セクハラパワハラ、ハラハラしたら即相談(出来る限り偉い人に)
「どちら様ですか?」
「知らない?そっかユリエルちゃんは担当クラスじゃないからね」
「……教員の方でしたか。では失礼いたします。」
早々に立ち去ろうとすれば、それより先に隣に座り手に手を添えられて至近距離で微笑みを向けられる。
「名前はね、ベレト・カルージュ。この学校の教師だよ……。ねぇ?ユリエルちゃん?ここの東屋……何のためにあると思う?」
麗しさと妖しさの混じる瞳を向け、自然な動作でわたしの頬に手を伸ばし…
「ここは…恋人の逢瀬にッイデデデデデデデデ!!」
その伸ばした手を、グイッと掴み躊躇いなく捻じ曲げた。
お色気教師担当さんよ…
アンタは…やっちゃいけない事をした!!!
ここは学園!! そして私達は教師と生徒!!
禁断!? 歳なんて関係ない!? 愛ゆえに!!?
そんな意見対して、声高々に言わせてもらおう。
ア ホ を 抜 か す な!!!!
親は学校を信じて、
教師を信じて、
手塩にかけた可愛い我が子の成長を願い、
その為に学校に入れるのよ!!!
だからこそ攻略対象者だからなんぞ関係ない! お色気担当が教師だの、最初から仲良くするのオレはどう? だの、生徒に対して必要以上の至近距離に寄るだの、挙げ句の果てにその身に触れるだの……、
赦 さ れ る と 思 う な !!
突然空は暗雲立ち込め、雷鳴が轟き始め、痛い程の雨が降り出し、遠くの生徒から悲鳴と校舎へと向かって駆ける音が聞こえる。
「ゆ…ユリエルちゃん?」
わたしは立ち上がると、痛めた手を押さえる教師を見下ろし、
「教師ともあろう方が初めて会話を交わす生徒に〝ちゃん付け〟ですか?資格を取るときに生徒とは適度な距離感をもって接すると習いませんでしたか?」
「え…、いや、そうだね。だけどみんなオレの事好きになっちゃうし?」
雷鳴とわたしにどちらに合わせるかとばかりに揺れるその視線など気にすることもなく、わたしは言葉を続ける。
「ハッッッ‼︎ 自意識過剰も甚だしい!! そんな言い訳通じるわけ無いでしょう!? 何様のつもりですか?! 親御さんからお預かりした、年端も行かぬ子供に期待を持たせ、相手のせいにするなんて!! 屑としか言えません!!」
「く……くず……‼︎」
「教師としての資格の前に教師としての自覚、いえ!大人としての自覚をお持ちになって下さいませ!!でないと……」
「……でないと?」
「たとえお天道さまが許しても、このわたくしが……許しませんわ!!」
思わず目を見開いてそう言えば、ピシャーーーーーンッッッと背景で雷が落ちた。
「ユ……ユリエルちゃ……?」
ピッシャーーン!!!!!
「えっと…ユリエルさんっ!いや!ユリエル様!!」
「誰が遜れと言いましたか!」
「はいっ!以後この様なことのない様に致します!」
「二度と生徒に不埒な行動を為さらないと誓えますか!?」
「はい!この身を賭けて、ユリエル様への忠誠を誓います」
「誰もそんな事誓わせてはおりませんわ!!」
ピッシャーーン!!
「もう!二度と…しませんので…もし宜しければ、もう一度、オレの事を屑とお呼び下さい!!」
「誰もそんな話しておりません!!!」
ピッシャーーン!!!
「姉さん!!!?」
雨の中わたしを探してくれていたらしいシルクが東屋に駆け寄って…地べたに座り見上げる教師と、それを見下す姉に目を白黒させているが、今はそんな場合ではない。
「それで!?先程の話に関してちゃんと誓えますの?!」
「ハイっっ!!必ず二度としないと誓います!!ですので是非もう一度…!」
「もう黙って下さるかしらっっ!!」
ピッシャーーーーン!!!!
「もしかして姉さんが原因なの!?この空模様!?なんなんだこれ!?てかどう言う状況なの!!?」
オロオロする義弟に返事する事なく、怒り心頭のわたしは相変わらず屑教師を見下ろして説教を続けるが、何故か目の中にハート模様に見える気がする相手に響いている気がせず、引き続き叱咤する。
「姉さん…!! 姉さん!!! 良くわかんないけど……いやホント良くわかりたくもないんだけど、彼には逆効果な気がするよ!? いや、ホントわかりたくもないんだけど!!」
必死で訴える義弟の声も耳に入らず「ここまで言っても分からないなら、屑は屑のままじゃない!!」と言えば、胸を押さえ「ハァハァ」と熱い吐息を漏らし始めた辺りで、シルクは両手で自分の頭をグシャグシャっとすると、
「あぁ…くそっ!!この手だけは使いたくなかった!!!」
そう言うが早いか、姿勢を下げ、わたしの腕に絡みつくと、上目遣いで
「お姉ちゃん?僕、食後のデザート食べたいな」
ピッシャーーーーーーーーーーーーン!!!
その雷を最後に、空は晴れ渡り小鳥が囀り始める。
「まだ、食堂開いてるかしら?あらやだ!シルクびしゃびしゃじゃない!?水も滴る良い男ってやつね!」
ポケットからハンカチを出し、頬を撫でながら言えば、何か大切なものを捨てた顔をして
「うん…姉さん。拭いてくれてありがとう。さ、デザート食べようか」
眼に光の宿らない顔でエスコートしてくれる。
うちの子が一番可愛い!!!
今までの事など忘れ、鼻歌混じりでシルクのエスコートで学園に向かう。
「……ユリエル様、なんと甘美な実を……ありがとうございます」
後ろでポツリと誰かが言ってるのも、私にはもう知る由も知る気も全然全くこれっぽっちも一ミクロンも無かった。
学園にもうすぐ着く頃、エスコートしてくれている腕から、突然力の入らなくなった手が離れてしまう。
「姉さん?!」
振り向き驚くシルクを、薄れゆく視界の中、
「だいじょぶ…よ?」
なんとか必死で答えた後、記憶が途絶えてしまった。
ベレトのキャラこんなはずじゃ無かった方に転ぶ。
あれぇ〜?
※評価ブクマありがとうございます!!
もんどり打つほど嬉しいです!!!
引き続き楽しんで頂けるよう頑張ります!





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