表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
103/126

2-39.悪夢

今回からまた、しばらくは雪原舞視点です。

「……といったものが欲しいのですが、どうでしょう…作ってもらえませんか?」

「そこまで難しい物ではないからできるわ。ただ、材料がないから数は作れないわよ。」

「構いません。よろしくお願いします。」


雨宮さんにお礼を言い、部屋から出る。緊張していたのか、ため息が溢れた。

わたしは栄華さんに言われた通り、雨宮さんに必要な物は頼んだ。あれこれ説明するのには本当に苦労した。

彼女に頼んだものがあれば、今までできないと思っていた作戦もできるような気がしてくる。

本番でうまく使えるように、受け取ったら練習をしておこう。それに拳銃も、少しでもうまく扱えるようにしておかないと。


…それにしても、ずっと気になっていることがある。栄華さんのことだ。

わたしに戦い方を教えて、必要な道具の説明をした後、気がついたらいなくなっていた。

すぐそばに居たはずなのに、煙のように消えてしまい混乱した。おかげで、道具の説明をするのには本当に疲れた。

せめてお礼くらいは言いたいかったのに、どこに行ってしまったのだろう。無事にまた会えることを祈っておこう。


彼女と雨宮さんのおかげで、わたしも戦うことができる。

今まで感じていた不安もおさまってきている。まだ怖いけれど、わたしにできることを精一杯頑張ろう。


「ふぁ…はふ…」


一息ついたら眠くなってきた。

時間は4時を回ったところ。外はまだ暗く、練習するには少し危ない。

かといって、ここでできることはない。まだ時間はあるし、少し休んでおこう。

わたしはソファーに横たわり、目を閉じる。疲れていたのか、すぐに眠りについた。




夢を見た。

どこか分からない暗い場所。

見渡しても何も見えず、暗闇だけが広がっている。

どうしていいか分からずオロオロしていると、どこからか声のようなものが聞こえた。


声の方に近寄ってみるけれど、暗くて何も見えない。

不意にポケットに重さを感じ、取り出してみる。無くしたはずの、Gフォンだ。

電源をつけ、画面のわずかな光で照らす。…わたしは息を呑んだ。


…鎖で繋がれた彼女がそこにいた。

薄く開いた目は、地面を見つめている。

至る所に血が固まった物が付着しており、呼吸で体が上下するたびに剥がれ落ちている。

すぐに駆け寄り、彼女に声をかける。


けれど、何度声をかけても反応しない。

とにかくここから彼女を連れ出さないと。そう思い、拘束具を外そうとするが固くて外れない。

どうしたらいいのかと辺りを見渡していた時だ。

彼女が何かを言い続けていることに気づいた。声が小さくて何を言っているのかは聞き取れない。

けれど、気づいた時になぜか背筋が凍った。…一体何を言っているのだろうか。


心配とわずかな好奇心から、彼女の声を聞こうと耳を傾ける。

瞬間、わたしの首に手がかけられた。

突然の出来事に対応できず、万力のように占められた手で声も出ない。

何もできずもがいていた時、ようやく彼女が何を言っているのかがわかった。


「…なんで、あたしがこんな目に会わないといけないの?あたしの何が悪かったの…?」

「っ!ゅ…いさん…」


わたしの声にさっきまで俯いていた顔をあげ、わたしと目が合った。

…何の感情も感じない、見ていると吸い込まれそうな不気味な目がわたしを見ている。

それに、声色はいつもの明るいものではなく、感情が抜け落ちたとても冷たいもの。

とても同じ人が発する声とは思えなかった。


「ねえ、見てよこれ。ここを何度も切られてさすごく痛かったんだよ?」


そう言って肩を指差す。綺麗な肌に突然、切れ込みが入る。

透明な何かが、少しずつ彼女肩を裂いていく。隙間から血が溢れ、腕を伝って地面へと流れていく。


「そこだけじゃないよ。腕も、足も、お腹も、背中も、胸も、内臓も、いろいろな所を何度も取られて、すごく痛かったんだよ?」


体が引き裂かれ、バラバラになっていくのに微動だにしない。

今すぐにでも彼女を助けてあげたいが、わたしにできるのは無駄な抵抗だけ。


ああ、きっと彼女はこんな目に合い続けているのだろう。今この瞬間も。

それなのにわたしは、呑気に眠って…でも、必ず助けにいきますから。だから、もう少しだけ…


「誰のせいでこうなったと思ってるの?あんたのせいでしょ?」

「!それ…は…」

「ずっとわたしの後をついて、怪物を殺すのも、人を殺すもの全部押し付けて。役立たずのくせに、人を利用する。」

「……」

「それにさあんた、あたしが神代結じゃないってこと…ずっと黙ってたよね?」

「っ!」


…そう、わたしはずっと知っていた。記憶を取り戻した時に、知ってしまった。

ここに連れて来られる前、わたしは神代結と会ったことがある。妹の心臓が止まった時彼女の顔を見た。

その時見た顔は忘れられない…だから、困惑した。


ずっと一緒にいる、結と名乗っている人の顔は完全に別人だったからだ。

顔だけでなく表情も声も、何もかもが違う。同姓同名かと思ったけれど、それも違うと分かった。

…それなのに、どうしてそう名乗っているのか分からなかった。


だからわたしは、彼女に不信感を抱いた。…抱いてしまった。

よく考えてみれば、彼女を疑う必要なんてない。ずっとわたしを助けてくれた、命をかけてまで。

そんな人を疑うなんてどうかしている。だからすぐにでも彼女に伝えようと思った。

けれど、どうしても伝えることができない。


彼女が本当のことを知った時、どうなるのかずっと不安だった。

伝えた瞬間、別人のような彼女になってしまったら?別人のふりをしているのは、わたし達を罠にかけるため?

もしかしたら、わたし達を…そんな被害妄想ばかりが膨らみ、結局伝えることができなかった。

わたしは彼女を信じている。信じているはずなのに…


「そうやって信じるふりをしてるのは、自分にとって都合がいいあたしでいてほしいからでしょ?仲間を騙して利用する気分はどう?心の中では、あたしのことを都合のいい駒だっあざ笑ってたんでしょ?」


呪詛のような言葉がわたしに降り注ぎ続ける。

それは違うと言いたい。でも、首を絞められているせいでそれも叶わない。

次第に視界がぼやけて、体が重くなっていく。きっと夢から覚めるのだろう。

そんなわたしに、彼女が言った。


「全部お前のせいだ。絶対に許さない。お前も、周りの奴らも…だからーーー」


何かが砕けるような音が首元から聞こえた。


「次に会った時に全員殺してあげる。」




「っ!はっ!…はぁ…はぁ…」


バネのように飛び起きると、さっきまでの光景が嘘のように明るい場所だった。

…どうやら、夢だったようだ。けれど、感じた恐怖は本物だったようで、全身に冷や汗をかいている。

それに、寝る前にはなかった毛布が、いつの間にかかけられていた。


「大丈夫か?」

「!…龍之介さん…戻ってたんですね。」


外に出ていたはずなのに、いつの間にか戻っていたようだ。

彼の顔を見て、僅かながら安心していたが、さっき見た夢が脳裏にちらつく。

…結さんは今は、どんな気持ちであそこにいるのだろう。

わたし達の助けをずっと待ってくれているのかもしれない。…けれど、もしかしたら…憎まれているのかもしれない。


「おい、大丈夫か?さっきもうなされてたし、心配したんだぜ?」

「そう…ですか。少し、嫌な夢を見てしまって。」

「この状況だ、そういう夢も見るだろう。顔でも洗ってきたらどうだ?」

「…そうですね、そうします。ありがとうございます…」


洗面台で、顔を洗い気持ちを整える。でも、夢で見た彼女の顔が頭から離れない。

彼女があんな目にあっているのはわたしのせいだ。

恨んでいるのだろうか、憎んでいるのだろうか…彼女の心情は計り知れない。

…絶対に失敗できない、必ず彼女を助ける。


そして叶うなら、もう一度彼女と一緒に……

キーボードを買ったら、1週間で壊れました。流石に酷い…



感想コメント、いいね、評価お待ちしております。

下の星も押してもらえると嬉しです。ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ