24 エルフ系少女とゴブリン坑道
シロがダンジョンに入るために扉に手をかけるとルナが話しかけてきた。
「ねぇシロ。 さっきプレイヤーと戦ってたけどさ、MPに余裕はある?」
「うん。 ほぼ満タンだから大丈夫だよ?」
さっきの戦いで使った分はここに来るまでにほとんど回復してしまった。
「そっか……それじゃあお願いがあるんだけどさ……」
ルナは悪い顔をしながらシロの肩に手を当てた。
何を考えているかはもはやお見通しだった。
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「それじゃあ行くよー!」
「オッケー!」
ルナが考え付いた方法はもちろん前のダンジョン探索の時にも使った核撃魔法による殲滅だった。
モンスターを倒す必要がない分早く進めるのでやらないという選択肢はなかった。
「【核撃 メルトダウン】!」
魔法を撃ち、火球が中に入ると同時にルナが扉を閉める。
扉の向こうからすさまじい轟音が響いた。
「シロさん。 この音に点数をつけるなら何点くらいですかな?」
ルナがいたずら顔で冗談を言ってくる。
「70点くらいでしょう。 やっぱりこの地面のせいで音が小さくなっているんでしょうな」
もちろんシロはそれに乗った。
「なかなか厳しいですなぁ」
そしてそんなボケから大体10秒くらいした後、音は聞こえなくなり、2人はダンジョンに乗り込んだ。
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「やっぱりあの方法だとドロップ品を拾うだけだから楽でいいね。 うん、大漁大漁!」
ルナがルンルンとした様子で炭鉱の中を歩いていく。
このダンジョンはかなりの数の敵が出てくるはずだったらしく、ドロップ品らしき石炭のかけらと赤い布の切れ端がそこかしこに転がっていた。
「にしてもなかなかに入り組んでるね…… この様子だと攻撃が届かないところがあるかも」
シロの言う通り、このダンジョンは盤の目のようになっていた。
幸いドロップ品の有無で通ったかどうかがわかるので同じ道をまた通ることになるということはなかったが。
しばらく歩いているとルナが呟いた。
「シロの言う通り生き残りがいたみたいだよ」
ルナはそういうが武器を装備しなかった。
不思議に思いルナの見ている方を見ると少し大きめのくぼみの底に身長2メートルくらいのオーガがうつぶせで寝ていた。
だが、見た目からの強さとは裏腹に手足が痙攣しており、HPはほとんどなかった。
「じゃあ私はとどめを刺してくるね」
ルナはそういうとくぼみの下に降りていった。
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「まさかシロの魔法に耐えられるとは…… よっと」
抵抗のできないオーガに向かって軽く刀を振り下ろした。
オーガはそのまま消えてしまい、その下には少しの水と20匹近い小魚、そしてさび付いた宝箱のようなものがあった。
「あぁ……なるほど。 そうやって生き延びたのね」
ルナは生き延びた方法になるほどと思いつつ、さび付いた宝箱を開けた。
中に入っていたのは
紫水晶 1つ
お札 1枚
錆びた金属板 1枚
というものが入っていた。
中身が妙にレアなので隠してあったレア宝箱だったということで納得し、シロのところまで帰って行った。
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「お帰り。 どうだった?」
シロは【核撃 メルトダウン】に耐えられるほどなのだから特殊な能力があると心配していた。
だが、ルナの顔を見ると杞憂に終わったらしい。
「うん。 ただの瀕死のオーガだったよ。 多分運よく水の中にいたおかげで何とかしのいだんだろうね」
ルナはオーガの生きていた理由を言う。
今、くぼみの底には少しの水しかないが、打つ前はもっと水があったが、蒸発してしまったのだろう。
「そっか…… 水に入れば防げちゃうんだ…… もっと高火力の魔法が必要かも……」
シロが物騒なことを考える。
水に入るだけで防げてしまうのだからシロからすれば火力不足である。
「いや、瀕死の状態だったし火力としては申し分ないんじゃないかな…… ていうかこれ以上あげてどうするのさ」
「うん? ボク的にはまだまだ物足りないんだけど?」
「シロらしいっちゃシロらしいけど……はぁ」
ルナはため息をつく。
今の状態でさえルナの見た魔法の中で一番の火力をさらに上げようとしているのだからそうもなるだろう。
「まあ火力は多くて困るものじゃないしね。 さあ早く進んでこのダンジョンを終わらせちゃおうよ」
「ふふ、まあそうだね」
ルナはもうこういう生き物なのだということで納得を付けた。
2人はドロップ品を拾いながらどんどんと奥に進んでいった。
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しばらく進むと大きな扉があり、入る事にした。
扉の奥は少し大きめの部屋になっており、奥にはオーガが1匹と赤帽を被り、つるはしを持ったゴブリンの軍団がそこにいた。
そしてその奥にはボス部屋の大きな扉があった。
『グルァ!』
オーガが咆哮を発する。
それに従うかのようにゴブリンが2人に向かって走り出してきた。
「シロ! 先にゴブリンをお願い!」
「任せて! 【サンダーブレス】!」
シロがまっすぐ突っ込んでくるゴブリンに対し魔法を放つ。
ゴブリンたちは走りながらガードをするかのようにつるはしを構えたが、魔法はガードを貫通し大量のゴブリンを蹴散らした。
「大きいのは私が! 【雷装斬月】!」
ルナはオーガに向かって攻撃を放つ。
だが、流石に硬いのか1撃で沈ませることはできず、パンチを1発食らってしまいシロのところまで吹き飛んできた。
「ルナ! 大丈夫!?」
「まだまだ」
軽く返事をするとルナはまたオーガに向かって走り、目の前で大きくジャンプをした。
「【雷装天中】!」
そしてルナはオーガの角の間に刀を刺し、オーガを感電死させた。
「お疲れ様! ルナ!」
「そっちもお疲れ様」
2人はハイタッチをした後、ドロップ品を片づけ、扉に進んでいった。