表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EDEN  狂気と裏切りの楽園  作者: スルメ串 クロベ〜
102/126

2-38.あたしは…

久しぶりに、神代結視点です。

時系列的には、2-29の後になります。

嫌な記憶ほど、忘れたくても忘れられないもの。あたしにもそういう記憶はある。

断片的に思い出す過去の記憶。その中には、そういった記憶がいくつか…いや、ほとんどそうだ。

小学校生の頃からずっとイジメに合っていた。

理由は…何だっただろう。最初は、家が裕福だからだった。


最初のうちは可愛いものだった。少し小突かれたり、嫌味を言われるくらい。

けど、子供というのは時に残酷だ。加減を知らない。

だからどんどんエスカレートしていった。小突かれるのが、突き飛ばされるのに変わり、嫌味が暴言に変わっていった。


それは中学を卒業するまでずっと続いた。彼女のおかげで、下校中や休日は何事もなかったけれど、学校では毎日が地獄だった。

クラスメイトも、担任も見ないふり。親は仕事で帰ってこない。日に日に心が冷たくなっていく。


何をしても楽しくない。周りにいる人は、全て敵にしか見えない。

そんななか唯一信じられるのは彼女だけ。…そんな彼女も、結局は…


中学の卒業式の日あることをした。式が終わった後に、主犯と教師に仕返しをしてみた。

けれど、何とも思わなかった。ああ、こんなものかと落胆した。


でもあの時は、もう少し上手くやっておくべきだった。

まさか、川に流したの見つけられるなんて思ってもなかった。


まあ、次はうまくやればいいか。それに、高校生になったらきっと…そう思っていた。

その先に待っているのが、さらなる地獄しかないのに…








「…っ…う…」


あたりから漂う悪臭と、全身に残る鈍痛で目が覚めた。

痛みがする箇所を見ても、傷はない。ただ痛みだけが続いている。まるでそこに傷があるかのように。

体の至る所に、乾いた血がついていて、体を動かすたびに剥がれ落ちていく。

口の中が不快で、床に唾を吐く。黒色をしているのを見ると、吐血していたのを思い出す。


…あれからどれくらい経ったのだろう。時間の感覚が曖昧だ。

1秒が何分にも感じられる。声に出して秒数を数えても、それが正しいと確信が持てない。

薄暗く、ただ静か。腕を動かした時に鎖が擦れる音だけが、虚しく響く。

少しずつ意識がはっきりしてくると同時に、忘れていた恐怖が蘇ってくる。


ナイフが肌に食い込み、肉を切断していく痛み。

血管がちぎれ、神経を切り裂かれた時の耐え難い激痛。

痛みで何度も叫び、喉が潰れるほどだ。喉から血が出ても、叫ぶのをやめられなかった。

それを何度繰り返しただろうか。…最後に見たのは、肉が削ぎ落とされ、露出した骨にナイフを擦り付けられているところだ。


泣いて許しを乞い、命乞いをしても続いた。

…これから何度もあの苦しみを味わうのかと思うと、おかしくなりそうだ…


そう、これで終わりじゃない。またすぐに、鶴木が現れて肉を削ぎ落としていく。

…ああ、いっそ殺してほしい。

こんなのが後どれだけ続くの?1日?2日…1週間…1年……


「つっ!ああ…ああ!!ああああぁぁぁあああああ!!!!」


恐怖を誤魔化すように叫ぶ。けれど、鎖の音が聞こえるたびそれは無駄なことだと思い知らされる。

…でも叫ぶ。もしかしたら、誰かが気づいて助けてくれるかもしれない。

そんな、ありもしない希望にすがらないと心が壊れる。自分の運命を受け入れたくない。


…けれど、現れたのは、


「もう、うるさいなー。うんうん、ちゃんと治ってるね。それじゃあ、またお願いね?」


悪魔のような笑みを浮かべた、元凶だけだった。

…けど、まだ諦めるわけにはいかない。きっと誰かが助けに来てーーーー








…どうしてこんな目に遭うんだろう。あたしの何が悪いの?

他人を助けようとしたことが悪いの?自分の罪を償おうとしたことが悪いの?

だって仕方がない。子供の頃から父に言われ続けてきたから。

だから、どれだけ嫌でもやらないといけない。あたしは正直、こんなのは馬鹿らしいと思う。


神代結…神様の代わりに、人を結びつける。

その意味を信じて、子供の頃からみんなの仲を取り持って、結びつけてきた。

………あれ?


あたし、子供の頃にそんなことしたっけ?

クラスメイトを結びつけるどころか、そのクラスメイトにいじめられていた。

そもそも、まともに会話した覚えすらない。ずっと1人だったのだから。

でも私は、みんなの仲を取り持って、結びつけてきた。少し失敗はしたとは思うけれど、私なりに頑張ってきたはず…


………何か変だ。

あたしのお父さんは、研究者で全然家に帰ってこなかった。お母さんが亡くなったせいで、研究しか目に入らなくなって…

…いや、父は政治家だったはず。たまに帰ってきた時は、私の相手をしてくれたのを覚えてる。

難しい本を、よく私に勧めてきて読むのには苦労した。


あれ………何かが……




「ねえ?聞いてる?」

「っ!」


また、いつの間にか気を失っていたらしい。目の前には、ナイフを持った鶴木がいる。


「あら、眠っていたのね。ごめんないさいね〜起こしちゃって。」

「……」

「うーん声も出せないのかな?まあ、いっか少し気になっただけだし。」

「……何を…」


あたしの声を聞いて、嬉しそうに会話を続け始めた。

…全身の感覚がない。痛みも、暑さも、寒さも…何も感じない…


「いえね、ずっと気になっていたのよ。ねえ、どうしてあなたはーーーー【神代結のふりをしているの?】」

「………え…」


今なんて言った?…何を言っているのか理解できない。

脳が彼女の質問を理解することを拒んでいる。

そのことを理解してしまったら、きっと…あたしはあたしじゃなくなる。


「何を…言ってるのかわか…らない。」

「?あなたが、神代さんを庇うために彼女のふりをしていたんじゃないの?」

「……あたしが…神代…結…」

「私はね、彼女に会ったことがあるの。だから言える、あなたは神代さんじゃない。」

「っじゃ、じゃあ…あたしは……あたしは誰…?」

「…ぷっあははははははは!もしかしてあなた、利用されてただけ?これは傑作だわ!あはははははは!」


何かが、欠ける音がした。

…何もわからない。あたしは利用されていた?じゃあ、あたしが今まで思い出した記憶は?

あたしが今まで感じてきた気持ちは?助けたいと思った意思は?…全部偽物だったの?

………わからない…もう、何もわからない……どうしてあたしはここにいるのだろう……

…………………………………あたしは誰…?


「********。********、********?」


目の目の人が何か言っている。…わからない…何も……








…………どれくらい経ったのだろう。再び扉が開いた。

入ってきたのは2人。けど、それが誰かわからない。…でも、どこかで見たような…

ぼんやりとして、何も考えられない。何もわからない。…分かりたくない…


?誰かが、あたしに触れた。…!いや!また、あれが始まる!もう嫌!嫌嫌嫌!!

叫び、暴れ、わずかな抵抗をする。そうしたら、目の前の人は何もせず離れてくれた。


あたしから離れ、何かを話している。その様子を見て、淡い期待が生まれる。……助けてくれる?

そう思ってしまった瞬間、押さえつけていたものが溢れ出す。

必死に声に出そうとするけれど、うまく言葉にできない。


お願い!あたしを助けて!もうここは嫌なの!

ずっと誰も助けてくれなかった!あたしの味方なんて誰もいなかった!ずっと孤独だった!

だからお願いします!助けてください!助けてもらえるなら、どんなことでもします!奴隷になります!

だから…だから……助けてよ…


…あたしの願いが届くことはなかった。

さっき触れた人が、何かを持って近づいてくる。尖ったそれを見て、さっきまでの希望が絶望へと堕ちる。

…ああまた、あの苦痛の時間が始まる。この先もずっと、何度も…もうあたしに救いはない。


そう思っていたあたしに最後のチャンスが来た。

体をゆすられ、鎖が擦れる音に目が覚めた。誰かが、あたしの手枷を外そうとしている。

うっすらと目を開いてみるが、顔が認識できない。誰だろう…でもきっとまた…裏切られる…


けれど、目の前の人はあたしを傷つけようとしない。

ただ、必死にあたしのことを助けようとしてくれてるように見えた。それに、その声には覚えがあった。

もしかして、龍之介?…そうだ。きっと、助けに来てくれたんだ。


さっきまで冷たかった体に、熱が戻ってくる。

…ああ、これでもう辛い目に遭わなくて済む。本当に…ありがとう…

……そう安心しかけていたのに…


彼はあたしのことを諦め、床に転がっている人を背をって部屋を出て行こうとする。

…え?なんで…なんでなんでなんで!!

あたしを助けにきてくれたんじゃないの?それなのに、どうしてあたしを見捨てて…!

待って…!お願い、行かないで!


声になっていたか分からない。けど、彼は立ち止まってくれた。

よかった、届いた。…そう思っていたのに…彼が、振り返ることはなかった。

開いたままの扉に歩み寄ろうとしても、手首につけられた拘束がそれを許さない…手を伸ばすことすらあたしにはできなかった。

もう涙すら出ない。…ああ、やっとわかった。最初から、誰もあたしのことを助けてくれるはずがなかったんだ。


そのことを理解した時、あたしの心は砕けた。

意識は急速に闇の中へと堕ちていく。


生き残るために信じてきた自分自身は、全て嘘だった。

あたしが助けてきた人…仲間は、誰も助けてくれない。

もうあたしに残っているものは、何もない。

…結局、この世界は地獄でしかない……誰も、あたしを救ってくれない…


ああ…全てが、憎い…

気温が下がったおかげで、作業しやすくて助かる。

モンハンNOWにハマっているおかげで、運動不足が少し改善された…気がする。


モチベーションになりますので、感想コメント、いいね、評価お待ちしております。

下の星もお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ