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秘策は引ツ裂く…とかの駄洒落はカフィには洒落にならない気がするので心に留めて置こうと思います。






『ぼくが生徒会に入ったあかつきには、宿題を無くします!!!』



 風魔法で全校生徒に響く声でハッキリと宣言をしたカフィに思わずブレザーの肩の部分がずるりと落ちる。


「……もしかして、カフィの言ってた秘策って…」

「ユーリのような事を言う奴が、本当に居るとは…」

「わ、わたくしのは冗談のつもりでしたわよ!?」


 舞台袖でわたしはロイさんの腕を組み、その発言を聞いていた…。





*******




 今日の昼食後は全校生徒が講堂に集まり、生徒会立候補演説を聞く日程。


 レイさんのアナウンスから始まり、先ずは他に候補の居ないロイさんが壇上に上がり決意を述べる。


 その堂々として凛とした振る舞い、そして今の学園から未来に向けての言葉は、生徒達の心を掴むには充分で、皆胸を打たれた様子すら見て取れた。


「お疲れ様でしたロイさん。御立派でしたわ」


 終わって袖に来たロイさんに向けて、なんて立派に成長したんだと感動して涙を浮かべうんうんと頷けば「…なんだか成長した息子を見守る母の様に見えるが気のせいか?」と言われ、「気のせいですわ」と御近所の子に感情入れすぎおばちゃんの様な気がして目線を逸らす。



「ほら!次はカフィですわ!」

「納得はいってないが…まぁいい、カフィトルの秘策とやらの演説聞かせて貰おうか」


 そう袖から覗けば、カフィが壇上の机の前に立つが、大人用のソレの前に立つとほぼ見えなくなった。

 むしろ下から見たらカフィは消えてしまったのでは!?そう心配したところでレイさんが台を持って登場し、風魔法の位置を調整した様子が見えた。


『お待たせしました!カフィトル・マグラウドです。今回の立候補者では唯一の一年生です。宜しくお願いします』


 ペコリとお辞儀をしてニコリと笑う。




「ユーリ…落ち着け。俺をバシバシするな」

「だって見てます?ロイさん!?カフィがあんなに堂々と…!!こちらの方が緊張して魔力が暴走しそうですわ」

「………捕まっとけ」


 そう言ってわたしの腕を絡ませられると、遠慮なくぎゅうっと握ってカフィの動向を見つめた……で、冒頭の所に戻る。





『学園は、もっと自由な時間があっていいと思います。宿題は学園から帰宅しても、その時間を縛ります。一人一人の得手不得手ではなく、クラス全員に平等に宿題をやらせるのは非効率だとぼくは思います』


 そうだそうだー、などと少し応援?の声も聞こえ、カフィトルの言ってる事も一理あるのはわかる。


『なので、ぼくは宿題を廃止したいとおもいます!』


 盛り上がる生徒達が「いいぞー!」「家では勉強しなくて済むな!!」とか盛り上がるのを、どこの世界も一緒ねと苦笑いをすれば、壇上のカフィトルの『なんで?』の声が風魔法で不思議そうに響いた。



 生徒達がキョトンとする中、


『宿題は効率が悪いから廃止して、個人個人で苦手分野を克服すればいいでしょう?なんでお勉強しないの?』


 至極真っ当という名の鈍器で盛り上がる生徒を殴る。



「なるほど…カフィトルからしたら宿題の意味がわからなかったのか…本人にすれば、予習にも復習にも至らないそれに時間を割く意味を見出せなかったと…」

「その…ようですわね」


 シーンとする会場に『ありがとうございました』と頭を下げて、こちらに来たカフィをロイさんから離れて袖を捲り招き入れ「お疲れ様」と声を掛ければ、シューーンとしてる。


「ゆりえるせんぱい…ぼく間違ってた?」

「間違えては居ないのだけど、カフィは賢すぎて、ちょっとだけ分からないことがあったのね」

「そうなのかも…ぼく……ぼく…」


 涙を浮かべてそう言うと「ゆりえるさまぁ〜お膝抱っこして〜!」といつかのお願いをされるが、

「ご、ごめんなさいカフィ、今からシルクの演説なのよ?お姉ちゃんとして見なくては!!心のメモリアルに刻まなくては!」と返せば「やっぱシルクさまズルい〜!」と、袖に向かうわたしの服を掴みながらついてくる。



 ロイさんの横から壇上を覗けば、レイさんが足元の台を退け、背筋を伸ばして立つシルクが見える。


『皆さんこんにちは。生徒会副会長立候補、シルク・ファン・セルリアです』


 微笑むその顔に女の子がキュンとしたのがわかる。ふっふっふ!うちの義弟爽やかでしょう!?ドヤっとわたしも何故だか胸を張りたくなる。


『正直に言いますと、僕はここに立つ事をとても躊躇いました。 昨年よりとあるきっかけから生徒会を手伝うことになりましたが、先輩方の御苦労を目の当たりにしてその大変さは身に染み、僕では心血を注ぐ程の努力をしていかないと繋ぐことが出来ないとそう思えたからです。……それでもここに立つ決心をしたのは、その先輩方の見えない場所での立ち回りから出来上がる功績や素晴らしさに尊敬を抱き、その様な人に成りたいと思えたからです。 僕らが楽しく学園を過ごせているのも、いままでそうして努力して下さった先輩の方々や先生方のご尽力の賜物なのだと、それに少しでも恩返しが出来るなら…、そんな風に思わせて頂ける方々に出会えたからに他なりません」


 そこまで言うと少し間を置いて、改めて微笑んで話し始める。


「僕が就任して、一年で何かを変えられるほどの事が出来るとは思っておりません。それでも皆さんと心地良く過ごせる場所と時間を作るお手伝いが出来たらと……その努力は怠らないつもりです。至らぬ所はあると思いますが、どうぞ宜しくお願いします。 ご静聴ありがとうございました』



 お辞儀をして去るシルクの、その等身大の言葉に割れんばかりの拍手が注がれる。



 舞台袖で待ち構えて居れば「緊張しちゃったよ」と笑うシルクの手をギュッと掴み「シルクらしくて良かったわ!!」と微笑めば、ふと気の抜けた可愛らしい笑顔を返された。



「ゆりえるさま抱っこは?」

「僕のいない隙にカフィトルは何を言ってるの?」


 ブーブーと言うカフィ達をよそに、そそくさとまたロイさんの横に並んでその舞台を覗けば、




『皆様こんにちは。書記立候補させて頂いてましたミラ・オーギュストでございます』



 そのちょっとツンとした声が講堂に響き渡った。





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