13 エルフ系少女とイベント通知
ゲームをログアウトした咲希と葵は近所のレストランで昼食をとっていた。
葵はオムライス、咲希は葵のおごりということもあって少し高めの物を頼んでいた。
「まあそういう約束だからいいけどさぁ……」
「まあまあいいじゃないの葵さん。 転売で4倍になってるのを買うよりかは」
葵はまた転売ヤーは滅すべしと再決心したのだった。
「それでどう? 装備いい感じになった?」
食事が中盤になるころ、やはり気になるのか咲希が葵に聞いてきた。
「ふん、ひひかんひ」
「飲み込んでからしゃべりなさい」
「ごめんごめん。 うん! すっごくいい感じになったよ」
「あの時は装備を知られたらなんかズルいかなと思って退席したけどそのあとでそういえば葵だしなぁって思っちゃって。 どう? 教える気はある?」
「もちろんINT値特化ってお願いしたよ?」
咲希にはもとより教える気でいたので特に関係はなかった。
「知ってた」
やはり案の定かとため息交じりに咲希はそう答えた。
まあ葵がVITやDEFに振るという方が逆に嘘を疑わなければならないので余分な手間が省けたのだが。
「ほかにもいろいろとやったけど……こっちは教えられないかな? 咲希だってそろそろ装備見せてよ。 ドラゴン戦の時にも全く見えないんだもん」
葵はお返しとばかりに聞き返した。
咲希の装備はドラゴン戦の時、上下左右に動き回っていたのだが全く見えなかった。
あのマントがすごいのか葵がただ見逃していただけなのかは知るところではないが。
「まだ教えられないかなぁ。 お互いにジョーカーがある方が楽しいじゃん!」
純粋にゲームを楽しむ咲希らしい返事だった。
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二人のお皿が空っぽになり二人でのんびりとジュースを飲んでいるとスマホを眺めていた咲希が急に葵を呼んだ。
「葵葵! 明日のFMでイベントだって!」
「イベント? スタンピードみたいなやつ?」
葵がそういうと咲希はそんなものじゃないというような顔でスマホの画面を見せてきた。
咲希が見せてくれた画面はFMの公式サイトでバナーのところに『夏だ! 祭りだ! 戦闘だ!』と乗せてあった。
「ちょっと簡単に説明するね『イベントは2部構成で行われ1部は最大二人で行われるポイント強奪戦。 2部はそのポイントで特殊アイテムが買えるお祭りが開かれる』こういうことだね」
「へぇ……すっごく楽しそう! ボクも装備ができるし初陣にはもってこいだね」
「ふふ、やる気になってくれて何より。 だけどイベントは二人だよ? 一緒に参加するプレイヤー入るの?」
「そういえば……」
今シロのことをお互いに知っているのはコハク、カリス、そしてルナである。
ボッチではないがまあ少ない方だろう。
「因みに私は今のところ一人だけど……どうする?」
「それじゃあ一緒に行こうよ!」
「いいけどその代わりに……」
咲希はイベントで一緒に戦う代わりに一つの条件を出した。
その条件とは装備ができた後でのクエスト同行である。
葵は咲希がクリアできないクエストは一体何なのかと少しわくわくしていた。
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少し時は戻ってギルド【ユグドラシル】ギルドホーム。
そのギルドをギルドたらしめる大木の最上層にて数人のプレイヤーが集まっていた。
「遅くなったな」
「遅いわよオーディン。 うちの情報担当が手に入れた情報を確かめるチャンスができたって言ってたけどどうなの?」
細身の少女が遅くなったことに糾弾する。
「遅くなったことについては謝罪するぜフレイヤ。 それで情報何だが……最っ高の情報だった」
「それじゃあ説明よろしくね」
「わかった。 うちの情報担当が仕入れた情報だが先のスタンピードにて北門で大規模な爆破現象があったというものがあった。 情報担当がどういうことなのか調べていたがギルド前での情報取引で運よく尻尾をつかんだらしくてな。 あの爆発を起こしたのはシロっていうプレイヤーだ」
「それでおでんはそのシロっていうプレイヤーと一緒にクエストに行く機会があって行ったわけですね?」
丸眼鏡をかけた男の子が確認を取る。
「ああ、その通りだフレイ。 行ったところはリトラの洞窟。 俺らも行ったからわかると思うがあのドラゴンが出るダンジョンだな。 そこでそのシロっていうやつの魔法を見たんだが……まあすさまじかったな。 動画があるから見てくれ」
そういい、オーディンは部屋の中央に撮影をするための魔法道具を設置した。
映し出された映像は【核撃 メルトダウン】でドラゴンが倒されるシーンだった。
「これはすさまじい魔法ですね……」
「もしかして私でも打てなかった核撃魔法? どうなのおでん」
「大根に味噌をつけると……ってそういうことじゃない。 話を戻すが、情報屋から買った核撃の魔法でドラゴンにとどめを刺した。 ステータスについてもまあ予想だがおそらくINT極振りだろうな」
「INT極振りでも多分打てないわよ……? もしかして装備がすさまじく特殊だったりするのかしら?」
「いや。 初期装備だ。 この洞窟だってシロの装備の材料を取りに行ったんだしな」
「本当にすさまじいプレイヤーね……」
「それでそのシロっていうやつはこのギルドに入るのか!?」
筋骨隆々して上半身がほぼむき出しの巨漢が荒々しく声を上げた。
「それはまだわからないなトール。 あまりぐいぐい行くのは好まれないからな」
「そうか……話が合いそうだと思ったんだがなぁ……」
「まあしばらくすれば会えるだろう。 それじゃあ次の議題の大型イベントについてだが……」
いつの間にかシロが大規模ギルドに目を付けられるとは思いもしなかったのであった。




