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第3話 異世界の旅も大変だぜっ!! 2

 広大な砂漠の中、かんかんな太陽に照らされる二つの影があった。


「水分補給って大事なのね……、頭がガンガンするし体に力が入らないわ……」


 カリファは倒れながらチー太郎の言葉を思い出す。


「あぁ……、 もう動けない。このままじゃ死んじゃうよ……」


 チー太郎もうつぶせになって泣き言を言い始める。


 砂漠越えの途中で水がなくなり道中を急ぐチー太郎達だったが、ろくに休みも取らない無理が祟ってか砂漠のど真ん中で行き倒れてしまっていた。


「こうなったのもカリファのせいだ! こんなんなら1頭で旅に出るんだった!」


「はあっ? あんたなんて全然荷物持てないんだから旅なんてできるわけないじゃない。確かに今回は私のミスだけど……」


 カリファはチー太郎にキレられムッとするが、今の状況が自分のせいの為あまり強く言い返せない。


「こんなところで野垂れ死にしたくないよ! 俺たちが死んじゃったら魔王はどうするんだよ! せっかく生き返ったのにこれじゃあ台無しだよ!」


 絶望的な状況にやけになったチー太郎はカリファに八つ当たりしてしまう。


「あーもう、うるさいわね。昔はあんなに可愛かったのになんでこんな小憎たらしく育っちゃたのかしら!」


 言われ放題だったカリファも頭にきてつい言い返してしまう。


「カリファだって昔はクールだったのになんでこんなバカになっちゃったんだよ! はあはあっ…… うぅ……」


 2度も死んだ経験があるチー太郎だがそれらは一瞬で意識を失った為に大した恐怖はなかった。だが今回はじわじわ死に近づいていく恐怖に感情のコントロールが効かず思いもしないこと捲し立ててしまう。


(こんなこと言いたいわけじゃないのに……、ごめんよカリファ……、あれ?目が霞んで……)


 頭の中では後悔しながらも意識も朦朧として訳が分からくなる。興奮していたはずなのに急に眠気にも似た感覚に襲われ目を開けていられず意識が薄れていく。


「なによ! あんた、私がいなかったら2年前に死んでたじゃない、今まで何度助けてあげたと思ってるのよ! 最近強くなったからって調子に乗るんじゃ……、あれ? チー太郎?」


 カリファも怒り言い返すが、チー太郎が何の反応もしないことに気付く。


「チー太郎っ! 起きなさいチー太郎!!」


 チー太郎が危険な状態だと気づいたカリファは必死に呼びかけるがチー太郎がその声に答えることはない。


(ごめんよ……、ごめ……ん……よ……)


 カリファに暴言を放った後悔と死への恐怖の中、チー太郎はゆっくりと意識を失った。



------



「母ちゃんっ! 退屈だから俺遊びに行きたい!」


 異世界にチーターとして転生して2週間ほど経った。チー太郎という名前を与えられすくすくと成長している。最初は動かし難かった体も自由に動かせるようになったが、やることが兄弟たちとじゃれあうか昼寝くらいしかない。せっかく異世界に転生したのに退屈で仕方なかった。


「あら? チー太郎はもうしっかり話せるのね。目も開くのが早かったしもしかして優秀? 末は博士か大臣かしら?」


 母親はチー太郎が話しかけてきたことに少し驚く。


「母ちゃん、チーターが博士や大臣になれるわけないだろ」


 博士や大臣は人間の仕事だからチーターがなれるわけがない。まだチーターとして生きる運命を受け入れられているわけではないが無理なことくらいチー太郎にもわかる。


「そんなことないわよ。あなたのお父さんだって『俺はビッグになるんだ!』って言って、あなたたちが生まれる前に旅に出ちゃったんだから。まったく、甲斐性がないわ」


 母親はあきれたように父親のことを説明するがその声はどこか明るい。チー太郎の父は親としてはダメチーターのようだが夫婦仲は良好なようだ。しかしそんなことは今のチー太郎にはどうでもよかった。


「母ちゃん! そんなことより遊びに行っていい?」


「だーめ、外は危ないんだからみんなと遊んでなさい。お母さん今から狩りに行ってくるから、ちゃんとお留守番してるのよ」


 母親はチー太郎の頼みを却下すると狩りに出かけてしまった。


「ちぇっ、だめかー。遊んでなさいって言われても飽きちゃったよ」


 チー太郎が兄弟たちを見るとみんな昼寝をしている。これじゃ遊ぶこともできない。まだ眠くないチー太郎は何をしようかと考えているとふと思いつく。


「今、誰も見ていないんだからチャンスなのでは? まあすぐに戻れば大丈夫だろ。よーし遊びに行くぞ!」


 母親の言いつけを破り、チー太郎は初めての異世界を目に焼き付けるためにこっそりと巣から抜け出した。



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