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三章「恋人未満の恋愛経験値」2

 ついにWデートの日がやってきた。


 バスに揺られること一時間。


 目的の場所についた。


「ここって……」


 入場口の向こう側にはジェットコースターや観覧車が見えた。


「おーっす。ユーヤ」


「おっす。遼。桜井さんもおはよう」


「おはようございます旗井(はたい)先輩」


 ピンクのワンピースに赤色のロリータパンプス。

 いつものおさげ髪には大きめの髪留めがついている。

 私服姿の桜井さんは新鮮だな。


「遼、ここの遊園地ってまさか」


「ユーヤは修学旅行でここに来る前に海外に行っちまったからな。今日は俺達からプレゼントだ。楽しめなかった分今日たくさん楽しんでくれよな」


 そう言って入園チケットを手渡してくれる遼。


「ありがとうな。よっしゃ、今日は少年の気持ちに戻って遊びまくるぞ」


 やってきたのは県内最大級の遊園地だった。


 某キャラクターのテーマパークと比べるとチープな感じもするが何でも詰め込んだのが魅力の巨大テーマパーク。


「ところでトーマは? 一緒じゃないのか」


「あー、なんか先に行っててくれって言われてさ」


 七海さんは俺より早起きしてたから寝坊という訳ではないんだろうが。


「お待たせ。少し準備に手間取っちゃって」


「……わぁ」


 桜井さんが感嘆の声を漏らす。


 ハーフアップにまとめた髪。

 白のノースリーブのブラウス、黒のミニスカートと涼し気な色のバイカラーパンプス。

 随分とお洒落に気合いが入ったファッションである。


「マジでトーマなのかよ。あの半袖短パンでいっつもどこか擦りむいてたトーマなのかよ」


 遼に肘で小突かれこくこくと頷く。見惚れてしまった。


「初めまして。勇也の妻の旗井 七海と言います。今日はよろしくね」


 大人の余裕と言った表情で笑みを浮かべながら挨拶をする七海さん。


「俺、ユーヤの幼馴染の神室 遼と言います。トーマは俺のこと覚えてる?」


「覚えてるわよ。勇也の隣で良く遊んでた子よね。それにしても神室君は可愛らしい彼女さん連れてるのね」


「あああ、あの桜井 氷雨ですよろしくお願いします」


「ええ、よろしくね。さぁ、行きましょう勇也」


 そう言って七海さんは俺の腕に自分の腕を絡ませてゲートへと歩き出す。


 こ、この体勢。七海さんの体の凹凸がダイレクトに感じられる。


「勇也すっごい心臓バクバクしてる」


「七海さんだって人のこと言えないぞ。顔真っ赤だぞ」


 二人は背中しか見えない一番のだらしない顔してるのは七海さんだこれでもかというくらい鼻の下伸びてるし……この見栄を張るためにそうとう苦労してるんだろうな。


「なんか大人の女性って感じだね。憧れるなぁ」


「俺は今日の氷雨も可愛くて好きだぞ」


 そんな俺達を尻目に遼カップルも手を繋ぎ、隣に並ぶ。




 入場ゲートをくぐると場内は非日常な風景が広がっている。


 巨大なアトラクションの数々に、ファンシーなお土産屋さん、マスコットキャラクターが写真撮影に応じている。場内のあちこちに笑顔が溢れていた。


 その光景を見ているだけでワクワクが止まらない。


「わー! すごっい! きゃー! ねぇ、ねぇ、勇也どれに乗る?」


 ぶんぶんと握られた手を振り回す七海さん。

 勝手にどこか行ってしまわないように必死で踏ん張る。


「それは皆で決めような。それよかはぐれないようにしてくれよ」


 先ほどの大人の余裕はどこ吹く風か。いつもの七海さんに戻った。


「わかった! わーあのキャラクター可愛い」


「あ、七海さん」


 七海さんがすれ違ったキャラクターに気を取られていると前方から子供がキャラクター目掛けて走ってきた。


 このままだと七海さんと子供がぶつかってしまう。

 下手したら子供は粉々だ。


「っ」


 俺は七海さんを抱き寄せてその肩を抱く。


「あ、ありがと」


 頬を掻きながら俯く七海さん。


「だから行っただろ。もうすこしで子供が粉砕されるところだったぜ」


「私はダンプカーか何かなの!? せめて突き飛ぶくらいが関の山よ」


「突き飛ぶって聞きなれない表現!」


「はは、さっそく見せつけてくれるじゃないか。乗り物なんだけどさ、トーマにぴったりな乗り物あるから最初はそれに乗ろうぜ」




 スターウォーカー。宇宙船を模した乗り物で宇宙を旅するアトラクションらしい。


 四人で宇宙船に乗り込む。もちろん七海さんは俺の隣だ。


「それでは宇宙の旅へ行ってらっしゃい」


 受付の元気なお姉さんの一言で宇宙船が線路の上を走り出す。


「おおおー結構揺れるな」


「わ、段々と暗くなってきた」


 傾斜のついた坂道を登っていく。ロケットで地球から飛び立つのを表してるみたいだ。


「大気圏突破したみたいだな」


「勇也見て、星がたくさん!」


 どうやらレールの上を移動しながらプラネタリウムを眺めるみたいだ。


 ナレーションの人が解説する星座が点滅して色が七色に変わるので見てて飽きない。


「はぁ~素敵」


 あちこち見渡して目がお星さまになってる七海さん。


『牡羊座。この星の由来は……』


「お、俺の星座。どうやら今回は十二星座を見ていく旅みたいだな。七海さんは何座だ?」


「八月生まれてで乙女座ね。ロマンチストが多いのよ。あ、見て勇也、あの星座はね」


 ナレーションそっちのけでより詳しい解説をしてくる七海さん。

 本当に星が好きなんだな。聞いているこっちも楽しくなってくる。


『それでは天の川を渡ります。お手元のシートを広げてください』


 緩やかに坂を下っていくと最後はウォータスプラッシュの要領でドボンと水辺に着地した。


「うおおおー! ひゃっほーい! おもしれー!」


「天の川で織姫と彦星が一緒になってるわ」


「あ、まじだ。良かったな。あ、そろそろ七海さんの乙女座も見れるんじゃない?」


 俺達は夢中になって色々な星を探し続けた。


「あ、流れ星」


「え、どこ?」


 七海さんが指さした先にきらりと流星が流れていく。


「願い事できた?」


「あー忘れてた。七海さんは?」


「このまま勇也とずっと一緒にいられますようにって。三回願ったわよ」


「叶うといいな。その願い事」


「叶えてみせるわ。きっと」


 七海さんが俺の手をぎゅっと握る。俺はその手を握り返したのだった。


ブクマありがとうございます。

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