21 エルフ系少女と砂漠横断
魔法陣の行き先はオアシスだった。
すでに太陽は頂点に達しており、二人はちょうどいいやとばかりに食事を取っていた。
「砂漠だからって灼熱じゃなくてよかったねー」
ルナからもらった串焼き肉にかぶりつきながらシロは話しかける。
「いやぁ~そう甘くはないみたいだよ。 体感温度は普通だけどステータスに異常が出てる」
ルナに言われ自分のステータスを確認すると 【STR減少】 【脱水】 というデバフが付いていた。
【STR減少】
STRが徐々に減少する。
高温空間に長時間いることでかかる。
時間によって減少率が増加する。
【脱水】
のどが渇きやすくなる。
「となると早く砂漠から出た方がいいのかな?」
一応の確認を取る。
【STR減少】はシロからすればどうでもいいのだが、ルナにとっては大きな問題なのだろう。
「うん。 砂漠のダンジョンは無視してさっさとあの大木に向かった方がいいかも。 食べたら出発するから」
「うん」
シロは串焼きを勢いよく口に入れ、ガロに飛び乗った。
この砂漠のせいかガロは若干砂っぽかった。
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太陽が水平線に沈もうとしているころだった。
目的地の大木は最初に比べればずいぶんと大きくなり、後半日もすればつくと思われた。
が
「いつまでたってもずっと砂! ダンジョンすら見つからない!」
とうとうヤケになってしまったのかルナが叫ぶ。
たまーにオアシスがあったのだが流石に半日もほぼ同じ景色だと流石にきついようだ。
「すさまじく広い…… 半日走ってもまだまだあるよ……」
シロも呆れた様子で呟く。
「シロ! 次のオアシスで野営するから!」
流石に限界になってきたのかルナが叫ぶ。
ガロも徐々に足が遅くなっていた。
どうやらそろそろきついらしい。
「賛成!」
シロもそろそろ限界なのでルナの提案に乗ることにした。
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次のオアシスを見つけた頃にはあたりはすでに真っ暗になっていた。
シロはルナの持っている小さいランタンでしか周りを見渡せなかった。
ルナはと言うと焚火の準備をしていた。
「【雷装】」
ルナは刀に雷をまとわせ器用に火をつけていく。
「へぇ……ルナのスキルってそういう使い方もできるんだ……」
「結構難しいけどね。 こういうところまでリアルにしなくてもいいと思うんだけどなぁ」
ルナが愚痴をこぼしながら串に魚を刺し焼いていく。
焚火のパチパチという音と魚の焼ける感触はまるでキャンプのようだった。
「明日には確実にこの砂漠を抜けなくちゃ。 食料の調達もしなきゃいけないし……」
ルナも少しはもってきているが流石に7日分は持ってきてないらしい。
「そうなると結構死活問題だね……」
「多分明日ごろには料理スキルを持ってないプレイヤーが死に戻るんじゃないかな。 一応木の実とかも食べれるけどどれだけ多く生っているか知らないし。 はい、シロ。 焼けたよ」
ルナは串焼きの魚を雑談しながら差し出す。
出来立てなのがいいのか味はとてもよかった。
「ご馳走様ルナ。 それでどうするの? ボク割と眠いんだけど」
シロはかわいらしくあくびをする。
どうやら睡眠ペースは体感時間があるゲーム側に持ってこられるらしい。
「ここはモンスターは絶対入ってこれないエリアになってるらしいからモンスターに対しては大丈夫だし、プレイヤーもこのだだっ広い砂漠でここピンポイントで当てるなんてないでしょ」
そういうとガロのお腹にうずまり、サッと寝てしまった。
「寝るの早いな…… まあ確かにルナの言う通りだし大丈夫だよね」
シロもルナの隣にうずくまり、寝てしまった。
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質のいい7時間睡眠をしたような感じですがすがしい朝をルナは迎えていた。
太陽はちょうど頭を出したころでいまだに砂漠を横断するようにしか解放されていない全体マップにも上位プレイヤーが表示される頃だった。
「んん…… ほら、シロ起きて」
いまだにガロのお腹をぬいぐるみのように抱きかかえているシロを起こした。
「ん…… ふぁぁ。 おはようルナ。 すがすがしい朝だね。 なんというかこういう清々しい寝起きはボクいつぶりかなぁ」
「それは単純に夜更かしのせいでしょ、ほら朝食」
ルナは串焼き肉を差し出してきた。
朝食にしては重いと思ったがゲームなので特に関係はなかった。
「それ、私にも」
「はいどうぞ……って誰!」
ルナはひょっこり出てきた3人目に対し即座に刀を構える。
その3人目はルナからかすめ取った串焼き肉をハムハムとかじっていた。
「ん? 私はレイ。 ご馳走様でした」
そのレイというプレイヤーはぺこりとお礼をする。
装備は真っ黒の全身をぴっちりと覆った装備で、不思議なことに武器らしきものを何も装備していなかった。
「あ、うん。 お粗末様でした……じゃなくて!」
レイが出すなんというかのほほんとした雰囲気に翻弄されているようだ。
シロも武器は装備せずそのやり取りを見ていた。
まあシロの理由は単純に魔法をここでは使えないというだけなのだが。
「? あなた達を倒すつもりはない」
「じゃあ何でこんな格好の的だった私たちの隣で寝てたの?」
「ちょっと手伝ってほしいだけ。 多分あなた達にもメリットのある話だと思う。 多分」
「そう……とりあえず聞かせて見なさい」
レイは丁寧に説明をしてくれた。
どうやらレイも砂漠スタートのソロプレイヤーとのことで脱出のために砂漠を移動していたらしい。
そしてその途中でダンジョンを見つけクリア寸前のところで立ち往生してしまい脱出してきたとのこと。
それで日も沈んだので近くのオアシスで寝ようと思ったところにモフ玉……ガロを見つけて飛び込んで寝てしまったの事だった。
「その白毛玉、なんかじゃりじゃりしてた。 残念」
レイはガロの毛並みの感想を言った。
確かに半日砂漠を走り続けたガロの毛並みはシロからしてもじゃりじゃりしてるとわかるほどだった。
ガロは特に気にしている様子ではなかったが。
「とりあえずこの交渉はお互いにメリットのある話ってことね。 まあ乗ってあげてもいい、だけど……」
ルナはちらりとシロの方を見る。
「もし怪しい行動をしたらすぐに吹き飛ばすから」
「わかった。 交渉成立。 ついてきて、案内する」
レイはむくりと立ち上がり歩き出した。
ルナとシロもガロに乗りレイについて行った。
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