12.結びつける人
「ねえ!聞いてる?結ちゃん!」
「え、何?!えっ誰?!っていうか顔が見えないんだけど?!怖っ!」
「むぅ〜こんな美少女に向かって怖っ!って何よ!失礼しちゃう!」
「えぇ…自分で言うそれ、まあうんごめんね…。えっとあたしは神代 結。あなたは?」
「あたしは** *よろしくね!」
「???ごめん今なんて?」
「あ〜やっぱダメか〜、しょうがないな〜じゃあ美少女ちゃんと呼びたまえ!」
「…………はい。」
「ちょっと!突っ込んでよ!もう!」
なんか騒がしい人。でもなんだろう…すごく落ち着く…それになんだか懐かしい気持ちになる。
風に吹かれてカーテンが揺れている。
窓の外を見ると夕陽が見え、教室にオレンジ色の光が差し込んでる。綺麗……。
「で、結ちゃん。君は何に悩んでいるのかな?このあたしに話してみたまえ!」
「いや…、初対面の人にそんな相談なんて…」
「真面目か!むぅ〜いいから!ほら、無料の占いだと思って!さあ、来い!」
「ええ…、まあうんわかったよ。じゃあ聞いてくれる?」
「うむ!」
「…あんまり茶化すと怒るからね?」
たはは〜っと笑う彼女。その態度に少し呆れたけど、この子になら話してもいいかと思った。
あたしは今まであったことを全て話した。なんでか誤魔化したり、隠したりしちゃいけないと思ったから全部。
「ていうことがあったの。ねえあたしはどうしたらいいと思う?もうわかんなくて…」
「あのね…長い!」
「ちょ?!真面目に相談してるのにそれはないよ!」
「いや〜だってね?朝起きてからの行動を全部話すんだもん!しかも2日分!せめて重要なところだけはしょってよ!」
「だって…いろいろあって、自分でも何が何だか分からないから…」
「はぁ…まったくしょうがないな〜。」
なんかすごく呆れられてるんだけど…。
「そうだな〜とりあえず思ったのは、いろいろ抱えすぎじゃない?」
「それ、前にも言われた気がする…」
「だってさ、自分のことで手いっぱいなのに他人のことまで気にしてたらそりゃ疲れるよ〜。」
「でも…あたしがやったことでその人が不幸になったら、それはあたしのせいだって思うんだよ…」
「ん〜けどさ、結ちゃんだってそうなるって知っててやったわけじゃないでしょ?なら全部が自分のせいなんてないと思うよ?」
「それはそうかもしれないけど…」
「それにさ、どこまでが自分のせいでどこからが他人のせいなんてわかんないよ?だったら全部を抱えむ必要なんてないよ。」
「…そう…なのかな…」
確かに。最初人を撃った時もあたしは、撃ちたかったわけじゃない。
麻倉君の時も彼を殺したかったわけじゃない。けど…やっぱりあたしの行動が原因なのは間違いないと思う。
「もう、まだ納得してないでしょ?」
「え?なんで分かったの?」
「そりゃあねぇ〜わかりやすいし。う〜んそもそもさ、これって答えなんて出ないと思うよ?」
「それってどういう…」
「だってそれぞれで考え方なんて違うし〜。今だって結ちゃんあたしの話聞いても納得してないでしょ?」
「うん…。やっぱりあたしが悪いって思っちゃうんだよね…」
この子の言いたいことも理解できる。起きたことは過去にして前に進む、きっとそれがいいんだと思う。
でもあたしはそんなふうには考えられない。過去にしたくても、それを受け入れられない。
きっと元々こういう性格なのかもしれない。…記憶がないって不便。
「ならさ〜もう逆に全部抱え込んだら?」
「全部…ってえ!全部?!」
「そ!その施設にいる人全員!だって結ちゃんの考え方じゃあもうそれしかないでしょ?」
「それは…」
「それにね全部抱え込むのは1人じゃなくていいんだよ?だってさ誰かを助けたならその誰かにも一緒に抱えて貰えばいいんだから!」
「!」
そっか。簡単なことだったんだ。誰かに頼ること…そうすれば良かったんだ。
あたしは全部1人でやらなくちゃって…どこかそう思ってたのかもしれない。
けど、それは間違ってた。麻倉君の時だって最初から2人で行っていれば違った結果になってたかもしれない。
そっか…こんなに簡単なことだったんだ…。でも、
「今のあたしにそんな人たちは…」
「大丈夫だよ!なんとかなる!」
「えぇ…そんなあっさりと…」
「結ちゃんはまだ思い出してないかもしれないけどね。結ちゃんの名前には意味があるの。」
そう言って、チョークを持って黒板に何かを書き始めた。
神代 結 あたしの名前だ。
「結ちゃんはね?神様の代わりに、結びつける人なの。」
「神様の代わりに…人を結びつける…」
「そ!まああたしも人から聞いたんだけどね〜。だからきっと大丈夫!結ちゃんが相手のことを思って行動すればきっと相手も答えてくれる。」
能天気に笑う彼女を見てなぜか、なんとかなるような気がしてくる。
「そっか…うん…なんかいける気がしてきた、ふふ…」
「あっやっと!笑ってくれたね!」
「あれ、ほんとだ。…ありがとね。」
「ふふ〜ん!どういたしまして!」
もう大丈夫。不安はあるけど、まだあたしは戦える。
さてそうと決まったら!早く起きないと。う〜ん夢って起きる時はどうすればいいんだろ。
あと気になってることがある。
「ねえ、あたしの名前の意味を知ってるってことはあたしのこと知ってるんだよね?教えてほしんだけど。」
「ん?あ〜そうしてあげたいのはやまやまなんだけどね〜、今の結ちゃんって記憶が眠ってる状態なんだよね。」
「眠ってる?」
「そ!だからあたしが話してることも、結ちゃん自身が知ってることなんだよ?」
「そうなの?あっもしかしてあなたの顔が見えないのって…」
「そういうこと!結ちゃんがまだ思い出してないからわからないだけ。あたしとしては早く思い出してほしんだけどね〜。」
記憶を取り戻す。そのためにはMカードをどこかで使うしかないのかな。
ん〜今の所使う場所が見つからないし、そっちも探さないとね。
「分かった、早く思い出すように頑張るね!」
「うん!待ってるよ!ま、焦らなくても自然と戻るかもしれないし適当に頑張ってね。」
「ふふ…うん適当に頑張るね。」
うん、もう大丈夫。なんだか元気が出てきた。
まだ不安はある。これからのことを考えるとどうすればいいかなんて分からない。
でも、なんでか…なんとかなる気がする!
記憶も取り戻したい理由もできた。今までのように訳もわからず行動するのとは違う。目的ができた。
そんなあたしを見て、彼女は微笑んでいる…多分。それがわかるように頑張ろう!
「もういいわね、はやく起きなさい。」
「えっ?」
どこから声が聞こえる。それと同時に景色が歪んで真っ暗になっていく。
ちょっと!まだあの子にいろいろ聞きたいのに!
「……また会えるよ。」
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