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「ねねの想いによって作られた病院ね〜」



 俺は自動ドアのガラス越しに見える外の景色を見ながら一言呟いていた。



『想いが届く世界』


 美由紀さんから言われた言葉を思い出す。

 

 これがねねの想いによって想像された世界だとしたら、閉ざされた出入口や、外の真っ白な空間は、一体なにを示しているんだか。


 おそらくあの杖は、召喚勇者の何かに反応したのだろう。そうでないと、世界トップクラスの魔力の持ち主であるセシルバンクルが、ここに飛ばされなかった理由がつかない。


 日本に帰るという目標達成にも、何かアイテムが必要なのかもしれない。


 でも希望も見えてきた。そういった話や文献を調べていけば、手がかりは見つかるかもしれない。



「まずはここから脱出しないと始まらないけどなぁ」



 先程から箱で殴りつけているけど、ガラスも壁もびくともしない。

 俺は殴り担当ではないんだけどなぁ。




「ねねちゃんっ!あぶないっ!!」



 唯の声だ!

 後ろにいる2人の方を振り返ると、なぜかあのときの黒いやつが2人を襲っているっ!



「くそっ!」


 俺は踵を返し、すぐに2人の救援に向かう。

 なんでこんなところにっ!魔の刻は終わったじゃないかっ!


 唯がねねを突き飛ばし、黒いやつの刀が振り下ろされた。


 唯が斬られた。まだ距離があるっ!間に合えっ!


 箱を投げるか!?ダメだ。上手く当たるかわからない。

 賢者みたいな瞬間移動があればっ!


 瞬間移動移動という言葉にピンと来た。走りながら箱を消し、新たに箱を発動させる。

 3人を箱の中に収納するために。



「あぶなぁ!」


 ギリねねが斬られる前に5mの範囲内に入り、3人同時に人体切断マジックの箱の中に収納することができた。


 試したことはなかったのだけれど、人体切断の箱は、顔、体、足と3分割する箱だ。

 3人が入れてもおかしくないと思っていた。




「ちょっ、ちょっとぉっ!トモっ!そこっ、触らないでよぉっ!そんで狭いぃぃっ!」



 狭いので諦めてくださいよ唯さん。俺はねねと唯に挟まれるように収納されてしまったので、顔の前にあるねねのおっぱい圧で息が苦しいの。



「ちよ、ちょっとっ!唯っ!右手はっ!?今、斬られたでしょっ!!大丈夫なのっ!?」


 俺の上の方で、ねねが慌てて唯に声をかけている。

 そうだった、ねねをかばって黒いやつに右手を斬られていた。


「あ~、なんかねっ、アタシも斬られたと思っていたんだけど、刀がすり抜けたんだよねっ!」


 唯が喋ると、俺の尻の辺りで柔らかいもの2つがが暴れる。

 正面側ではなくてよかったと安堵する。

 

「ぷはっ、剣の隙間から外が見えるから、黒いやつがどうしているか見てくれ」


 顔を傾け空気を確保し、俺からは見えない外の様子をねねに見てもらう。

 

 この状況は一人のときに一度経験済み。あのときは、黒いやつがこの箱に攻撃をして きた。

 本当に死ぬかと思ったもんなぁ。

 箱の中に俺がいるってことを認識していたわけだ。


「うーん、あまりよく見えないんだけど、近くにいないんじゃないかな」


 うん。やはりおかしい。唯が斬られたけど斬られていなかった件も含めて。


「っていうか、なんであの黒いやつがいきなり出てきて襲ってきたの?

 このねねのイメージの病院、この場所に全くそぐわないと思うんだけど」 


「あっ!黒い人が来る前、ねねちゃんと話してたんだよねっ。

 あの時の黒い人ってオバケとかじゃないのかなって。

 って、なんでそんな話になったんだっけ?」


「確か、唯が静かな病院ってオバケとか出そうって言っていたんじゃなかった?

 そのとき私、前に襲われたことを思い出してたのよ。きっとそれかな。呼び出しちゃったのは」


 ねねが想像したら現実になるってことなのか?

 ただ、唯が斬られた事は無かったことになったということなのだろうか?


 しかし、ねねは唯が斬られたことを見ていて、自分がこのまま斬られてしまうと覚悟までしたようだ。

 たまたま俺の手品スキルが間に合ったから良かったものの、あのままだったら斬られて死んでいた?


 よくわからないことだらけだけど、ねねがこの世界から脱出して帰るって思えば、ここから出られるんじゃないのかと提案してみる。


「うーん、でもどうやって?

 この病院の出口も開かないのに帰れるわけがないんじゃない?」


「トモじゃないんだからっ!そんなに意味不明なことするのは無理なんじゃないの?」


 2人がすごく常識人で、俺だけ非常識人に聞こえるのだけれど、あまり悲しむことなく次に進もう。


「じゃあこうしようか。実は俺、最近『脱出マジック』を覚えたんだけど、それなら元の世界に戻れると思わない?

 どんなマジックだと思う?」


 マジックショーには脱出術というものがあり、手錠をかけられていたり、水中や燃える箱の中など、危機的状況から脱出する手品がある。


 実際にはやったことがないのだけれど、もし、ねねの想像したことが現れるならば、ここから脱出できるのではないかと考えた。

 ねねに先入観を与えないよう、俺がそんなマジックが出来ないことは伝えない。


「そうねぇ。トモならばそんなことができそうね。

 私が見たことあるのは、ピンチに陥った状況のマジシャンがカーテンで隠されて、10秒数えたら脱出しましたってやつよね。


えっ?」




「にゃっ!ママっ!」


バキッ


「‥‥あっ」



 その瞬間、俺たちはあの病院に飛ばされる前の、フェリと賢者のいる部屋に戻っていた。箱からも開放されている状態だ。

 

 フェリが唯の方に駆け寄ってきたとき、バキッっという嫌な音を聞いた。


 

 俺たちが急に居なくなってしまって不安だったのだろう。フェリは唯に抱きついて泣いている。

 

 唯も優しく、フェリを抱きかかえている。

 感動の再会シーンである。



 口を開けて呆然としている賢者様と、口を開けて固まりながら青ざめているねねと、その2人の目線の先にある真っ二つになっている杖、そしてその事態を見なかったことにしたい俺さえ居なければ。



 感動の再会シーンである。

 

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