キリリとした顔だけキープ。
…わたしも観客席で見てちゃダメかな?
目の前の激しい戦いを傍観しながらそんな事を考える。
だって他の召喚士の人の戦いなんて見た事ないし、どんな動きするのかわからないんだもの。
むしろ指示したところで邪魔にしかならない気がするし!
ムムム…と眉間に力を入れて考える。
前世で子ども達と見たアニメは…ほら、なんか必殺技とか叫んでなかったかしら?
…やっぱり駄目だわ。わたしクロモリの必殺技なんて知らないし、それよりも必殺技って、必ず殺す技よ!?駄目駄目!!100パーこの場での断罪ルート確定よ!!?いやいやその前にロイさんにそんな技掛けてどうするの!!
とりあえずホラ…例えば前世で見た…100万雷攻撃!!みたいな!!!
……………あっ、わたしの技だわそれ。
自覚無いけど、わたしのやつ。
そして倒れるやつ。
………頑張って!!クロモリ!!!!
改めて試合に集中すれば、相変わらず五分五分っぽい。
ロイさんの魔法攻撃は召喚獣…つまり魔力の塊であるクロモリには効き辛く、致命傷を与えられない。
しかしクロモリの攻撃は直接攻撃のみの様で、魔法を躱して近づいても、炎の宿る剣に邪魔され互いに均衡を保っている。
爪と剣の擦り合う高い音が会場へ響く。
かと思えば飛び退き、次の瞬間には互いの後ろを取り合う様な壮絶なスピード勝負。
最初は盛り上がっていた会場も、息を詰めて見守って、時には思わず声援が上がる。
向かい合う、大型の黒豹のクロモリと、金髪碧眼の美形。
見た目が勇者と魔王ってな感じになっちゃってない!!?
クロモリ!大丈夫!わたしは貴方の事大好きよ!
お互い見た目に負けない愛らしさを手に入れていきましょう!!いや、クロモリは愛らしいわ!!!
その時、クロモリが揺らぐ様に消えた。
そしてロイさんは何も無い自分の横の空間へ高速で剣を振りかざすと、そこへ現れたクロモリが一瞬光って……今度こそ消えた…。
水を打った静けさ。
か〜ら〜の〜?
スタンディングオベーション!!!!!
イエーーーーイ!!盛り上がってるかい!!?アリーーナァァァ!!!2階席ーーー!!!とか言わないよ?ユリエル公爵令嬢だからね!!!一度やってみたい一般人な魂は封印。
「ユーリ」
「お疲れ様でした。ロイさん。クロモリの負けですわね」
そこまで言うと黙って微笑まれた。
…あちゃぁ。これはバレてるわ…
貫かれた瞬間、クロモリを戻した事。
たしかにクロモリが貫かれた。
しかしその瞬間の光は回復に転じる為の光。
でもここが引き時と、わたしは小さくクロモリの名を呼び魔力に戻し消した。
観客席はクロモリの見た目に騙されていると思うけど、クロモリの半分は優しさで出来てるのよ。
なので回復力が半端ない。まぁわたしも今知ったのだけどね!!
でも…ロイさんも瞬間的に勝つ方法があるのに使わなかったものね。
召喚獣が手に余るなら、簡単。
召喚士を狙えばいい。
しかもわたしは狙いやすいことこの上ない他に物がない闘技場。つまりはまな板の上の鯉状態。
一度でもわたしを狙えば、クロモリはわたしを護る為の動きが増えて確実に散漫になったはず。
「この勝負、明らかにロイさんの勝ちですわ」
そう微笑めば、その意味は通じたらしく微笑み、そして剣を高々と掲げた。
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