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五章「夏の思い出」2

 さっそく夏休みらしいイベントが起きたぜ。


「これが補習の日程表ね」


 終業式の後に本田先生に呼び出され職員室に来たらこれですよ。


「ノォウ! ニホンゴワッカリマセーン」

「日本語がわからないふりしても駄目だからね」


「どうして俺が補習を受けないといけないんですか?」

「それは期末テストに何教科も赤点あったからだよ。夏休み中は補習に参加しなければ留年もありえるから」


「そ、そんな。この俺が赤点だと? ……んー? あれ?」


 物語が始まって勉強してるシーンなかったな。

 それどころか授業受けてるような文章も見当たらないぞ? 

 俺って成績良いのか悪いのかそういう設定も書いてないぞ。


「それどころか授業もテストうけたテキストがないんですけど!」

「何を言っているのかわからないけど、このままだと推薦で大学受けられないからね。卒業見込みが最低限必要だからさ」


「それってどういうことですか?」

「いくら海外経験豊富で英語の資格豊富でも留年する人に卒業見込みの太鼓判押せないから推薦も出来ないよ」


「俺の未来予想図が……とにかく補習を受ければいいんですね」

「ただ受ければいいってもんじゃないよ。毎日テストするからそれに合格するまでは補習は続くよ。しかも七月中に合格できないと留年決定するからね」


「べ、勉強しよう」

「もっと早くその台詞を聞きたかったよ」


 夏休み。このままだと七月は補習で八月は講習で遊ぶ時間がなくなってしまう。

 なんとか補習を早く突破しよう。




   ◇




 補習初日。

 補習の最後に行われるテストが既定の点数に行けば合格らしい。


「といっても追試テストは合格できませんでしたーちくせうちくせう」


 理数系の科目と国語の科目が目標の点数まで及ばなかった。

 補習の教室を出て、とぼとぼと学食へ向かう。


「自分も合格できなかったよ」

「ちーちゃんもいたのか。頭悪そうだもんな」

「失敬な。自分は無断欠席の罰なの。期末試験を受けてないからね。頭悪いのは事実だけどさ」


 夏休みでも学食は営業しているのはありがたい。

 冷やし中華を注文していつもの席にすわる。


「このままでは夏休みが勉強漬けで終わってしまう。勉強をしなくてもいいために勉強を教えてください。生徒会長」


 午前中から自習に来ていた遼もちょうど食事中だったので拝み倒す。


「言ってることが支離滅裂だぞ。とはいえ俺も自分の勉強で忙しいからな」

「そこをなんとか。そうだ、誰かの家で勉強会しよう。ラノベっぽいじゃん」


「勉強会か。それならおもしろそうだな。とりあえずテストの結果見せてくれよ……基礎の部分から勉強したほうがいいな。氷雨(ひさめ)にお願いしてみるか」


「桜井さんに?」

「そ。あいつ文系クラス一位の成績だからな。基礎は氷雨に教えて貰って応用は俺が教えるわ。理系科目どうするかな?」


「それならリケジョが身近に要るんで俺が頼んでみるよ」

「トーマか。じゃあ集まる場所は放課後お前んち集合でいいよな」


「ちーちゃんもそれでいいよな」


 寂しそうにいじいじとヌンチャクを回していたぼっちを誘う。


「愛人として都合のいい様に使われてやろうじゃないの」


 嬉しそうにヌンチャクをぶん回す。

 こうしてテスト前にやっとけばいい勉強会を今更開催するのだった。




   ◇




「よ、トーマ。不甲斐ないアンタの旦那の家庭教師に来たぜ」

「旗井さん。お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

「二人ともありがとうね。どうぞ、上がって」


 放課後。遼と桜井さんのカップルが時間通りに来た。


「……藤宮さんも上がっていいわよ」

「はい。……あの、旗井さん、先日は申し訳ありませんでした」


 二人と違い、ちーちゃんはかなり気まずそうに頭を下げる。

 俺から、七海さんは気にしてないと口にしてあるが本人なりのケジメの付け方なんだろう。


「平気よ。もう気にしてないわ」

「でも……自分は……」

「決闘をしようとしただけで実際はしてないでしょう。だから気にしない。そゆこと」


 ちーちゃんは俺に目配せをする。ぎこちない笑みを浮かべ頷いた。


「ありがとうございます」

「この五人が揃うのも初めてだな」


 リビングのテーブルに皆を座らせる。


「ユーヤが共通の関係性だよな」


七海さんがキッチンから大皿とカップも運んできた。


「クッキー焼いたから皆食べてね」


「七海さんの作るお菓子は美味しからな。ついつい食べ過ぎちゃうぜ」


「それでか。一時期、ユーヤ太ったよな」

「家に帰ればお菓子と手料理作って待っててくれるんだぞ。愛しくてたまらんよ」

「美味しいです。うぅ、食べ過ぎには注意しないと」


 桜井さんは手を出すのをためらったが誘惑に勝てずにちょびちょびとクッキーを家事し始める。

 リスみたいで可愛い食べ方だ。


「氷雨はもうちょっとお肉つけても大丈夫だと思うけどな。藤宮は贅肉全然無さそうだな」

「毎日鍛えてるからね。体脂肪一桁だよ」


「羨ましいわね。私もヌンチャク始めようかしら」

「七海さんは今のままでも綺麗だよ」

「勇也……寝室に行こっか」


「はいはい。惚気はそこらへんにしてそろそろ勉強会始めようぜ。じゃあ、その雰囲気のまま、トーマはユーヤに、俺と氷雨は藤宮に分かれて。ある程度時間が経ったら教えるのを交換するってことでやろうぜ」



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