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二章「二人の新婚生活」1

 回想終了。時は現在に至る。


「あの、婚姻届を貰いに来たんですけれども」


 善は急げ。


 役所の夜間窓口で婚姻届を提出してしまおうという話に。


「少々お待ちくださいね……この用紙に必要事項を記入して提出してください」


 この紙っ切れ一つで俺達は結婚出来る。


「私が先に書いちゃうわね」


 改めて婚姻届を眺める。


 斗馬(とうま) 七海(ななみ)

 二十歳、誕生日はまだ来てないということは今年で二十一歳か。

 やっぱり年上なんだな。


「俺も書くぜ」


「ユーヤ、今日誕生日なんだ。おめでとう」


 ん? だからスギコーに居たんじゃないのか。

 まぁ、改めて祝ってくれたんだろう。


「って、俺、判子持ってないし出直しか」


「それに証人二人の署名と押印がなければ認められないみたいね」


「俺の両親海外なんだよなぁ……てか、親に何て話そう」


 というかトーマのご両親にも挨拶すらしてない。


「私達はもう自由に結婚出来る年齢よ。親にどうこう言われる筋合いないわ。それともユーヤは私との結婚嫌になった? 嫌なら無かったことにしてもいいけど」


 ふふんと挑発するような表情のトーマ。


「まさか。俺はトーマが運命の相手だと思ってるから」


 その表情が憎たらしくて両手でほっぺたを挟む。


「カッコいいのぉ~。お願いれすぅ~私と結婚してくだしゃい~」


 勝気ツンツン要素が大きいが本音を聞き出すには触れ合えばわかるみたいだ。


「頭なでなでしてぇ~」


 昔、こんなセリフ吐き散らすうるせぇフクロウのおもちゃあったよな……。


 要望にお応えして頭をなでるとおめめがハートマークになり恍惚の表情を浮かべる。


「でぇふぇぇへへへへへ」


 くっ、可愛いな。しかも髪がサラサラで気持ちいい。


「……はっ、証人の件は私に任せて。私の両親が承認になってくれると思うから。お互い学校終わったらこの続きは書きましょう」


「じゃあ証人の件はトーマに任せる」


「ねぇ、私もう斗馬の名前じゃなくなるんだからトーマって呼び方止めてよ」


 それもそうか。でも今更何て言えばいいんだろう。確か年上なんだよな。


 旗井さん? それは俺もか。


「七海さん」


「くはっ、もし頭なでながら言われてたら鼻血ブーだったわ。私もあだ名じゃなくてちゃんと勇也って呼ぶわ」


「七海さんっ~」


 試しに頭をなでながら俺の肩に抱き寄せてみる。


「ブフッー! ありがとうごじぇぇやすぅぅぅぅぅ。わっちもしゅきでしゅぅ」


 俺のヒロインが血反吐を履いた……そしてキャラが崩壊した。



 

   ◇




 その後、一命をとりとめた七海さんと連絡先を交換して一度お互いの自宅へ戻ったのだった。


「(俺、本当に結婚するんだよな)」


 結局、興奮して一睡も出来ないまま学校へ行くはめになった。


「……はよっす」


「ユウ君おはよう。なんか眠そうだな」


 スギコーで待っていたちーちゃんと合流する。


「……」


 つい数時間前にここで七海さんに結婚を申し込んだんだよな。


 思い出して悶える。プロポーズとは我ながらなんて大胆なことを。


「うおおおおおー!!」


 気が付けば自転車で爆走していた。


「待て! ユウ君。置いていくなー!」




 七海さんの感触が忘れられない。もう一度彼女に触れたい。


「おーす、勇也。決闘はどうなったんだ? 勝てたのか?」


 教室に辿り着くと遼がニカっと爽やかスマイルで出迎えてくる。


「決闘を申し込むつもりが結婚を申し込んだ」


「は? 結婚!?」


 遼の言葉に周囲の生徒が反応する。視線が気になり廊下に出て話をすることにした。


「やっぱ惚れたか。トーマ昔は女っ毛なかったけど美人になりそうなルックスしてたもんな。てっきり付き合うくらいにはなるかなとは思っていたが、思い切ったな」


「え? もしかして遼はトーマが女だって知ってたのか?」


「むしろお前が男だと思ってたのが不思議なくらいだ」


「力強くてガキ大将だったじゃないか」


「人、それをおてんばというんだよ」


 遼はニヤリと微笑み、窓の外を見てぼそりと呟く。


「俺はトーマと藤宮との三角関係泥沼を見たかったんだがな」


「なんでそこでちーちゃんが出てくるんだ?」


 俺の質問にやれやれといった溜め息を吐く。

 ?? マジで意味が解らん。


「結婚したお前にはもう関係のない話さ。おっ、噂をすればなんとやらだな。俺は先に教室に帰るぜ」


「はぁ……はぁ……ユウ君早すぎ」


「あ、ちーちゃん悪い。せっかく待っててくれたのに先に行っちまって。朝のホームルーム始まるしそろそろ俺も教室に戻るわ」


「待って」


 教室に戻ろうとした所をヌンチャクで絡めとられて引き戻される。

 妖怪ヘビ女め。


「これ、誕生日プレゼント。今日はユウ君の誕生日だったな」


 奇麗にラッピングされた袋を受け取る。


「ありがとうな。覚えてくれたのか。中見ていいか? はい、ヌンチャク」


 予想通りすぎてワクワクする暇すらなかった。


「昔使ったのはジュニア用だったから本格的な競技用の使ってほしいなと思って」


 持ち手がラバー素材で出来たスポーツヌンチャク用の物みたいだ。


「ありがたいけど稽古する場所がないからなぁ」


 武器を振り回すのである程度広い場所を確保しなければならない。

 それに競技用なら練習相手も欲しい所だ。 


「練習場所か……ちょっと考えてみるか……あっ、担任の先生来ちゃったから自分、教室に戻るぞ」


「おう、またな」


 ブンブンとヌンチャクを振り回すちーちゃんに応じるように真新しいヌンチャクを振り回す。


「授業に関係ない物を持ってくるな! 次は没収だぞ」


 速攻で生活指導の先生に怒られた。

 なんでちーちゃんは怒られないの!?


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