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三章「恋人未満の恋愛経験値」4

 腹ごしらえもしたし午後は体を動かす目的で乗ったスカイサイクリング。

 七海さんと俺は最速でゴールを目指すという目的を履き違えた乗り方をして前方の遼カップルに煽り運転しまくりで叱られた。


 ジェットコースターは桜井さんが嫌がったので俺と七海さんだけが乗った。

 上昇していく時に七海さんが無言で手を握ってきたのはいい思い出だった。


「おっ、遊園地と言えばこれだよな。ユーヤ遊ぼうぜ」

「レトロゲームコーナーか。わくわくしてくるな」


 アーケードゲームはもちろん、コインゲームや野球盤、じゃんけんゲームなど昔懐かしいものが置かれている。


「男子ならではのあるあるなんですかね?」

「氷雨ちゃん! 私もわくわくが止まらないわ、行きましょう!」


「四人でワニ叩くゲームやってここの最高記録塗り替えてやろうぜ」


 驚異的な数字でワニを完膚なきまでに叩き潰した。


「エアホッケーあるじゃん。ちょうど四人だし対戦しようぜ」


 遼の発言にぴくりと反応する俺と七海さん。


「「カップル対抗で闘おうじゃないか」」」


 こういう時はぴったり息が合うんだよな俺達夫婦は。


「氷雨、こいつらなにやらかすかわからないから眼鏡は外しておけ」

「う、うん」

「十点取った方が勝ちみたいだな。ユーヤからサーブでいいぞ」


 パックを受け取りまずは小手調べに軽く打つ。


「え、えい」

「いいぞ氷雨」


 桜井さんにブロックされて帰ってくるパック。


「ウォラァー!」

「は?」


 遼の素っ頓狂な声が漏れる。


 ひ、火の玉が飛んで行った。

 七海さんの撃ったパックが速すぎて摩擦で溶けた!?!?


「な、七海さんは守りに徹して! 俺が前へ出て攻撃するから」


 このまま七海さんに撃たせてたら遼はいいとして桜井さんが死んでしまう!


「うぇー、つまんないのー」


 それでなんとか試合は均衡を保たれた。


「えいっ、あ、ごめんなさい」

「いいよ。楽しんでいこうぜ氷雨」


 桜井さんは眼鏡が無いと良く見えないのか目を細めて前かがみになっている。

 ……そうなると色白で綺麗な鎖骨の奥には白いブラに包まれた慎ましい膨らみが見えてだな。


「も、もっと前へ出て攻めの姿勢で行くわ、ぜあぁ~」


 勢いを殺して前のめりにならないと打てない所へパックを撃つ。


「わ、来た。え、えい」


 さらに動き回るからストラップが緩んで先っぽが見えそう。


「スマッシュ!!!」


 この後の記憶が無くなった。


 気が付いたらベンチで七海さんに膝枕をされていた。

 遼の話だとダイレクトアタックで脳天を殴打されていたらしい。

 ……後ろから丸見えだったことを忘れていた。




 帰り時間も迫ってきたので最後のアトラクションに乗ることにした。


 締めと言えば観覧車だ。


「いい景色だな」


 ゴンドラはゆっくりと上昇し、夕焼けが地平線に沈んでいくのが見える。

 遊園地の全てが見下ろせる。


「人が点なってら。七海さんも見て見ろよ」

「お、思ったより高いわね」


 外の景色を覗こうとはせずにしがみついたままの七海さん。


「あれ? 七海さんびびってる?」

「こ、この私がびびってなんか……きゃあ」


 七海さんが立ち上がったその時ゴンドラが大きく揺れた。

 外の景色を見たためかふらっと体勢が崩れるのを慌てて支えて肩を抱き寄せる。


「別に苦手なことがあるからって馬鹿にしたりしないから無理しないでくれよ」


 頭をそっと優しくなでる。


「これで落ち着いた?」

「にゅへへへ~、らいじょうぶれすー」

「ジェットコースターで手握ってきたのも高い所が苦手だったから?」

「そうれすぅ。でもあの爽快感は好きなの」


 好き、という言葉に思わず反応をしてしまう。

 近い。改めてこの状況に気づかされる。密閉された空間で密着している。

 抱き寄せた体制のまま胸が押し付けられているし、吐息がかかって気持ちが高ぶる。


 ゴンドラが頂上に達したところで七海さんが目を瞑る。


「こうしていれば怖くないかもー」


 そう言って自分の唇をゆっくりとなでる。

 棒読み過ぎるだろ。


「(キスしてもいいってことだよな)」


 彼女から誘ってくれているんだ、応じない訳がない。


「んっ」


 口づけを交わす。

 湿り気を帯びた下唇を甘噛みする。


「あっ、ん、はっ……ちゅっ」


 それに応じるように彼女も口元を動かす。

 舌と舌でお互いを認識し合う。

 どちらかの唾液が雫となって溢れるがお構いなし。


「ん、っちゅ、あ」


 お互いの唇が離れ、見つめ合う。

 俺は大人になったのだ。

 子供のままでは出来ないことが今では出来る。


「初めてキスしちゃったね……」

「別にいいだろ。俺達夫婦なんだからさ」

「そうね。これからも色んな初めてを経験しましょう。二人で」

「あぁ、もちろんだ」


 しかし大人には責任が付いて回る。

 俺は七海さんの人生も背負っている。


「あ、流れ星。夕暮れ時に見えるなんてついてるわね」

「本当だ。願い事、願い事」


 このまま七海さんとずっと一緒にいられますように。三回繰り返す。


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