細かいトコは覚えてないけど、これフラグキタ…
「ユーリ!喜びなさい!!! 王国より王子の婚約者にどうかと打診が来たぞ!!」
「いっっいいっっっ嫌ですぅぅぅうぅぅっ!!」
家族団欒の時間と入った食堂では、待ちきれないといったばかりの父が両手を広げてのっぴきならない案件を満面の笑みで伝えてきたが、私は思わず一歩下がりながら叫んでしまい、父は信じられないものをみるように、「え!?えっ!?」と私と母を交互に見るが、母は「あらぁ〜?」と首を傾げて笑っている。
いやいや笑ってる場合でないし!!
なんで昨日の今日でそんなことに!?
顔面蒼白の私に「と…とりあえず座ろう。そしてご飯を食べようか」と、持ち直した父は尊敬に値すると思う。
まだ断片的にしか思い出せない記憶だが、多分あの本はゲームのコミカライズ版。
私の読んでいた小説は、メインヒーローのロイ様とヒロインがいい感じになって完。
たしか2巻までは読んだが、最終巻の3巻はまだ発売前だったのか、娘が嫁入り先で買ってそっちにあったのかは確認していない。
とりま2巻で悪役令嬢は断罪されてたけどね!
なんとなくの記憶だけれど、2巻の巻末予告で3巻は、本編や、小説で書けなかった、ヒロインやら他のキャラとの恋愛模様だか、悪役令嬢の裏の顔?表の顔?だとか、今まで明かされなかったストーリー的な…ことが書いてあったはず。
だからメインストーリーは基本読んだと思う……多分。
……はず、多分、なんとなく〜ってのは、娘は異世界系好きだったのか、似たような異世界系何冊もあって、私も暇つぶしにかなり読んだから、ぶっちゃけ思い出せるストーリーは記憶に混在してる。
でもどのキャラも名前思い出せない……。
ふふ…私にとっては、遊びみたいな、その時その時の男だったのよ……。
とかいい女ぶってみてみたりして〜。
「…ユーリ?何が嫌なんだ?父はお前にとって、これ以上ない良い話だと思うのだか…」
フォークとナイフを両手に持ったまま項垂れている私におずおずと父から声をかけられた。
「わたし、まだ5歳だし…もう少しで6歳だけど…だけど…」
唇を噛み締めて、奥の手の言葉を叫ぶ。
「わたし!!お父様か、お爺様と結婚したいのに!!」
目に涙を溜めて一度目を合わせてから〜の、顔を逸らして辛さアピール!!悪女よ!美少女悪女よ!!今だけ紛う事なく悪役令嬢よ!!
てかお父様と〜なんて言いつつ、正直お爺様くらいが話し合うんじゃないかな〜とか思ってる。
前世の私も結婚早かったけど、貴族ってもっと結婚早いから、お父様ぶっちゃけ若い。今いくつだっけ?たしか24だか25だっけ?
ぐはぁっむしろ息子じゃん!!
お爺様でも50とかその辺だし、もう6歳にして枯専と言われても構わないけど、他所では言わない!!どんなヒヒジジと貴族間で繋がってるかわかんないからね!!
その点お爺様はロマンスグレー入った絶対仕事できるタイプで、しかもお婆様と孫溺愛系イケオジだったし、もうホントぶっちゃけると私的には血縁関係さえ無ければwelcome!くらい好みでした。
ホントは情に訴えるならお父様だけで良かったのに、本音混じりました。すいません。
ってそんなことはどうでもよくて、
前世の記憶が綺麗に残りすぎじゃないかな神さま…!!
いや、断罪されると思えば、あってよかったのだけれども!!
そらしていた視界にふと影が入り込んだと思った瞬間、メチャ抱きしめられて、ほっぺとほっぺが右へ左へと頬擦りというなの拷問を受ける。イケパパにも髭はある。
「そうか〜ユーリはお父様と結婚したいか〜!!お父様お母様と結婚してるからユーリが産まれたのだけど、もうホント何!?うちの子天使なのか〜!!?」
「お父様っ!痛いってばっ!お髭が痛い〜っ!!」
ペチペチと父の身体や頭を必死で叩くと、名残惜しそうに離れていく。
いやお母様「あらあら〜」って微笑んでないで止めとくれ。アナがめっちゃ可愛いくしてくれた頭ぐしゃぐしゃですがな。
コホンと咳を一つして、父は何事もなかったように(いや、今の今でよくその面出来るな)と、心で突っ込みつつ、また席について、
「今は正直心から断りたいが、うんめちゃくちゃ断りたい。兎に角本心で断りたいのは山々だが、いきなり王族にお断りする訳にいかない。なのでこの話は先送りという形を取らせてもらおう。そして改めてそうだな…せめてユーリが12歳、学園に入る頃に互いに再確認をし、婚約をどうするか決めよう。…それならば、いいか?ユーリ?」
めっちゃお伺い立ててくれるお父様に、もうヤダヤダ言える訳もなく、コクリと頷くと、両親共に安心した様に笑った。