4 エルフ系少女と洞窟探索
二人は咲希のマイホームから町に戻った後、決めた通りにスキルロールの売っているお店に行くことになった。
町の中には思ったよりもプレイヤーがいて、すれ違った人は大体一度は目を寄せていた。
足の遅いシロを見ているのか完全にマントで防具を隠しているルナを見ていたのかは定かではないが。
「シロ、ついたよ」
「ここに売ってるってこと?」
「そう、じゃあ入ろうか」
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「いらっしゃい」
最初に声をかけてきたのは細身の若干胡散臭いおじさんだった。
おじさんの胡散臭さとは裏腹に、店の中は魔法道具のようなものできれいに装飾されていた。
「確かこの辺に……あった!」
「これが錬金?」
【錬金】
錬金術が使えるようになる。
「そう。 とりあえず渡しておくから。 私も新しいスキルを見たいし、シロも見て回ってみれば?」
「うん。 そうするよ」
シロは棚に山のように積み重なれている巻物をあさることにした。
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結果を言えば数があまりに膨大でこの短時間ではいいものを見つけられなかった。
ルナの方を見ても巻物を1つも持っていないのでおそらく見つからなかったのだろう。
「おじさん、これお願いします」
「おう、1800ゴールドだ。 いいか?」
「う、結構いたい……まあいっか。 お願いします」
シロはどうせ後で1800ゴールドなぞ簡単に稼げるだろうという思いで、買うことにした。
「まいど」
「ありがとうございます」
「シロ、終わった?」
「うん」
「それじゃあ素材集めに洞窟まで……っていっけね肝心なもの忘れてた。 ちょっとここで待ってて」
ルナはそういうとシロをスキルロール店前に残してどこかへ行ってしまった。
「あー……まあ待ってればいいか」
シロはルナを待っている間にステータスの振り分けと錬金スキルの獲得及び確認をすることにした。
【ステータス】
種族 エルフ 所持金 200ゴールド 職業 魔法使い
LV 1 →2
SP2 → 0
HP 50/50
MP 100/100 → 165/165(スキル適応)
VIT 0
STR 0
INT 10 → 12
AGI 0
DEX 0
DEF 0
LUK 0
【装備】
頭 なし
胴 なし
右手 なし
左手 なし
腰 なし
右足 なし
左足 なし
武器 【初心者用 魔法使いの渦巻杖】
[装飾品]
なし
【スキル】
【ノーコン】
職業スキル
【魔法作成】
最初のころと特に考えは変わらずINT極振りである。
ステータ振りが終わっシロは、錬金のスキルを取るため、巻物を開いた。
「おぉー綺麗……あ、終わっちゃった」
巻物を開けると俗にいうルーン文字のようなものが浮かびあがり
【スキル 錬金 を獲得しました】
と出て収まった。
「スキルは取れたから……そっかレシピとか確認しておかなきゃ」
シロは錬金で何ができるか確認することにした。
【クリスタルキーの作成】
水晶 3
赤魔石 1
黄魔石 1
青魔石 1
「確かに洞窟で取れそうな素材ばっかりだね」
魔石については魔法を作れるということ以外、ろくに知らず、取り方は全くわからなかった。
まルナが洞窟以外にはいかないような口ぶりだったのでおそらく洞窟で取れるのだろう。
きっと。
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しばらく錬金のレシピを見ていたシロだったが重大なことに気が付いてしまった。
あまりにDEXが低すぎてそれ以外の物を作れないのである。
まあシロからすれば魔石関係だけで十分で、ほかの物はほかの錬金術士に作ってもらおうという考えだから特に関係ないのだが。
「ごめーん。 肝心なもの忘れてたよ。 はいピッケル」
そうこうしているうちにルナが帰ってきてピッケルを渡してきた。
多分このピッケルで水晶や魔石を掘り出すのだろう。
「こっちも色々確認出来てよかったから大丈夫。 それじゃあ洞窟に……洞窟ってどこ?」
「あまりにも行き当たりばったりすぎでしょシロ。 まあでも大丈夫。 私が知ってるから」
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二人は町から出た後ガロに乗り、ルナの知っている洞窟まで来ていた。
美味しいステーキを食べた後の運動なのか心なしかガロの足取りは早かった。
「着いたよ」
「うん……洞窟だね」
たどり着いたのはすこしこんもりとした小山のような洞窟だった。
「それじゃあしゅっぱーつ」
「おー」
『ワオーン!』
ルナの鼓舞に葵とガロも乗ってきた。
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洞窟探索は特に大変なこともなく順調だった。
敵はゴブリンだったが洞窟が広いのでシープカウと同じ方法で倒せたし、たまに来る後ろからの奇襲もガロが全部はじき返してくれるからである。
そんなこんなで洞窟を進んでいると洞窟の壁が白く光っているところがあった。
「これは?」
「採掘ポイント。 今回は白だから鉱石だね。 まずピッケルを装備して……力いっぱい振る!」
白く光ってるところからガキーンと大きな音がしていろいろな石が転がってきた。
「次はボクだね。 それ!」
シロもルナをまねて力いっぱい叩いてみたがルナのと比べて音が小さく、石の数も少なかった。
おそらくだが咲希とのSTRの差が出ているのだろう。
「鉄鉱石が2つと……水晶が1つ……全然足りないや。 ルナ、この洞窟には採掘ポイントが何個あるの?」
「ここ含めて4つだったかな」
「うーん多いのか少ないのかわかんないや」
「洞窟の規模にしては多い方だと思うよ。 じゃあさっさと下に下ろうか」
「そうだね」
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二人は2つ目の採掘ポイントががあるところまで来たが、今回は白の光ではなく紫色の光だった。
「あっちゃ~ 魔石の方に当たっちゃったか…… さっさと掘って次の所に行こう」
そういうとルナはさっきと同じようにピッケルを振り、大きな音がしたが、今回の石の量は少なかった。
「次はボクだね」
前と同じく音は小さかったが、多くの石が転がってきた。
「へぇ……魔石のポイントってINT値が多いと沢山出るようになるんだ……初知り初知り」
どうやらルナも知らなかったらしい。
「何々……赤魔石が4つ、黄魔石が3つ、中魔石が3つ……いいのかはわからないけど鍵を作るには十分かな?」
「足りると思うよ。 じゃ、どんどん効率よく行こうか」
「おー」
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1回目の洞窟探索では残りの採掘ポイントがすべて魔石だった。
ボス自体もゴブリンが15体程度と楽なものなので、二人は町に戻らず2週目に行くことにした。
「特に気張る要素もないね、ルナ」
「まあレベル差でごり押してる感じなんだけどね」
「そういえばルナのレベルってどのくらいなの?」
前、シープカウを倒したとき、10体近く倒していたがレベルが1しか上がらなかったのでレベルが
上がりにくいゲームなのだろう。
「私? 大体13くらいかな。 今のトップは24くらいらしいし。 発売日から廃人してない分にはちょっと高いくらいかな?」
「へぇ……そのくらいなんだ。 ボクも頑張らなきゃ」
さらに素晴らしい魔法を撃つために新たに決心したシロであった。
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2回目の洞窟探索では運よく鉱石の採掘ポイントが2つ出たので水晶を指定数集めることができた。
「ルナ! 指定数集まったよ」
「これで周回はおしまいってことね。 ふぅー疲れた疲れた」
「単調な行動ばっかりだったのに?」
「精神的にだよ精神的。 うん、じゃあ町にもどろっか」
「そうだね」
二人がボス部屋に出てきた魔法陣に乗って外にでると、すでにあたりは真っ暗になっていた。
現実ではまだまだ真昼間だがこっちの世界では夜が来たらしい。
「うーん。 夜は厄介だからちょっと飛ばすね、シロ」
「おー」
二人はレストシープカウの肉を持ち帰るときと同じような速さで町に戻ることにした。