17 エルフ系少女と初イベント
今日はFE初イベントの日。
ルナとシロは参加できなかったなんてことはないようにしっかりとクラッチの中央の大木の周りに集まっていた。
昨日は魔法を作った後、レベリングをしに行ったのだが残念なことにレベルは上がらなかった。
しばらく話していると目の前に小さな妖精が現れた。
『今回のイベントはポイント捜索戦です! これから転移されるフィールドにはたくさんのダンジョンが存在するのでそれらを攻略しポイントを稼いでください! このポイントはこの捜索戦が終わった後に開催されるお祭りで買い物をするのに使用するのでたくさん集めましょう!』
妖精がそういった後、シロのストレージが勝手に開き、2枚のお札が入っていた。
『そのお札は1枚で1000ポイントの価値があります! ダンジョンにはそのお札以外にもこのようなコインもあるので気を付けて下さい! 両替は自動で行われるのでご安心ください!』
妖精は500、100、10、1と書かれたコインを見せてくれた。
『ですが気を付けてください! PKによるポイントの強奪も可能です! PKの場合、相手の所持ポイントの3割を奪い取ることができます! 確実に稼ぐためにダンジョンに潜ってもよし。 一攫千金を目指してPKするもプレイヤーの自由です!』
『ですがPKもダンジョンでの死亡もパーティの全滅で3割の減少が行われます! もし相方が死んでも20分以内なら復活させることができるので頑張りましょう! 因みに装備などはドロップしないので安心して死んでください!』
『イベントは時間加速により10日間を3時間で行います! 2日目からは日の出にポイント獲得数上位3チームを公表しそのリーダーの場所を3時間ごとに表示するのでうまく使ってください! 20分後にテレポートを開始します! それで皆さんの検討をお祈りします!』
そうして妖精はくるっと回り、消えてしまった。
・
・
・
「10日間を3時間かぁ…… いっぱい稼がなきゃね」
「うん。 だけどこれ運営は捜索戦とか言ってるけどこれPVPイベントだと思うんだ。 そうじゃなきゃ3チームの場所をばらすなんてことしないし。 となると最初のうちはダンジョンを回って中盤からはプレイヤーを積極的に狩っていかなきゃポイントを稼げないから……ぶつぶつ」
「ルナさんやーい…… あ、自分の世界に入ってるや。 しょうがないなぁ」
隣で脳内作戦会議をしているルナをよそに、シロはアイテムの確認をすることにした。
シロがイベントのために用意したのは大量のMPポーションと大量の予備の杖。
杖が雑貨屋に売っていたので大量に買ったわけである。
アイテムの確認を終わらせたシロはお祭りのマップを見ていた。
お祭りは神社を中心に様々な屋台が並んでおり、食べ物などの基本的なところはもちろん、スキルロールや装備屋などといったものもあった。
おそらくこのお祭りの目玉なのだろう。
しばらくしていると脳内作戦会議をしていたルナが戻ってきた。
「ぶつぶつ……あ、シロごめん」
「別に大丈夫だよ? それでどういう風に回るの?」
「序盤はダンジョンを回ってポイントを稼いでダンジョン探索が頭打ちになったらプレイヤーを狩っていくって感じかな。 これならかなりのポイントを稼げるとは思うよ。 アイテムは共有ストレージがあるからそこに入れればいいし」
「っていうことは最後の方はボクも暴れられるってわけだね?」
「まあそういうことかな。 でも最初の開始位置によっては大きく変わるから気を付けてね」
「わかった!」
「それじゃあ大量獲得目指してがんばろー!」
「おー!」
そうして、二人の体は光に包まれ、転移した。
・
・
・
目を開けるとそこには大海原が広がっていた。
「おー! 海だぁ! もしかして海の中にもダンジョンあるのかなぁ?」
海を見てお気楽なシロにルナは重いトーンで話しかける。
「シロ、そんなに悠長もしてられなさそうだよ。 私の考える中で最悪を引いちゃった……」
「どうしたの……うわぁ……すっごい砂漠……」
シロが後ろを見るとそこは当たり一面の砂だった。
遠くを見ると山頂からオーラが噴出している岩山や山のように大きな大木、浮遊島などがあり、遠目で見るだけでもファンタジーにとっての幻想郷ということがわかるフィールドだった。
ここが草原とかならばその幻想郷を堪能する余裕もあったのだが。
「とりあえずここから出なきゃ話にならないや。 【召喚 ガロ】!」
ルナは早速ここから出るためにガロを召喚した。
『ガウ!』
「うん……いつも通りのもふ味だね……」
「シロ。 とりあえずあの大木を目指して進んでいくようにして、道中のダンジョンをクリアするようにしよう」
「うん。 7日間よろしくねガロ」
『ガウ!』
・
・
・
「なかなかダンジョンがないねー」
「しょうがないよ。 こんな砂漠だし。 あったかも知れないけど正直見つけられる気がしないかな」
しばらくガロに揺さぶられながら二人で話していると前からカサカサという音が聞こえた。
目を凝らすとサソリがいるのが見えた。
「どうする? ボクがやっちゃおうか?」
「ううん大丈夫。 私がやってくるから……」
前に座っているのでルナの顔は見えなかったが明らかに声が怒っていた。
多分前のクモの腹いせだろう。
「君たちに技なんてもったいないわ!」
そのまま力いっぱいに刀を振り回し尻尾や胴体を真っ二つにし、光となって散っていった。
そこにはサソリのものであろうドロップ品が転がっていた。
「さっすがルナ。 流れるような太刀裁き!」
とりあえず持ち上げる。
「ふふーん。 クモっぽい音を出した自分たちを恨みなさいね、サソリたち。 じゃあシロ、ドロップ品を回収して進もうか」
「うん」
サソリのドロップ品を共有ストレージに入れ、またガロに乗り、大木に向かって進むことになった。
・
・
・
「砂、サソリ、砂、サソリ、砂……は、はは、ここまで同じものばかりだと進んでいるのかさえ怪しくなってきた……」
ルナが半ば放心状態で話す。
「それでルナ、サソリには飽き飽きしただろうけどちょっと遠くにまたサソリだよ? どうする?」
シロは軽い砂嵐でかすんでいるが遠くにいるサソリを見つけた。
「流石に私は疲れたから行かない。 ドロップ品は回収できないだろうけどシロ、吹き飛ばして」
「オッケー任せて【ファイヤーボール・爆】!」
シロからすればドロップ品など関係なく、しばらく打てなかった魔法を撃つ方が先だった。
そしてサソリに向かって打った魔法はそのまま着弾、爆発し
倒れなかった。
「あれ……倒せない……? それだったら! 【核撃 メルトダウン】!」
シロは倒せないサソリに腹が立ち、核撃魔法を撃ちこんだ。
流石にこの魔法なら倒せると思い、爆発を見届けていた。
サソリはその爆発を受けてもなお立っていた。
「ねぇルナ! あのサソリ硬すぎるんだけど!?」
「シロのあれを受けて立ってるっていうのもすごいね…… ねぇ! もしかしたら隠しボスみたいなのかもしれないからあのサソリのところまで行ってみるね!」
「わかった! もしかしたらポイント大量ゲットかもしれないし!」
二人はガロに乗りながらサソリのところまで行くことにした。
・
・
・
その道中にて。
「そうだシロ、このイベント中、核撃魔法を使うときは私に一言お願いね?」
「いいけど……何で?」
「流石に範囲が広すぎる! 巻き込まれて死に戻るとか私一番いやなんだけど……」
「確かにそれは一番いやだね……わかった今度からそうするね」
「よろしくね?」
【核撃 メルトダウン】でルナがここまで言うのだ。
【氷星 イベルンメイデン】がこのイベントで使えるのかどうか怪しくなってしまったシロであった。




