2 エルフ系少女と魔法
シロとルナは外に出た後、森に来ていた。
「そろそろいいかな 〈サモン ガロ〉」
ルナはスキルを使って真っ白な狼を召喚した。
ガロの大きさは大きい冷蔵庫を横に倒したぐらいのサイズだった。
『ガウ!』
「大きい犬だね……すっごいもふもふしてそう」
ルナに言ってもふらせてもらおうとモフモフ好きのシロは思ったのであった。
「ふっふーんすごいでしょ。 私の職業はブレイドサモナー。 刀と召喚が一緒にできる職なんだ。 それじゃあそろそろ乗ってよ、いいところ知ってるからさ」
「それじゃあ遠慮なく」
手でわしゃわしゃするのは聞きそびれたがこのもふ毛にまたがれるのはあり。
少しの間、股下のもふもふを堪能することにした。
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「着いたよ、シロ」
「おぉ……ただの森だね」
二人がガロに揺られて着いたのは最初の所から30分くらいの森の中だった。
いまいちさっきの場所との違いがわからなかった葵だった。
「どうしてここがおすすめの狩場なの?」
「この辺はHPが低めの敵しかいないから初心者おすすめの狩場なんだ。 だけど気を付けてね縄張りに入ると襲ってくるから……きた!」
目の前から来たのは牛と羊を合体させたような生き物だった。
【シープカウ】
LV3
羊と牛の特性を持つ生き物。
縄張りに入った物には頭突きをする。
「シロ! 先にやらせてもらうね! 【雷装斬月】!」
ルナはシープカウに向かってスキル【雷装斬月】を使いダメージエフェクトと共に一撃でシープカウのHPをゼロにした。
そのままシープカウは光の粒になってドロップアイテムを残して消えてしまった。
「すっごーい……」
「なかなかのもんでしょー」
ルナは自慢げに葵に言ってきた。
いい技を見せられて心なしか嬉しそうだった。
「じゃあ次はシロね。 シロのステータスで魔法を打てば一撃で倒せると思うからさ」
「わかった!」
しばらく歩いていると食事中のシープカウを見つけた。
どうやら食事中はパッシブになるタイプのモンスターらしい。
「それじゃあ行くよー 【ウォータージャベリン】!」
火、水、雷のうち、一番最初に使ったのは水魔法だった。
シロはショートケーキのイチゴは最後に食べるタイプ、一番楽しいだろう火魔法は最後に使うことにした。
シロの放った【ウォータージャベリン】はそのままシープカウの脇腹に
当たらなかった。
少しだけ狙いが下にずれていたらしくシープカウの足元に直撃した。
シープカウはこの攻撃でアクティブ状態になり、こっちに突っ込んできた。
「【ウォータージャベリン】! 【ウォータージャベリン】! 【ウォータージャベリン】!」
これだけ打てば1発は当たるだろうと思って魔法を撃ったが、最初の1発を合わせればまさかの4連続はずれである。
「【ガロ 覇気】!」
ルナはシープカウがシロのそばに行く前にガロにスキルを命じてシープカウを止めた。
そしてシープカウはまたさっきの場所に戻って食事を始めた。
「シロ! サポートはこっちがやっちゃうから思う存分ぶっぱなっちゃって!」
「わかった! 【サンダー】!」
シロはルナのサポートという言葉をもろに受け、【サンダー】を使った。
意地でも火魔法は最後に使おうという考えである。
まあ案の定といえば案の定だが【サンダー】もシープカウの足元に当たってしまった。
「【ファイヤーボール】! 【ファイヤーボール】!」
とうとうシロは当たる見込みのない魔法を使うより当たる見込みのある火魔法を使いだした。
……まあ直撃はしておらず火魔法の爆発に巻き込んで攻撃してる感じなのだが、葵本人は当たったと思っている。
2発分のファイヤーボールで葵はシープカウを倒すことができた。
「お疲れ、シロ……まさかこっちでもノーコンなの?」
「うん、そうみたい……」
シロがゲームで爆弾などの範囲攻撃ができるキャラをメインに使うのは理由がある。
もちろん最初のうちは普通に銃などの直線攻撃ができる武器をよく使っていたが、ろくに当たらず、試しで使ってみた爆弾が思ったより使えたのでそればっかり使っていた結果、とうとう普通の銃などでも常に足元に撃つという癖がついてしまったのである。
しかもこのFEでも健在らしい。
「まあ一応攻撃はできてるし……いいのかな? あ、そうだこれ食べる?」
そういい差し出してきたのは魚の串焼きだった。
【魚の串焼き】
魚を塩でシンプルに焼いたもの
[食事効果]
空腹度 少し回復
MP回復ブースト 小
今のシロにはちょうどいいだろう。
「ありがとうルナ」
「調理持ちとしてはやっぱり食べてもらえるのがうれしからねー。 はい、ガロの分」
『ガウ!』
ルナは深皿をだし、そこに3本の串焼きを入れていった。
ガロは豪快に3匹まとめてかぶりついていた。
「はむんむ……ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。 それでどうする? もっと狩る?」
「うん!」
シロのMPは串焼きの効果なのか満タンに近い。
町には戻らずそのまま進めることにした。
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「【ファイヤーボール】【ファイヤーボール】!」
流石に学んだシロで、【ウォータージャベリン】や【サンダー】は使わず、範囲攻撃の火魔法をメインに使っていた。
「【ガロ 斬撃】」
咲希の方もガロとのペアでシープカウを狩っていった。
「【ファイヤーボール】!」
シロとルナがシープカウを狩っていってシロが魔法をだいたい10発撃ったころだった。
【スキル ノーコン を獲得しました】
とうとうゲーム側にも煽られた。
「うるさいやい」
「ん? どうしたのシロ」
「なんかノーコンっていうスキル獲得したって」
「ふふ、まさかゲーム側から煽られるとは。 面白いこともあるね。 スキルの確認でもしてみたら? この当たりにモンスターはいないし」
ルナは笑いながら確認を進めてきた。
「むーわかったよ」
【ノーコン】
[スキル効果]
MP1.5倍
魔法範囲増幅
[獲得条件]
モンスターに対し同じ魔法を10発連続で外す
まるでゲーム側が『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』とでも言いたそうな能力構成だった。
まあ実際ノーコンのシロからすれば素晴らしく有能なスキルなのだが。
「ルナ、このスキル結構強いよ?」
「まさかの強スキルでしたか……まあ一応おめでとう。 祝福してハイこれ」
ルナからもらったのは肉の串焼きだった。
【羊牛の串焼き】
羊牛の肉を柑橘の果汁をかけて焼いたもの
[食事効果]
空腹度 それなりに回復
「ありがとう。 いただきます」
羊牛はおそらくシープカウのことだろう。
肉の味は羊のいいところと牛のいいところを合わせたような味でそれをフルーツの果汁がいい感じにまとめていた。
「ごちそうさまでした。 これ中々おいしいね」
もう一度食べたくなる味ではあった。
「割といろいろな食材使って焼いてるからねー。 それでどうする? その肉目当てにもう少し狩る? 次はそうだね……ステーキみたいなのをごちそうするけど」
「やります。 やります」
スキルの試しなどとはろくに考えずにただステーキを食べたいというだけで次の狩を承諾したシロだった。