あんたはあの時の…!!みたいな!
恐る恐る振り向けば、赤茶色の髪をした人が腕を組んで立っていた。頭の色変えてるのにオーラがパないですよ!!
「試しに用意したこの髪をこんなに早く使うと思わなかったな」
握っていた手をロットさんが凄い勢いで抜いた。記録0.03秒。
「ロイさん?どうしてこちらに?」
ニッッッコリと笑ってなんとか誤魔化そうとしてみる。唸れユリエルの美少女チート!!!
「それで?デートの相手は誰だ?」
ふいっとロットさんとアベイルさんに視線を送られた。
ユリエルの唯一の武器、美少女チートがリアルイケメンには全く伝わらなかった…!!!だから素朴なヒロインに惹かれるのね…!
「ところで何故それを」
やや不貞腐れながら聞けば、
「珍しくシルクから連絡が連絡が来てな…『姉さんが誰かとデートするらしいですよ。ちなみに下町の方へ行ったようです』ってな。…アイツ、この俺をパシリにしやがっていい度胸だ…」
後半はブツブツ言ってて聞こえないわ?
「それで、デートの相手は?ロットか?アベイルか?」
「ミラさんですわ」
そう言って腕を組めば「ひぃぃ」と小さい声で悲鳴を上げられた。
「召喚士2人で出掛けるとは…いい度胸だな?」
やっぱり怒られた!!こればっかりはごめんなさい!!
隣のミラさんが泣きそうなのもごめんなさい。
そしていつの間にか周りに人がいない。変装してるのにちゃんと貴族の権力なのか貸切にされてる!!
「はっ…!!最初からクロモリを人型にして一緒に歩かせとけば良かったのでは!?でもそれじゃミラさんとデートにならないわ?ね?」
画期的事を思いつきに手を打てば「ユリエル黙って」と小声で指示された。はい黙ります。
「それで、ミラは分かったが残りの2人は?」
「アベイルさんは街で男性に強引に声掛けられてたのをクロモリにボッコボコにしてもらう前に助けて頂いて、ロットさんには会いたくて来ましたわ」
笑顔で状況を伝えれば、周りは溜め息か、頭を抱えるか…とりあえずあまり良くない反応をされてしまう。え?恩人だって事と友達に会いにきたって駄目なの??
「俺は今、初めてシルクに感謝を感じている」
「せやんな…よくこの姫さんをあれだけ周りに高貴だと感じさせる手腕は流石やわ…」
「えっと…シルクさんにボクらも習うべき…かもですね…」
「ユリエルがここまで無事に育ったのも…シルク様は保護者とかのくくりじゃ足りないわね」
あれ?なんかシルクが褒められてる!
よく分からないけど、シルクが褒められたら嬉しいわ!
「うちのシルクは素晴らしいでしょう?」
胸に手を当てドヤ顔で言えば、みんな力無く頷いた。
やったねシルク!!
「ところで下町に何をしに来たんだ?」
「本当にミラさんとデートです。つまりお友達と買い物しながらペンニーネ商会へ行って、商品開発して頂いた御礼を伝えに伺おうかと」
「なるほどな。次は最初からそう言って欲しい…いや、次からは連絡をしろ。また何かあったらどうするつもりだ」
それを言われたら詫びて頷くしかない。
「では、俺もペンニーネ商会へ行くか」
「え!?ロイ様が突然行って大丈夫かしら?」
そう言うと、ミラさんが肩を掴み
「人事だとよく見えてるみたいだけど、ユリエルの立場も、いきなり行ったら大丈夫じゃないのよ!!?」
なるほど!!と驚けば、ロットさんが苦笑いをしてた。次からちゃんと約束してからにします。
「ロイはんも来るとなると、ちょいとオレは先に店に顔出させて貰うわ。姫さんらもロイはんにアベイルが居れば大丈夫やろ!」
言うが早いかお店の方へ走っていった。
突然王族が下町のお店に来るなんてペンニーネ商会の皆さん驚いちゃうわね!
「はっ!!これはまるで遠山の…!!」
チラッとロイさんを見上げ…金髪だから金さんね!!と心で納得する。カツラで今は赤茶だけど。
下町に身分を隠して潜り込み…!!わかったわ!悪を成敗するときは、途中でカツラを取って戦って、御奉行所で、『この髪色、見忘れたとは言わせねぇぜ!!』的なやつよ!!
「ユーリ?行くぞ?」
「わかりましたわ金さん!」
「……キン?」
ロイさんが疑問を口にすれば「えっと…ここでお名前を直接呼んでバレないようにする為…ですか?」と、アベイルさんの援護に、とりあえず頷く。妄想のまま呼んでしまったとは言えないし。
「なるほど。それは面白いな」
そう言って手を繋いで歩き出す。
「懐かしいですわね」そう声を掛けようとすれば、少し耳が赤いのが見えて、幼いあの頃と違うのかと、なんだかこちらまで少し照れてしまい「ミラさんも一緒に繋ぎません?」と手を伸ばせば「巻き込まないで!」と言われてしまったわ。
女子高生が手を繋いで歩いてるの憧れだったんだけどなぁ〜…でもまぁ横に3人並んでるのは正直迷惑な話よね、うんうん。
****
2人から少し離れて、ミラはコッソリと自分よりユリエルと付き合いの長いアベイルに質問をしている。
「ねぇ書記?あたしさ…物凄いユリエルに憧れてたんだけど、親しくなればなる程アレ??ってなるのよね。あれって素?」
「あれが素…なんだと思いますよ。むしろアレが素で無ければ、周りはあんなに苦労はしないし…それに、その…みんなそんな彼女だから近くに居るんじゃないですかね…?あの…上手く言えませんが…」
「ねぇ、王子の手をもう離してフラフラ店に入ってくのも素?」
「はい…多分」
「…王子に変な星形の眼鏡掛けさせてるのも素?」
「自分で掛けさせといて笑ってますね…」
「めっちゃこっちに手招いてるのも…!?あそこって2人の世界になるとこじゃないの!?」
「…えっと、ボクも呼ばれたんで…」
いや!空気読みなさいよ!?とミラは言おうかと思ったが、嬉しそうなアベイルに声が掛けられず見送れば、分厚い眼鏡を外されハート形の眼鏡を掛けさせて笑ってるユリエルが目に入る。
その当人は三角形が潰れた様な眼鏡を掛けて、その縁に手を当てながら何故か「ざぁます!」と言って一人ウケていて、ミラは呆れた様に溜め息を吐いて「ユリエル?商会行くんじゃないったの?」と促せば、慌てた様に眼鏡を片付けて店を出ると、吸い込まれる様に斜め向かいの店に行った。
暫くして店から出てくると大きな箱を持っていて、ロイやアベイルが声を掛け、荷物持ちを買って出たようだ。
恐縮して御礼を言ってるが、途中から目線がまた違う店に流れてる。
「まったく、なんなのかしら?」
あぁしてると普通の女の子でしかなくて。
また新たな荷物を王太子に持たせてる彼女を止めに行こうと歩みだせば、気にせずミラに手を振ってる。
「ちょっとお店にそんな寄ってると遅くなるわよ?」
「え…そうね!でもちょっとだけ!そこの店だけ!!最後にするから!!」
ふらふらと店へと消えて行く彼女に「絶対嘘でしょ」と投げ掛ければ、荷物持ちと化した2人は仕方ないと笑っているのがミラの目に入る。
なんだかミラもおかしくなって、楽しそうに商品を手に取る彼女を2人と一緒に見守った。
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