楽しい楽しい打ち上げです!
今日のわたしは茶色の髪に、ちょっと縁の大きな眼鏡を掛けて、白いブラウスにリボンを付けて、濃い紫色の膝下丈のスカート。茶色の靴のヒールは1センチ。
後頭部にはシルバーの台座に小振りな真珠がいくつもついた可愛いバレッタ。
うっふっふ、シルクが無くした髪留めの代わりに、今朝新しくプレゼントしてくれたのよ!!
そんな新しい髪留めと、新しい義弟の思い出ゲットよ!でも10歳シルクの髪留めも出来る事ならカムバック!
「そんな訳で、わたくしどう見ても世間一般のお嬢の出来栄えですわ!!」
「うん。どんな訳か知らないけど、馬車の中危ないからじっとしててね」
ビシリと決めたポーズからちゃんと座り直す。よっこいしょういち。
そしてあと少しで目的地。みんなと外で会うなんてロットさん以外とした事ないし、しかも外食だなんて…ワクワクが止まらないわ!!
目の前にはいつもの如くシルクが居る。
キャスケット型の帽子を被り、ワイシャツのボタンを一つ開け、市販品では丈の足りなそうなグレーの細身のスラックス。オーダーメイドの有り難みを知るといいわ。
「我が義弟ながら、シンプルな服も似合うわねぇ〜。足が長いから馬車が狭く感じるわ」
「え?ありがとう?」
「嫌味よ」
「嫌味……?」
そんなこんな話してるうちに目的地に着く。
「嫌味…?」とまだ首を捻りながらも、ちゃんと先に降りてエスコートをしてくれるシルク。とりあえずなんか偉いと思う。
「ね?ところでシルク、わたし変なところはない?カツラがズレてるとか、お化粧がもうハゲてるとか…大丈夫?」
腕を組み歩くシルクを見上げて聞けば、
「大丈夫。姉さん。とても綺麗だよ」なんて言ってくれる。いや…この聞き方はなんか言わせた感もあるわね…
「いつもありがとうございます…」
「なんで突然申し訳なさそうになるの?」
困惑するシルクは置いといて、レストランの扉の前まで歩けば、自然な動きで扉を店員さんが開けてくれる。
ありがとうの代わりにニコリと微笑み、店内に入れば、ペンション風の少しこじんまりとしたレストラン。
少しだけ町からも外れた場所で、外観もログハウス風でとても可愛らしかった。
中には既に生徒会の3人とカルージュ先生が談笑したりお茶を飲んだりしている。
「お待たせしてしまいましたか?」
「おぉ姫さん!お疲れさん。それ前にウチで買ってくれた服やな!?よぉ似合っとるよ。店のモンに見せたら、泣いて喜ぶわ」
「まぁ、お上手ですわ」
シルクのエスコートを離れ、ロットさんと談笑すれば、「ユリエルくんか。変装してもユリエルくんの可愛らしさはどうしたって隠し切れないね」
なんてシレッと褒めてくれるレイさん。
「ありがとうございます」とは言うものの…この顔でこんなん言えてモテない要素が皆無だわ。と、天然イケメンに心の中で恐怖する。
ちなみにロットさんはグレーのシャツに短めの赤いネクタイ。ズボンは黒ベースに赤と緑の入ったチェック。髪色に合ってるし、チェックを着こなすハイカラお洒落さんね!
レイさんは襟元の詰まった白いシャツに紺色のパンツを合わせてる。いつも後ろで簡単に纏めてる薄いグレー髪も今日はサラリと下ろして、とにかく爽やか。シュッとしてる!
「お二人とも制服でない姿は新鮮ですね。よくお似合いです」
「あの…ユリエルさん。ウエルカムドリンクだそうです」
そう言ってグラスに入ったアイスティーを手渡してくれるアベイルさん。
紺のワイシャツに、ややフォーマルっぽい青のベストとスラックス。似合ってるけど、やはりグルグル眼鏡は外せないらしい。
「ありがとうアベイルさん。学園以外でお会いするのは初めてね。あっ今日は眼鏡仲間よ?」
眼鏡に手を当て微笑めば、アベイルさんも眼鏡の向こうで目を細めて笑うのが見えた。
「はい…こんな機会があって…その、嬉しいです」
「わたくしもよ。今日は沢山お喋りしましょう」
そんな会話していると、その少し猫背なアベイルさんの後ろからピョコリと、「ぼくもいるよ〜!」と天使が現れた。
天使はピンクのシャツに白のニットベストを合わせて、茶色のハーフパンツに、背中には羽が生えて…あら?羽は生えてなかったわ。マボロシ〜!
「カフィ、あなたも来てたのね!」
「うん。色々お手伝いしたから誘ってもらったの!」
「嬉しいわ!沢山お話ししましょうね!」
ニコニコと話していたけれど、わたしの後ろでアベイルさんが「沢山話す権利、即持ってかれてしまいました…」と、生徒会の2人に肩ポンされてるのはわたしには聞こえて居なかった。
少し話せばカフィはトイレだと離れてしまう。すると今度は後ろから演技がかった声が聞こえてくる。
「ユリエル様。今日もお美しいです…。どんなに隠しても、ユリエル様の高貴さは内から滲み出て、ワタクシめの心に刺さります」
「…なんでしょう。カルージュ先生に言われると、何故だか素直に受け取れないわたくしが居ますわ?えっとそれは兎も角、お疲れ様でした。生徒会のお仕事も引き続き受け持って下さっていたとお聞きしましたわ。お世話になっております」
「ワタクシめは、クロモリ様が羨ましい…!ワタクシめもユリエル様に仕え、命令して頂きたいです!」
両手を胸の前に組み、わたしの前に膝をつく。会話が成り立ってる気がしない!
「わたくし、クロモリに命令はしませんわ。お願いだけです。とりあえず立ってくださいまし」
「…そうなのですか?うん…来週から魔法の授業も始まりますし…是非ワタクシめにもクロモリ様との付き合いも教えて頂きたく存じます」
そんなことよりさっきからカルージュ先生は全身で感情を表現しすぎなのだけどツッコまないわ。その辺はロットさん辺りに任せたいけど、最近ロットさんもカルージュ先生放置気味。気持ちはわかるので言えないけれど。
しかし先生、黒のハイネックに黒のベロア生地のジャケットにパンツ。
さり気ない素材で出る色の違いに、長い濃紫の長い髪を一つサイドで軽く結んだものを肩から前に流して、180はありそうな長身に、均等の取れた細身の身体。…悔しいほどよく似合ってるわ!自分の魅せ方が判ってる服のチョイスが何故か憎いッ!黙ってればいいのに!!
とりあえずなんと返事をすれば良いのか迷っていると、レイさんが声をあげる。
「ロイくんは少し遅れると聞いてるし、先に始めさせて貰おうか?今日はお店のご厚意で貸し切りにして頂いてるので、立食でも、疲れたなら椅子に座ったり、ここでは気楽にしてくれて構わないよ。」
そう言うと、店員さんが改めて飲み物を持ってきてみんなの手に揃いのグラスが渡る。
「では改めて…、皆さん色々とお手伝い頂き有難う御座いました。本年度は諸事情で生徒会も人数が少なく困って居たところ、アベイルくんをはじめ、ユリエルくん、シルクくん、ロイくん…そしてカルージュ先生にも沢山の手助けをして頂き、無事魔法祭も終える事が出来ました。本当にありがとう。そしてお疲れ様でした。またこれからも引き続き宜しく頼みます」
そう言ってレイさんはニコリと見回せば、アベイルさんが諦めたように笑ってる。多分わたしとシルクも同じ様な顔をしてると思うわ。
「では、乾杯」
「「「「乾杯」」」」
そう言ってみんなコップを高く掲げ、ピンク色の炭酸飲料を口に運ぶ。
「姉さん、楽しそうだね」
「楽しいわ。こんなの初めてだもの。シルクは?楽しい?」
「そうだね。姉さんが楽しいなら僕も楽しいよ」
柔らかな微笑みを向けてくれれば、その後ろから「しかしシルっくん髪切ったんやな!このままレイみたいに伸ばすんかと思ったわ」と声が掛けられる。
「いえ…レイさんみたいって訳じゃ…そして切りたくて切った訳でも…」
「うひゃひゃひゃ、まるで通り魔にでも会ったみたいな顔やな!」
曖昧な返事を笑い飛ばすが、遠い目してるシルクに「え?ホンマに通り魔に会ったんか?」と聞けば「…似た様なものです…」と。
「ちょっと待って頂戴シルク!!?誰が通り魔よ!」
「え?姫さん、まさか…姫さんが切ったんか?」
「だって伸びてたんだもの。目に入ったら痛いし目が悪くなっても困るでしょう?」
「下町のオカンみたいな理由やな…。いや、シルっくん、お疲れさん…」
「…ありがとうございます」
なんかわかり合ってる感じの2人に、頬を膨らます。
だって中々上手く切れたと自己満足はしてるのよ。
ちょっと最初は手先がプルプルして、シルクもプルプルしてたけど!!
途中からは自信持ってサクサクいけたし!シルクは「そんなサクサクいかないで姉さん!」と泣きそうだったけど。
「…あれ?もしかして嫌だった?」
「喜んでる様に見えたなら、姉さんは凄いよ」
「…う〜ん…なら次までにクロモリで練習しとこうかしら?ほら、クロモリは髪も魔力なら切って捨てても大丈夫じゃないかしら?」
「姉さんの魔力を切って捨てないで!」
何故だかこの短時間でシルク疲れてる感が否めないわ。
「疲れたなら椅子に座ったら?」
「姉さんこそ座ってじっとしててほしいよ…」
その時店の扉が大きく開いて、燃える様な赤い髪をした大柄な男性が入ってくるなり
「ロイ!!そしてレイ!!ワシともう一度勝負しろ!!」
そう身体に見合う声で叫んだ。
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