褒めて伸ばそう未来の宝!の方針は、わたしにも有効な様です
ポジティブシンキングで頑張ろう!!
……なんて思っていた時代もありました。
「お疲れ様!!姉さん!素敵だったよ!」
「はじめてにしては上出来だったな!!」
「ユリエル様!ありがとうございました!ボクが読むより、きっと皆さんの心に響いたと思います!!」
入学式が終わり疲れ切った身で、荷物を先程の空き教室に一部置いてあった為に向かうと、3人が先に来ていて口々に褒めてくれた事に、グッと来てしまいそうになる。
助かったのはマイクの代わりに舞台では、風魔法が拡張器の役割をしてくれて、普段程度の声で大丈夫だったこと。
舞台横で青くなり、
「声はどのくらいで話せばいいのかしら…」
そう少し震える声で呟くと、
「風魔法がありますから、練習通りで大丈夫です」
本人も緊張しているはずなのに優しく微笑んでくれたアベイルさまに感謝している。
「ありがとうございます。お陰でなんとか代役を務める事が出来ましたわ。不肖ゆえ皆さまにはご心配をおかけして申し訳ありません」
なんとか微笑み3人を見上げると、
「よくやったな」
そう言ってくしゃっと頭を撫でられた。
「ロイ様…」
彼に撫でられるとは思っておらず目が丸くなれば、間にシルクが入り込み、
「ホント姉さん、堂々として良かったよ。普段頑張ってる努力のお陰だね!」
「こいつ…っ!」
ニコニコと褒めてくれるシルクに、思わず硬くなっていた表情筋が解れたのを感じる。
「何度も言いますが、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!しかも先程先生に聞いたところ、本当はユリエル様は僕と同点で本当なら挨拶を読んでもおかしくない立場だったそうですよ!」
「まぁ!そうだったのですね!」
「なのにきっと男というだけで、ボクに白羽の矢が立った様で…それだけでも申し訳ないのに…本当にご迷惑をお掛けしました!」
「頭を上げて下さいな。わたくしはきっと先生方は点数だけでなく、回答内容を見てアベイル様を選ばれたのだと思いますよ?思い込みで自分を責めないで下さいませ。むしろまたとない良い経験をさせて頂いたと思っておりますわ」
「ユリエル様…っ!」
今にも泣き出しそうなアベイル様に、母性本能がグングン出そうになるが、なんとかググッと堪えて、
「それに…謝るより、もし宜しければ『ありがとう』の方が嬉しいですわ。これからクラスメイトになるんですもの。ごめんなさいで始まる関係より、ありがとうで始まる方が素敵でしょう?」
握手する為に手を伸ばせば、涙浮かべながら、「ありがとうございました」と、おずおずと両手で握手を返された。
「これから宜しくお願いしますね!アベイル様」
なんて表面では微笑んではいるが…
ぶっちゃけ本当は撫で回したい!!!!
10代の子が涙浮かべてるとか青春かっ!!青春だった!!!
でもこの年頃は難しい時期だし、中身はどうとしても、同級生の女の子に撫でられ頑張ったね!いい子いい子っ!なんてされたら、馬鹿にされたと思うかもしれない。万一トラウマ植え付けたら、こんな優秀な息子さん育てられた親御さんにも申し訳ない。
なのであとで家でぬいぐるみでも撫でまわそう!
ホントならシルクでも、ロイ様でも、過去の可愛い映像を思い返せば幾らでもよしよし出来る!!動物王国の彼をも凌ぐヨシヨシが出来る自信もある!!が、代役が同級生じゃ、意味ないじゃーん!って訳で我慢我慢!
「フンッッッ!!」
勢いよい声と共に、ロイ様に手刀で握手を切られる。
「ロイ様っ!何なさいますの?」
しかも手刀が当たったのはアベイル様。
「お怪我御座いませんか?」
思わず手を出そうとするも、サッとその間にシルクが入って、アベイル様の手の様子を見てくれる。優しい子に育ってくれて、お姉ちゃん嬉しいっ!
「人の婚約者と長々と手を繋いでいるからだ。」
「え!?婚約者!?」
目を丸くしてアベイル様はロイ様とシルクに視線を泳がせ…
「すいません…えっと、どちらの婚約者様でしょう?」
「俺だ!俺に決まってるだろう!!コイツは何度も姉さん姉さん呼んでるだろうが!!」
「え!?ならユリエル様は未来の王妃様!?」
「…の、予定なような、未定なような?」
「ブフッ」
「まてユーリ!予定は兎も角、未定ってなんだ未定って!?」
思わず素が出たロイ様に釣られて本音がポロリ、何故かめっちゃシルクがウケてる。
「いえ、この10代の内にロイ様に良い人が現れる可能性も無きにしもあらずで御座いましょう?その覚悟の上、わたくし生きております」
だから断罪なんかせず、素直に婚約破棄で大丈夫だからね!!
そんな気持ちを込めて王妃スマイルを向けると、ロイ様はわたしに背を向け頭を抱えて座り込んだ。
その背中をバシバシ叩いて見たことないくらいヒーヒー笑う義弟よ。幾ら学園が身分を排除し生活する場と言われても、不敬罪と言われても仕方なくない??
思わずヒヤヒヤして見つめていると、
「ならチャンスが無くはない…?」
なにやらわたしには聞こえない声で呟いたアベイル様は立ち上がり、
「握手…は、今日はもうやめておきますが、ユリエル様…是非ボクとお友達になって貰えませんか?」
「わたくしとお友達になって下さるの!?」
勢いよく振り向く2人に気を止めることなく
「嬉しいですわ!!クラスメイトですもの!!是非宜しくお願いいたします!!〝ユリエル様〟なんてお友達ですもの!ユリエル…は流石にマズいですわね…ユリエルさん!にして下さいませ!」
「はい!ユリエルさん!ボクもアベイルで構いませんが、アベイルさん…くらいの方が呼びやすいですかね?」
思わず満面の笑みでうんうんと肯く。
やったー!何はともあれ念願のお友達1号だわ!!
友達100人計画スタートよ!!
引き篭もりのせいで、10代の子の知り合いはロイ様と、シルクだけだったもの!
新たな高校生活!
楽しくなりそうだわ!!!
「おい、弟。なんでアレ、あんな自覚ないんだ?」
「あなたの弟でも無いんですけど…まぁいいや、僕だって頭痛いんですよ。王妃教育で閉じ込めてたのが、余計に拗らせた感はありますがね」
「逆効果だったか…」
「逆効果でしたね…」
なんて会話をしている事は、友達が出来て浮かれてるわたしの耳には入って来ないのも、仕方のない事だと思います。





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