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【書籍発売中】悪役令嬢なんてもうちょい若い子に任せたい  作者: そらいろさとり
高等部 三年生編

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IF リラン編 〜愛の形はそれぞれに〜



「やだぁ〜♡ ユーリちゃんたら何着ても似合うから、悩んじゃうわぁ〜♡」


 王宮の更衣室から出てきたユーリちゃんにウチは頬に手を当てても緩む頬を抑えられないと、その姿を上から下まで何度も見返す。

 

「……あの、リランさん? もうこれ……28着目なんですけど。そろそろ結婚式のドレスの試着も終わりいたしませんか?」

「しないわ♡」

「…………oh」


 ウチからすれば天変地異からの奇跡が起きて……いや、その言い方は失礼かもしれない。

 ユーリちゃんはカルヴァルカで王太子として一人立っていたウチを見て支えたいと思ってくれたと、ウチの手を取ってくれた。


 勿論、ロイの婚約者を奪うなんて流石に倫理観はどうかと思ったけど、ただアマトワと隣国であるカルヴァルカとの友好の為だと、伝説のアマテル似のユーリちゃんが来て、ウチと結婚し、王太子妃……そして王妃へとなれば、更なるアマトワとカルヴァルカの溝は埋まっていき、しかも聖女であるヒナタもユーリちゃんがこの国に住めば喜んで遊びに来るだろうし、そうなることで二国の絆はより強固になるだろう。


 ……なんて、堅苦しい理屈は抜きにすれば、正直そんな理由を述べながらも、あの可愛らしくも芯のある笑顔で「わたくしが、リランさんと共に未来を過ごしていきたいのですわ」なんて言ってくれたのなら、そんなの全てどうでもよくなっちゃったから仕方なくない?


「しかしユーリちゃんの服……う〜ん、露出度はイマイチね」

「わ、わたくしでも流石にこれ以上は……」


 困った笑顔でユーリちゃんが一歩引いた時、扉が勢いよく開かれた。


「ちょっ、助けて姉さん!!? ちょ、待って……!? 何その破廉恥な服は!?」


 二人きりになっていた衣装部屋に不躾にも飛び込んで来たのは、アマトワから共に来たシルクちゃん。

 てゆーか、シルクちゃん以外にこの部屋に入るの許可などしていない。


「破廉恥は言い過ぎじゃないかしら? ほら、わたくし達、アマトワの倫理観とか常識に囚われ過ぎかもしれないわ?」

「いや! 囚われ過ぎてないよ!? そんなドレス着てたらまずお父様が卒倒しちゃうからね!!? しっ、下着だけに薄手のベールみたいな……、そ、そんなので人前に出すわけにいかないからね!?」

「でもリランさんがこれがこちらの伝統的衣装って」

「シルクちゃん大丈夫よぉ〜♡ 流石にウチもこれで人前には出さないわぁ〜♡ これはウチが楽しんでるだけよ♡」

「ぬぁっ……!!?」


 騙されたとばかりにユーリちゃんから変な声が出たのを横に聞けば、シルクちゃんは、

「そりゃそうだよ……」と、頭を抱えながらその場に座り込む。そんな様子にユーリちゃんも、

「確かに一着着替える毎に少しずつ面積減ってるな〜とは思ってらいましたけど……くっ、やられましたわ。わたくしすごすご引き下がりますわ……すごすご……」

と、謎の言葉と共に項垂れて衣装部屋へと戻っていった。


「やぁねぇ〜。無粋よシルクちゃん。って、シルクちゃんも衣装合わせ中だったんでしょ?」

「……えぇ、まぁ。そんなことよりもリランさんの倫理観ってどうなってるんですか? 僕に妹さんを嫁がせるなんて」


 そう言うシルクちゃんに近付き目の前に座ると、すごすご?と、部屋に入ったユーリちゃんには確実に聞こえない声で会話を交わす。


「アマトワからそのままの地位でセルリア家丸ごとウチに移住させ、シルクちゃんに全く男となんて結婚する気のないワランを当てがったこと怒ってるの?」

「彼女の僕に対する態度見てれば、そうなんだろうなとは察しましたけど、そう言葉にされると……」

「悪いわね」


 ただ素直に謝罪の言葉を告げれば、彼は少し驚いた顔をすると、少し気まずそうに口を開く。


「母からのアマトワ王国の血を引く姉さんがこちらに嫁ぎ、アマトワの中枢を担っていた父がこの国の再建に加われば、きっと両国の結束は高まり、チュウラダとの隣り合った三国の緊張関係は明らかに変わっていくでしょうね」

「えぇ、そうね。もう間違えてもウチら二国に誘拐だのそれ以上手出しをすればどうなるかくらい流石に分かるでしょうね」


 今まで均衡を保っていた隣国同士の力関係は変わるのだと、それほどまでにこの結婚は効力を持っていくだろう。

 この国の聖女信仰も、アマトワに対するアマテル信仰への不信感も、ユーリちゃんを慕って来るであろうヒナタと仲良くしている様子は必ず国民にも伝わる。


 それにおおやけに口には出せずとも(フード)も彼女についてきたとなれば、チュウラダが我が国に対して何かすることは確実にないだろう。

 それに今までこの国の防守の要であった魔法騎士団はアベイルの父という団長を失い、いまだに揺らいでいる。

 そんな中で学園を卒業したアベイル、その姉マリアンヌを主軸に再建しているとはいえ立て直しにはまだ暫くの時間がかかるタイミングでのとフードの牽制力は何よりでかい。


「……事情はわかります。しかし、だからこそ僕の結婚こそ必要ないのでは? 姉さんは……貴方を……選んだ。それだけで充分に国政はまわるのですから、僕ら姉弟を共に入れることで、セルリア家……いやきっと僕の血は繋がってないからこそ、アマトワの勢力を二人と継がせたことで波紋が広がっています」

「そうね」


 微笑み答えれば、納得がいかないとその視線は厳しくこちらに向けられる。


「そうね、じゃありません。妹さんと結婚などさせなくても、僕は必ずお役に立つし裏切ったりしませんよ」

「あぁ、なるほど。そう受け取ってたのね」

「は?」


 やはり緩まぬ視線は可愛いとその頬に手を伸ばせば、そのまま触れられた。


「ふふっ、王太子の手を払うなんて無礼はしないのね。ウチはいいのよシルクちゃんなら」

「……何のことですか?」

「シルクちゃんが裏切るなんて思ってないわ。ユーリちゃんがいるもの」


 ゾクゾクと身体を走る快感に震えながら、その頬を撫でる。


「……もしそう思われるのでしたら、尚のこと」

「えぇ、でもずっと言ってたでしょう?」


 白い肌に銀の髪は美しく、緩む頬は止まらないとその顔を見つめる。


「ウチはシルクちゃんも欲しいの♡」

「!!?」


 目を見開き固まったその頬を撫でる。


「ウチはユーリちゃんも、同じくらいにシルクちゃんも大好きなのよ。二人とも愛してるの」


 ーーー愚直に、愚かに、綺麗で、

    己の信念に従い、正しくあろうとする二人。


「待ってください。僕が結婚するのは妹君ですよね⁉︎」

「えぇ、それは方便。そうすれば貴方はいつでもユーリちゃんと対等に会えて、また『義弟』になれる。姉さんと呼べるし、ウチと共に居る時も、それに……居ない間も愛する姉に変わらず会えるわ」


 無意識なのか止まる呼吸と、しかし裏腹に揺れる視線。


「ユーリちゃんには後々ウチの子を産んでもらわなきゃいけないのはわかるわね」

「……はい」


 握られた拳。しかし視線は覚悟を決めていたように真っ直ぐにこちらを見つめる。


「でもウチはユーリちゃんとシルクちゃんの……」

「リランさぁん! まともなドレスもありましたわ! ふふふ、素敵ね」


 言葉は最後まで紡いだが、部屋から出てきたユーリちゃんの声で掻き消えたかと思ったが、彼の耳には届いていたらしい。


「姉さん、似合ってるね」

「ふふふっ、シルクに言ってもらえると嬉しいわ」


 彼は立ち上がるとユーリちゃんに近付き褒めてから、その手を握るとユーリちゃんは少しだけ頬を赤く、しかし不思議そうな顔でシルクを見上げる。


「リランさん、先程の言葉、誠ですか?」

「えぇ、あなた方が互いに納得出来るなら」

「後悔は……しませんか?」

「しないわ。それでウチは全ての望みを手に入れるもの」


 シルクちゃんはまたユーリちゃんを見ると、その髪にキスを落として、「また来るね」と部屋を出て行った。


 その顔は決意を込めた男の顔で、またゾクゾクと身体を何かが駆け巡る。


「ふふっ、王太子として、いや王になる身としては絶対に間違えた選択よ」

「なにがですの?」


 ドレスのスカートを少し上げながら歩み微笑み近付く彼女に「綺麗ね」と告げれば嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに笑ってくれる。


 そんな些細な彼女の素の姿を一番見てきた彼が、元より自国の王太子(ロイ)と婚約していた彼女を結局諦められなかった彼が、突然ウチに掻っ攫われたからと言って素直に諦められるわけがない。


「ウチはこの一投で二羽も三羽も手に入れるわ」

「ん? 二兎を追う者は一兎をも得えず……とか言いますよ? 無理しすぎないで下さいね」

「うふふ、そうねぇ。1羽の時点で凄いのだものね」

「そうですよ?」


 何のことかはわからず言われた風だが、なんだか的を得た言葉だと、嬉しくてその頬にキスを落とせば、照れ臭そうに頬が染まる。


「ユーリちゃんは可愛いわ。ねぇ、本当のところ、シルクちゃんとウチ、どっちが好き」

「!?」


 驚くように見上げられた視線に答えなど要らないと、ただ柔らかなその唇に唇を重ね、否定も肯定もさせはしない。

 それに掴んだ肩の力はこれから抜かせていく決意だけを胸に刻み、唇を一度離して微笑んで、またもう一度重ねる。


「愛してるわ。貴方の覚悟も、どんな愛も全てウチは受け入れるわ」

「リランさん?」


 抱きしめてゾクゾクと身体を走る快感に身を委ねる。

 なんだか国政も何も捨ておいても、この世界で一番可愛い子達を愛でてしまいたいと、時折に自分の責務など放り出してしまいたいと思うが、この子達ならばそうはさせないでくれるのだろうと、ただ手に入れた幸せを今はただ抱きしめて、キスして、ただ君たちに愛を告げていく。



「ふふっ、ずっと愛してるわ♡」



お読みいただきありがとうございました!!

とても久々のIF話はリラン様でした。


このIFエンドは賛否両論あるかもしれませんが、リラン様なので、どう手を回しても全てを手に入れるのではないかと…。

恋愛に正解などないのかもしれません! では!!

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― 新着の感想 ―
民的には大正解。 強欲なリランを美味しくいただきました。 ユーリへの熱情ごとシルクを手に入れ、二人が恋仲になるのを許容するだけでなく、子作りさえも唆すとは! 一途な恋に身を焦がすシルクだからこそ、リ…
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