12 エルフ系少女と装備
「なあ、転移で帰らないか? 正直だるい」
ダンジョン前に戻り、町に出発しようとしたところでカリスが提案をした。
「転移って?」
聞きなれない言葉にシロは聞き返した。
「あんなもん見せられた後だけど一応初心者だものな。 転移っていうのはだな……」
そういい、カリスは紫色をした水晶を見せてくれた。
「こいつが転移水晶。 どこからでも町に戻れる便利な代物さ」
「別にいいけどいいのかしら? そんな高価なものを使うなんて」
「ああ、かまわんさ。 使えるときに使わなきゃいつまでも肥やしだしな。 それじゃあ使うぞ【転移 クラッチ】」
カリスがそういうと、4人を包むように光の幕ができた。
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光の幕がなくなるとクラッチの中央、大木の前に4人は立っていた。
「じゃあルナちゃんにシロちゃん。 先にお店まで戻っててくれないかしら?」
「はい。 わかりました」
ルナが返事をする。
シロもギルドからの道は分かるが大木からの場所は分からないのでしっかりとルナについていくことにした。
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シロとルナを見送ったコハクはカリスと話していた。
「ねぇカリス。 今回の探索、あなたは暇つぶしって言ってたけど違うわよね? 【グングニル】なんて大技まで見せて」
コハクがカリスに問いただした。
「本当にただの暇つぶしさ。 まあ一応の目的はあったがそれも道中のモンスターが落とす奴だしな。 それに初心者の成長は俺らにとっても意味のあることだ」
「ふふ、どうかしらね」
コハクは少し笑った。
「まあ今回はそういうことにしておいてくれ。 また後で行くから頼むよ」
「あら、勧誘ならお断りよ?」
「流石にもうあきらめるさ。 装備の修理とかその辺だよ」
「そのことなら喜んで。 それじゃあまた」
「おう」
カリスは鍵を取り出し、自分のマイルームに戻っていった。
一人残されたコハクはというと。
「カリスも悪い人ではないのだけどねぇ……」
コハクはため息をついた。
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二人と別れたルナとシロは雑談を交わしながらコハクのお店まで歩いていた。
「ねぇ、ルナ! あのドラゴンすごかったね!」
「私からすればシロの魔法の方がすごかったんだけど…… 私もあのダンジョンを攻略するのは初めてだったから楽しかったかな。 ドラゴンの素材もおいしかったし」
「あの素材で装備作るって言ってたけどどんな感じになるのかなぁ」
「そういえば見た目は全部コハクさんに一任するんだっけ?」
「そうだよ?」
「あの人の装備は結構見た目がいいからね……」
「そういえばカリスさんの鎧も細工細かかったしね」
「まあどうなるかはわからないけど期待……期待かぁ……」
ルナはため息をついた。
「どうしたの?」
「いいや、なんでも」
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しばらく歩いていると二人はコハクの店についた。
まだコハクはついてなく、がらんとしていた。
「まだコハクさんはついてないみたいだね。 どうするシロ?」
ルナはシロの方を見るとシロは色々と装備を物色していた。
「へぇ……こんな武器もあるんだ……」
シロが手にしたのは持ち手に鎖が付いており、鎖にとげ付きの鉄球が付いている武器、いわゆるモーニングスターだった。
【ブルーモーニングスター】
[装備条件]
STR 10
VIT 5
[武器スキル]
なし
[武器能力]
STR値+20
とても使いにくいが当たった時のダメージは絶大なものとなるが使いにくい
「いろいろと作ってるんだね…… 使ってる人見たことないけどね。 その武器」
ルナは笑いながらそう答えた。
確かに使いにくいを2回も使うほどだ。
よっぽどなのだろう。
二人がお店の中にある武器や防具を物色しているとコハクが帰ってきた。
「ごめんなさいね。 とりあえず二人とも上に上がって頂戴」
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上に上がった二人は前と同じような感じで座っていた。
「それじゃあ本格的に始めましょうか。 ルナちゃんは暇になっちゃうだろうけどどうする? 待ってる?」
「それなら私はマイルームにいますね。 もし今後対人戦のイベントみたいなのがあってシロの装備私だけが知ってるってなるとなんかずるい気分になりますし。 シロはひと段落着いたら連絡お願いね」
ルナはそういい残すと、鍵を取り出してマイルームに移動していった。
「それじゃ、シロちゃん。 さっきのドラゴンの素材を全部出してもらえるかしら?」
「わかりました。 そういえば確認してなかったな……」
シロは手に入れた素材を確認することにした。
黒竜の鱗 8枚
黒竜の翼膜 2枚
黒竜の逆鱗 1枚
黒竜の頭角 1対
「これが全部ですね。 逆鱗と頭角ってなんですか?」
鱗と翼膜は宝箱にも入っていたのでわかるが逆鱗と頭角は名前だけならばレアなアイテムということくらいしかわからなかった。
「頭角はたまーに落とすレアアイテムね。 逆鱗も多分そうだと思う。 どうする? これは取っておく?」
「いえ、そのままつかってください」
「わかったわ。 後は装備の特性だけだけど……どうする? 火魔法に強くするとかVITに振るとかいろいろあるけど……」
「もちろんINT値上昇で!」
全くぶれないシロだった。
それにスキルの影響でVITなどに振っても1/3になってしまうのであまり上げる必要はなかった。
「まあそうだと思ったわ…… シロちゃん何か魔石ない? 魔法耐性を決めるのに使うんだけど」
「魔石? あ、そういえば」
シロは前に神殿で750MPを使って作った銀魔石を取り出した。
一体どうなるか予想もつかないがシロの持っている魔石の中では一番効果の高そうなのでそれなりの効果は期待していた。
「普通の魔石にするのねそうすると全部の魔法に均等な耐性が……あら?」
コハクは石の中に浮かぶ銀色の炎を見てとても興味深そうな顔をした。
「本当にシロちゃんって規格外ね、こんな魔石初めて見たわ。 どこで手に入れ……そういうところを詮索するのはマナー違反ね」
「それじゃあお願いしてもいいですか?」
「ええ、INT特化で使うのは銀の魔石ね。 少し待っていなさい。 素晴らしい物を作ってくるから」
そういうとコハクは自分のマイルームに行ってしまった。
「あ、そういえばお金……」
お金について聞くのを忘れていた。
今のシロの所持金は2万すこし、竜の素材と次のスタンピードで工面しようとしていたのだが相談し忘れてしまった。
色々と問題はあるがひとまずは話がひと段落したのでシロはルナに連絡を入れることにした。
『相談終わったよ。 この後どうする?』
待っていたのかすぐに帰ってきた。
『それじゃあそろそろ落ちない? 時間もお昼時だし』
ルナの言う通り現実の方はお昼にちょうどいい時間だった。
『そうだね。 お昼しようか』
『じゃあマイルームに行ってから落ちるようにね。 それじゃあお先に』
「結構遊んだと思ったのにまだお昼ごろだったんだ……」
さっそくシロはマイホームに行きログアウトした。
「〈ログアウト〉」