5 エルフ系少女とスタンピード
二人が町に戻ると早速葵はクリスタルキーを作ることにした。
「【錬金】」
スキルを起動させると自分の目の前にサッカーボールサイズの魔法陣が出てきた。
「水晶3つと各魔石を1個ずつで……【錬金】」
材料を魔法陣の上に置き、錬金スキルを使うと材料が浮き、一つにまとまり、しばらくすると半透明の鍵がゆっくりと降りてきた。
【クリスタルキー】
マイホームに行くことのできる鍵。
空中に鍵の動作をすると行ける。
「ルナ、できたよ!」
「それじゃあ行ってみようか」
「おー」
シロはルナの手をつなぎ、鍵を回す動作をした。
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二人を出迎えていたのはは見渡す限りの地平線だった。
「えーっとぉ?」
「そりゃぁ最初だもんね。 なーんにもないはずだよね」
「だからってあまりに何もなさすぎるでしょー!」
シロの叫びは地平線にそのまま吸い込まれていった……
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シロが叫んだ後、しばらくマイホームのメニューを見ていてその中に設置コスト0で設置できるものがあったので設置することにした。
「じゃーん休憩所!」
設置した休憩所はちょっと大きな公園に置いてあるような屋根とベンチがあるものだった。
「まあ最初はそうだよね。 なんというか一番無難だし」
まさかのルナと全く同じ道をたどっていたらしい。
「まあ何にもないよりかは…… 何か余計ひどくなってない?」
むしろ大草原の中にポツンとベンチがあるのはなんというか虚しさまで感じてくる始末だった。
「まあ最初はこんなもんだよ。 さて……私もそろそろやりたいことがあるからこの当たりでバラバラで行動しない?」
「別に大丈夫だよ。 やりたいことは決まってるし」
「それじゃあまた後で」
そういうとルナはシロにフレンド申請した後、自分の鍵シロのマイホームから出て行った。
もちろんシロは承諾した。
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「じゃあボクは……【魔法作成】」
シロは職業スキルである魔法作成を試すことにした。
この世界の魔法は改造ができるらしく咲希の雷装斬月も斬月を改造したものらしい。
「なるほどなるほど……よし!」
魔法作成のルールを理解したシロは早速ファイヤーボールの改造を始めることにした。
幸い、魔法を作るためのアイテムである空のスクロールも初期アイテムから持っていた。
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「【魔法構築】……完成! 名前……うん【ファイヤーボール・爆】にしておこっと」
葵にネーミングセンスは求めてはならなかった。
効果は爆の名前をつけただけあって魔法形式の魔法範囲拡大をルール限界である5つまで積む改造だった。
「こんなところで空撃ちなんて無粋なことはしないけどね~」
やはり楽しみは最後に取っておくのがシロだった。
魔法を改造し終えた葵はベンチに寝っ転がってぐーたらすることにした。
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グーたらしてしばらくすると運営からアナウンスがあった。
【クラッチにてスタンピードが発生 直ちに防衛せよ】
「お? イベントかな?」
今さっき作った魔法を試すチャンスとばかりに葵は町に戻っていった。
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町に戻ったシロは外に出るため、北門に向かって暗い中とことこと歩いていた。
AGI0は伊達じゃなく全身鎧というAGIデバフがかかる装備を包んだプレイヤーにも負ける始末であった。
「いいもん。 ヒーローは遅れてやってくるっていうし」
それでもシロはのんびりと外門まで歩いて行った。
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シロが北門につく頃にはすでにスタンピードは中盤らしく数百を超えるゴブリンやクモがにじり寄ってきていた。
「うひゃぁいっぱい。 よし、じゃあまずは景気よく一発! 【ファイヤーボール・爆】!」
シロの放った魔法はモンスターの軍勢のど真ん中に着弾し改造前のファイヤーボールとは比べ物にならないほどの轟音と爆発が上がっており、着弾地点にいたモンスターたちは全員光になって消えてしまった。
因みにこれが葵初めての直撃であることは言うまでもない。
「何これ……最っ高……もう一発! 【ファイヤーボール・爆】! 【ファイヤーボール・爆】!」
シロは完全にほおけた状態で次の魔法をぶちかましていた。
今度はさっき撃ったど真ん中ではなく左右である。
今のシロは完全に敵を殲滅させる気で魔法を撃っていた。
「はっはっはー! これこれー! ボクが求めていたのは!」
【メビウススキル 魔王の願い を獲得しました】
どうやら魔法を撃っているときに獲得できたものらしい。
獲得の時の音声を聞き逃してしまったようだ。
「新しいスキル…… 確認は後! 次だ次ー!」
シロは流石に前線に打ち込むのはほかのプレイヤーを巻き込む恐れがあるため次の門で魔法を撃つことにした。
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シロは北門からとことこ移動し、西門に来ていた。
シロの足の遅さでは移動に時間がかかるのか終盤に差し掛かっており、北門よりも多くのモンスターがおり、ゴブリンだけではなくオーガも一緒に町に攻め込んできていた。
まあそんなことはシロにとっては何も関係はないのだが。
「【ファイヤーボール・爆】!」
さっきとほとんど同じ感じで魔法を撃っていたがさっきと違って音がさらに大きくなり範囲もさらに増幅していた。
「おー? さっき手に入れたスキルかな? 確認するのが楽しみになってきたなー 【ファイヤーボール・爆】!」
流れるように打った魔法はまた敵のど真ん中に打ち込まれ大爆発を起こした。
「たーまやー! ふふ、最高すぎるこの魔法! 【ファイヤーボ…… あれ?」
次弾を撃とうとしたが敵が一匹もおらず、代わりに車並みの大きさの真っ黒な鶏が一匹そこにいた。
あれがスタンピードのボスらしく多くのプレイヤーがその鶏に群がっていた。
「うーん……流石に人に迷惑かけるのは嫌だし……見てよ」
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しばらくして、多数のプレイヤーに囲まれて滅多打ちにされた鶏は倒され、メッセージが来た。
【スタンピードは鎮圧されました】
「これで終わりかな……もうちょっと打ちたかったけどまあしょうがない帰りますか」
シロは今回のイベントで手に入れたアイテムを確認しながら町に戻っていった。