なんて事のない日常の話だけど、日常が楽しいならそれって幸せなことよねぇ
放課後の今、生徒会のお手伝い真っ最中。
卒業式に向けて相変わらず業者との打ち合わせや来賓の連絡等々、兎に角準備に忙しい。
「ってゆーか、これって生徒の仕事ですの?」
思わず漏れた言葉にレイさんとロットさんが苦笑いを浮かべる。
「数年前までは教員の仕事だったらしいのだけどね、優秀な先輩がなんでもこなすものだから、いつの間仕事が増えて、それが今も引き継がれてるらしいのさ」
思わず手伝いにきてるベレト先生を見れば「ワタクシめが赴任される前の話で御座います」そう幸せそうに微笑む。違う。そんな笑顔が欲しいんじゃ無い。…いやこうして手伝いに来てくれてるだけで感謝すべきなんだけど。
「しかし優秀な先輩でしたのね」
「オレらも知らんけど、7か8年位前の…副会長やったか?実質そっちが裏方の全部仕事してたとかなんとか…」
「まぁ、今の副会長にも聞かせてあげたいですわね!」
「ユーリちゃん、ウチ今日は居るのよ?」
「知ってますわ?」
微笑みの応酬をしていれば、レイさんが徐ろに戸棚からファイルを取り出す。
「会長の名前は歴代わかりやすいんだけどね…副会長とかはどうしても調べないと…ええっと…あぁこの辺りかな?会長がエルリーデ・トンベック。えっと副会長の名前が…………ベレト・カルージュ…」
みんながジトッとした目で先生を見れば、
「…ワタクシめも若かったもので、使えない教師と打ち合わせが面倒くさくて」
綺麗な笑顔でそう言った。
「……ベレト先生…姫さんとの接触ひと月禁止やな」
「!!?」
目を見開く先生に全員がウンウンと頷き、リランさんを除く生徒会三人が廊下に押し出し鍵を閉めた。…みんなストレス溜まってたのね…。
「さぁ休んでる暇もないし頑張ろうか」
まるで何事も無かったかの様にレイさんが再開を告げる。
うん。扉が叩かれる音してたけど、しれっと風魔法で室内包んで聞こえなくする有能っぷり。
一年間お疲れ様ですっ!!!
「そう言えば、生徒会選挙とかございますの?」
「去年は引き継ぎがあれやったから、なぁなぁで無かっただけで、普段なら夏やね。おっ!姫さん立候補か?」
「丁重にお断りいたしますわ」
今度はわたしが微笑んで躱す番だった。
「しっかしなぁ、ホンマ手伝っとかんといきなり生徒会言われても大変なのはわかるしなぁ〜…なぁシルっくん?」
「僕も丁重にお断りさせて頂きます」
「くぅ〜、箸にも棒にも掛かってくれへん姉弟やで!…まぁ、もう掛かっとるけどな」
シレッとされたその言葉に、2人でガタンと立ち上がる。
「まだ春にもなって無いですし、希望者はまだ居るでしょう!?」
「そうですわ!?レイさんやロットさんの後は知ってるからこそ荷が重いです!!」
「買い被らんでえぇよ。なぁレイ?」
「そうだねぇ、僕らより優秀だものね。ユリエルくんもシルクくんもロイくんも。アベイルくんと一緒にやるには最適だと思うんだけどね」
そっと給湯室に行こうとしてたアベイルさんが「えぇえ〜…」と、涙目で振り返る。
「シルク…アベイルさんと頑張って頂戴!!わたくしは掃除会長で結構ですわ!」
「姉さん!僕を売ってさりげなく新しいポジションで落ち着こうとしないでくれないかな!?」
「あ!でも優秀な女の子がくるかもしれませんわ?ほんわかした…癒し系の」
「姫さんの知り合いで思い当たる人でもおるんか?」
ロットさんが少し驚いた様にこちらを向いて聞かれたので「いえ全然」と素直に答えれば「なんやそれ!?」と突っ込んでくれる。
「だってわたくしミラさんしか女の子のお友達おりませんもの!」
「悲しい事言ってくれるなや…」
「悲しくなんてありませんわ!ミラさんがおりますもの!!」
「姉さん!自慢はいいから!本題ずれてる!」
「自慢やったんか!!」
「あら?ユーリちゃん、ウチは?女性扱いしてくれてるんじゃないの?」
にこやかに入り込むリランさんに
「ん〜…でもリランさんとはお付き合いも短いし、まだお出掛けとかもしてないし、お友達と言って良いのかしら?」
と疑問を呈せば、
「ユーリちゃん?お友達になるって、時間が大切なのかしら?心の…触れ合いじゃない?」
そう言ってわたしの胸に手を置かれると、即座にレイさんに後ろに引かれ、ロットさんとシルクが間に入ってくる。
「リランさん…」
「せや!姫さん怒ったれ!」
「失礼にも程があります!!姉さん言いたいことは言うべきだよ!」
「えぇ!目が覚めましたわ!!!」
クワっと目を開いて声を上げれば、
「「「「は???」」」」
部屋全体でハモった。
「お友達は時間じゃありませんわ!!そうです!!アベイルさんとだって、出会った日にお友達になりましたもの!!ね!?アベイルさん!?」
「え!?あ、ハイそうでした…ね」
突然振られて、オロオロとしながらも返してくれる。
「ならリランさんともお友達ですわ!!不束者ですが宜しくお願いします!!」
ニッコリと微笑めば、リランさんが一瞬驚いた顔をしてから破顔した。
「あはっあははっ!!ユーリちゃんやっぱ貴女…面白いわ!やっぱウチに来なさいな!!」
「え…申し訳ないのですが、それはお断りいたしますわ。わたくし家族が大好きですのよ。そうそう会えない距離はちょっと…」
頬に手をあて首を傾げれば、リランさんはその綺麗な指を口に当て、
「でもユーリちゃん?ロイの婚約者でしょ?結婚したら王妃様、おいそれとおうちに帰れなくなっちゃうわよね?」
「…その辺はまぁそうなのですが…」
そろそろヒロインが…とも言えず苦笑いを返す。
「ユーリちゃん?何か隠してる?」
「なんのことです?」
スッと目を細められて問われたソレに、王妃教育の笑顔で何ごともないように返せば、仕方ないと言う様に溜め息をつかれ、
「ま、女には一つや二つや三つや四つ、十やそこいらの秘密は有るものよね。それも良い女の条件よ」
パチンとウインクされた。
「リランさんこそ良い女ですわねぇ。憧れますわ」
「あら嬉しい♡どの辺が?」
「…ウインクが上手なとことか」
「そこなの!?」
思わず隣のシルクからツッコミが入る。
「だってわたしウインク下手なんだもの。ちょっとシルクやってごらんなさいな」
「えー…はい、これでいい?」
「く…っ!普通に出来るしっっ!!レイさんは確実に出来るし、アベイルさん…は眼鏡だし…ロットさん!」
「ホイ!どや!?可愛いやろ!?」
「可愛いですわ!!だけど出来ないであって欲しかった!!」
「ご希望に添えんですまんなぁ〜」
うひゃひゃと笑って「ホイ!ほな姫さん」と言われて、みんなの視線が集まる。しまっっったぁぁぁ!!
「ぶ…ブサイクになりますわよ?」
「ホイ!姫さん」
「く…断りにくい合いの手を…!!」
「ホイ!姫さん!!」
「ぐぅ…」っと、小さくうめきながら「エイッ」…とやれば、目の前が何も見えなくなる。
「…姉さん。それただ両目瞑ってる…」
「だっ、だから下手だって言ってるのにっっっ!!」
多分顔が真っ赤になっていそうで両手で顔を押さえていれば、ソファの隣にリランさんが座って微笑んで話しかけてきた。
「ちょっとユーリちゃん?こっち向いてもう一度やってくれる?」
「わたくしに恥の上塗りをしろと!?」
「違う違う。教えてあげるわよ?」
そうウインクされて言われたなら仕方なく、いやウインクの憧れからリランさんに向き、パチリとウインクらしきものをする。
すると頬に手を添え「顔に力が入り過ぎよ?」と力を抜く様に撫でられる。
なるほどと、少し顔の力を抜いて、ゆっくりと一度目を開ければ、リランさんがみんなに羽交い締めされているのが目に入る。
「ユリエルくん、この人に油断しちゃだめだよ?」
「ある意味リランはんの立場聞いとらんで良かったわ!」
「姉さん、マジで!!マジで気をつけて!!」
「なっ、なんなんですの?」
「あっぶな!!ホンマ何しでかすかわからんなリランはん!」
「ベレト先生と同様、リランくんもユリエルくんにひと月接触禁止だね」
「え〜!?ちょっとくらいいいじゃない?挨拶よ?」
「挨拶のヤツは舌出さへん!」
「ユ…ユリエルさん、えっと…とりあえずお茶入れて頂いても宜しいですか?」
そうアベイルさんにお盆を渡されれば、頷き給湯室に準備しに入って出てきたら、リランさんの姿は消え、扉は鍵と氷魔法で固められてた。
……よくわからないけど、あれどうやって開けるのかしら?
火の属性の方ここに居なかったと思うのだけど、とか考えるけど、何故だか疲れ切ったみんなにそんな事を問うことが出来ず、お茶を出すのでありました。
読んで頂きありがとうございます!!
楽しんで頂けたならめちゃくちゃ嬉しいです!!
百万回の有難うを皆さまへ!!
こぼれ話の方も昨日更新。
宜しければ見てくださると嬉しいです♡(=´∀`)人(´∀`=)
どうでもいいですが、略して「ちょい若」と勝手に心で呼んでますが、もっとしっくりくる略しは無いものでしょうか…