか、食べ物とかはセーフルームにはないから探すしかないか…」
「そうなの…、私も一昨日から何も食べてなくて…」
「え?!それを早く言ってよ!」
急いで鞄の中から食料と水を取り出す。
よく考えればそうじゃん!昨日出た人もほとんどの人は食料を見つけてない。
あたしも見つけるのには苦労した。
それに食料よりもセーフルームを見つけないといけないから後回しにするよね…
怪物もいるしあたしみたいに食料を見つけた人の方が少数だよね。
「えっと…いいの?神代さんが見つけたのに…」
「いいから!気にせず食べて!また見つければいいんだから!」
「うん!ありがとう!」
本当にお腹空いていたみたいで、渡した分をすぐに食べ終えてしまった。
そんなにお腹空いてたんだ…
「はあ…本当にありがとう!生き返った気分…」
「はは…それはよかったよ。」
「…この恩はきちんと返すから。」
「気にしなくてもいいよ?」
「いえ、そうはいかないわ!きちんと返すから!」
ものすごい圧で言われたので思わず承諾しちゃった。美人の圧って怖い…
でもご飯を食べたからかな、少し落ち着いたみたい。よかった。
「さてそれじゃあセーフルームに行こっか?」
「いえ、もう動けるようなったから、あなたさえ良ければ探索をしたいわ。」
「ん?今向かってるセーフルームなら、昨日あたしが鞄に入らない分の食料もおいてあるから大丈夫だよ。」
「いえ、あなたに返す分を探す必要があるから。」
「それは傷を処置してからでいいから。今日は早いところ休も?」
「けど…」
「まだ怪我の処置もしてないんだから、しっかり治して明日頑張ればいいから!」
「うう…そうね…、わかったわ。でも恩は必ず返すから。」
よかった、納得してくれた。それじゃあセーフルームに行こう!
「…今日は結構人を見かけるな〜。昨日まで全くいなかったのに。」
「そうなの?」
「うん、昨日まであったのも7人だったから。…まあ何人かは死体だったんだけど…」
「ちょっと!怖いこと言わないでよ!」
「ああ、うんごめん。まあそんな感じで昨日まではほとんど人と会わなかったのに…。やっぱりあの映像のせいかな。」
「ええ、そうだと思うわ。私もあの映像を見ていても立ってもいられなくなって出てきたから…」
やっぱりあれはまずいよね…
まだ探索しようとする人はいいんだけど、さっきからいる何人かがこっちをすごく睨んでるんだよね。
あれ間違いなくあたしの鞄狙ってるよね。助けてあげたいけど、近づいただけで襲ってきそう。
「はあ…ほんと勘弁してほしいよ…。ただでさえ怪物のことで手一杯なのに人同士で争うなんて。」
「そうね…。私もそう思うけど、それは私が助けてもらったからだと思うわ。もしあなたに助けてもらえてなかったら、私も誰かを襲ってたかもしれないわ…」
「それなら助けた甲斐があったよ。けどなんとかしないと…」
「ふふ…」
「え?なんで笑うの?」
「あ、ごめんね。あなたすごいわね…、今の状況でも自分のことよりも他人のことを優先してる。簡単にできることじゃないわ。」
「ああ〜、まああたしは誰かを助けることで自分が落ち着けると思ってるから。ん〜多分元々こういう性格だったんだと思う。」
「ふふ…そう。私ね、記憶を無くす前はあなたと友達になってたと思うわ。」
「本当?うれしいよ!あたしも光明寺さんとなら仲良くなってたと思う!」
「静華でいいわ。私も結って呼ぶわ。」
「うん!よろしくね静華!」
こんな状況だけど、友達ができた。
…すごく嬉しい…!
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