実際やるとさっぱりわからないものもあるのねぇ。
魔法の授業は休憩を挟みつつ先生と色々と試してみた。
しかし…
「やっぱり出ませんね」と首を傾げれば、
「出ませんねぇ」とやはり首を傾げられた。
「お役に立てず申し訳ありません…」
「いえわたくしこそ至らないばかりに、先生には色々とご考慮頂いたのに申し訳ありませんわ」
お互いお辞儀をしていると「姉さん終わった?」とシルクが近づいてきた。
「もうすぐ終わりの時間だものね。今日は上手くいかなかったけど、また機会があれば頑張ってみるわ」
「教え方が悪く申し訳ありません」
「ですから先生は悪くありませんわ。わたくしが上手く放出するイメージがわかなくて…」
誘拐された時は身体から霧のような魔力が溢れ出してたけど、やはりそう簡単に上手くは行かないもので。
「そっか。闇って前例も少ないし、人それぞれかなり違うって読んだ本には書いてあったね。僕の氷も少ないけどイメージはし易いから、やっぱりなにかイメージがあると無いとじゃ違うものだね」
そう言うとシルクが目の前に右手を掲げて、キラキラと輝く小さな氷の魔法を見せてくれた。
「イメージ…」
ふむ…と、氷がクルクル回るその可愛らしい魔法を見ながら、顎に指を当て放出するイメージを改めて考えてみる。
…なんとなく、放出するイメージと言えばやっぱりアレなのよね…
でも真似する歳でもなかったし、正直正しいフォームがわからない。
「えっと…たしか…こう…」
シルクから少し離れて、両手を動かし考える。
「姉さん?何してるの?」
「ちょっと待って、なんとなくいけそうな気が…」
なんとなく朧げな知識で丹田に意識を集中して…
ゆっくりと大きく回した両手を脇あたりに持っていって…え、アレを叫ぶとか?いやいや無理無理無理無理。
「ゆ…」
「「ゆ?」」
首を捻る2人が可愛らしいのは今はなんも言えねぇ!ですわ。
「……ゆ〜り〜え〜る〜…」
だって赤い…真っ赤です!!茹で蛸レベルで自分の顔が赤いのは分かってる!!思い出せないからなんか色々オリジナルポーズ入っちゃったしラストのポーズすらあってるか自信ないけど、ここまで来たら行くしかない!!!そして思いつかなくて自分の名前でとりあえずやったのが更にとんでもない恥ずかしさを呼んでいる。
えぇいっ!!!ままよ!!!と心に決めて最後まで叫ぶ。
「波〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
ズバーーーーーーンッッッッ!!!
その両手の平から出ていったソレは、ベレト先生の服を掠めて勢いよく飛んでいく。
イメージとは違ってボールみたいに固まった黒い物。
驚いてその先を見たら、クロモリが飛び出し、そのサッカーボール程度の魔力の塊を額で一度上に打ち上げると、落ちてきたそれをガブリと噛み付く。
するとそれは弾け、クロモリの口の中に消えた。
クロモリめっちゃ満足そう。あ、オヤツ的な感じ?
あらやだ、もっとチョーダイ的なキラキラした目をしてる。
ボールで遊べておやつ貰えるとか、一挙両得ね!!そういえばクロモリとそんな遊びしてあげたことなかった!!お母さん気が付かなかったわ!
とか言ってる場合じゃないのは、他の2人が無言でこちらを見てる目が物語ってる。
「今のって…姉さん?」
シルクが呼ぶと同時にバターーーーンっ!!とベレト先生が倒れた。
球に当たった服の端は焼けた…消滅した?みたいに…いや、なんか魔力のカケラでも当たったのかなんなのか、全体的にセクシーな感じに服が焼き消えてる。なんなのこの仕様。ベレト仕様なのかしら。あ、この人お色気担当だっけ?
いやそんなことよりも心配してこうして駆け寄ったけど、そんな格好で倒れたまま恍惚としてるので、横に座ることなく立ったまま見下ろしてしまう。
「てゆーか!わたくし誰もいない方向を狙ったはずなのに、なんで先生に当たりますの!?明らかに駆け寄りましたわよね!?」
「闇の魔力に誘われて…」
「なんとなくそれっぽいことハァハァして言わないでおくんなまし!」
「姉さん!!大丈夫そうだからほっておこう!!」
「そうね」と言えば、「放置プレイもまた喜びの…」とか言われて、さっきよりあっさり手のひらの上に魔力の塊を出して投げつけようとすれば、シルクに「わかんないけど死ぬと思う!!」と後ろから羽交い締めにして止められた。
この教師はうら若き女生徒に平気で何を言っているのか!!
…しかし掠っただけで服が消えてるし、たしかに殺してはいかんと、球はクロモリ方面に投げれば2、3度ポンポーンと額で遊び、バクリと食べた。
サッカーがあればうちの子はエースでフォワードよ!!!…フォワードがどこ守るのかも知らないけど、クロモリならやってくれる!!!うん!!
鐘の音が聞こえて来たので、クロモリには魔力に戻ってもらい、シルクと教室に向かうことにした。
「姉さん、身体は?」
「ちょっとしんどいけど、もうこれで午前の授業終わりだものね。荷物置いて学食に行きま…あら?」
膝に力が入らずカクンとすれば、シルクが腰を持ち支えてくれた。
「自覚ないけど、やはり魔力の使い方下手なのね」
ごめんねと笑えば首を振って大丈夫と言ってくれる。
ホントこれじゃどちらが保護者なのからわからないわね。
シルクの腕を借りて支えられならが歩くと、そんな悩みが溜息と一緒にこぼれた。
読んで頂き有り難うございます!!
ブクマ、☆評価、感想、誤字報告、全部全部ありがとうございます!
そして本編に載せるまでもない『こぼれ話』を別枠で作りました。
そちらはめちゃくちゃ不定期更新です。
宜しければそちらも見て頂けると嬉しいです^_^