順風満帆
「あたしから逃げようとしたって無駄なのよ!」
軽快な通知音とともにチャットのメッセージが浮かび上がる。
うぜーヤンデレ。これだからバカは嫌いだ。
横目にチャットの送り主とは対照的に美しい女を見る。
信楽香苗。某有名大学付属高校3年生。俺の本命彼女。
金と知識と胸にはよく富んでいて非の打ちどころのない彼女。
一方チャット女
笹野みな。下から数えた方が早い都内公立高校1年生。俺の遊び相手。
顔が香苗より少しいいだけで俺の本命ぶっているところが気に食わない。
俺のロリコン心を刺激するだけの女。
一応俺は香苗の通う高校が付属している大学の1年だ。
「誰ですか?」
香苗が尋ねる。
「みな」
「ああ、みなさんですか。」
香苗は静かに笑った。学のある女はほんときれいに笑うよな。
「怒らないんだな」
「怒りませんよ。総さんくらいの人に私ひとりっていうのはさすがにもったいないです」
自分が本命と分かっているからこそ彼女は平然としている。
「あたしから逃げようとしたって無駄なのよ!」
お前とは違うんだぜ。
珍しく彼女の方から俺のほほに口付けをした。
肩に当たった胸を強めに揉む。それに対応するように彼女は身体を誘うようにうねらせる。
いい感じのムードになったときにスマホがまた鳴った。はーっと大きくため息をつく。
「みなさんですか」
香苗が問う。
「多分な」
スマホを取りに行こうとすると、香苗が俺の腕を握りしめ、
「行かないで、ください。無視すればいいじゃないですが」
なんだコイツ。まさか嫉妬しているのか?あのみなに。
どこかがっかりした気分で「なんか言わないと、メッセージ連投してくるから」と強引に腕を抜いた。
そしてスマホを手に取った。