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二章「二人の新婚生活」4

 七海さんは起き上がり体育座りをして空を眺め始める。


「今日も星が綺麗ね」


「そういえば昨日も星を見ていなかったか?」


「あまりにも奇麗だから見惚れていたら君に出会ったって感じね」


「星の導きに感謝。って、我ながらクサいな」


「そんなことないわ。私ね、星を見るのが好きで大学は天文学部なのよ。だからそういう言い回しって素敵だと思うわ」


「そうなんだ。好きになった理由でもあるのか?」


「勇也が遠くへ行ってしまっても同じ星を見てるかなって見上げるようになったのがきっかけかな」


「へ、へぇ……結構、一途でピュアなんだな」


 俺が彼女のしっとりとした髪をなでると「ほわわ~」ととろけた表情を浮かべる。


「じゅっと、じゅっと思いちゅじゅけてたんだからね~。んにゅ~。誰かさんみたく私を男だと思って敵対視してなかったからね。にしても決闘を申し込むって……ふふふふ」


「あーなんだ! 馬鹿にすんのか。抱き着いちゃうぞ」


「それは穴が大洪水になるから止めて!」


 どこが!? なにで!? 怖いからやめておこう。


 グゥゥゥー……。


「もしかして七海さんお腹減ってる? もう八時か」


 どうやら七海さんのお腹がなったようだ。


「ち、違うわ。今のはポルターガイストよ。この家は肯定ばかりする陽気なイエスマンに憑りつかれてるわ」


「陽気な幽霊ってのも見て見たい気がする……俺も腹減ったし晩御飯にしようか」


 そういえば家事の分担とかどうしような。


「七海さんは引っ越しで疲れてるだろうから休んでていいよ。俺が何か買ってくるよ」


「私が料理を作るわ!」


「いいの? 俺料理に苦手だから助かるわ。もしかして料理得意な人?」


「ま、まぁね」


 パンパンと自分の顔を叩いたあとに腕まくりをして台所に立つ。


「……てか、卵とウインナーしかないじゃない。お米は炊けてるし、調味料はある程度揃ってるからなんとかなるわね」


 フライパンで卵を炒めて、刻んだウインナーご飯を加える。


 あっという間にチャーハンが完成した。


「おぉ、美味そう」


「ざっとこんなもんよ。召し上がれ」


 ふふんと鼻を鳴らして自慢げな表情である。


「うめぇ……うめぇ……うめぇ!」


 濃いめの味付け俺の好みだ。ウインナーの歯ごたえがアクセントになっている。


「語彙力乏しい感想ね。でも嬉しいわ。あ、口元にご飯粒ついてる。がっついて食べるからよ」


「えっ、どっちに?」


「取ってあげるから動かないでぇぇーへへへへぅぇ!」


 自分から俺に触れてもテンション上がるんだな。


「勇也のご飯粒おいちー」


 とったご飯粒を緩んだ顔で口元へ運ぶ。


「明日からも料理は七海さんにお願いしてもいい? レパートリーないから飽きてきてたとこだったんだよね」


「も、もちろんよ。任せなさい」


「ごちそうさま。明日も美味しいご飯楽しみにしてるね」


 俺は先に食べ終わり流し台にお皿を片付けに立ち上がる。


「うー、どーしよう……変に見栄を張らなければよかったわ」


 ぶつぶつと何か言ってる七海さん。


「ん? 何か言ったか?」


「あぁ、洗い物は私がやるから置いといていいわよって言ったの」 


「ありがとう。これからの家事だけどさ、分担はどうしようか」


「料理の流れで洗い物も私がやるとして、あ、洗濯も」


「でも洗濯も力仕事じゃない? 俺の方が適任じゃないかな」


「見られたくないものもあるのよ。エッチね」


 あぁ、パンティーとかか。見たかったな。


「じゃあ、ゴミ出しと掃除は俺がやるよ」


 なんかこういう会話もいいな。一人だとめんどくさくて億劫になりがちだったけど二人だと楽しめる。


「買い出しは私がやるわ」


「俺も荷物持ちくらいなら付き合うけど」


「じゃあ、明日の夕方一緒に近所のスーパーに買い物にいきましょう」


 この時はまだ七海さんの張った見栄に気づいてはいなかった。




   ◇




 七海さんが洗い物をしている間にソファに横になりながらバライティ番組を観ている。


「……」


「ふーんふーん♪」


 鼻歌交りに七海さんはどこか機嫌がいいようだ。


 な、なんか落ち着かない。


 自分の家に誰か居るという現実があまり現実感がないのだ。


 と、思慮に陥ってる間に七海さんは居間を出ていく。


「ふぅー」


 別に一緒が嫌って訳じゃないんだけどまだ緊張するな。


「ねぇ、ドラマ見てもいい?」


 寝間着姿に着替えた七海さんが隣に座る。すらっと伸びた白い脚が綺麗だ。


「いいぜ。何となく見てただけだから」


 リモコンを手渡すとイケメン俳優が活躍する刑事ドラマが流れ始める。


 見始めると結構おもしろいもので熱い展開に集中していた。


「いやぁ、面白いもんだな。犯人は誰なんだろ……」


「すぅっー」


 クッションを抱いた七海さんが可愛い寝息をたてている。


 ふと、とある興味が湧く。


 寝ている状態で触れればどうなるんだろう。


 そっと頭をなでる。


「ん~んふふふっ、ファーファッファファ!」


 寝ながら照れて高笑いしてる。なんと器用な。


「あ、七海さんの寝る場所どうっすかな」


 俺は自分の部屋のベッドがある。


 七海さんには一階の客間を使ってもらっているが布団は持ってきてなかったよな。


 他にベッドがあると言えば父さんと母さんの寝室にあるダブルベッドな訳だが。


「ここで寝れば風邪ひいちゃうかもしれないしなぁ。……んしょっと」


 七海さんをお姫様抱っこでそっと持ち上げる。


 思った以上に軽い。

 だが、大事な存在としての重みは感じる。


 想い続けてきた相手にプロポーズされて、結婚して、同棲を初める。濃い一日だったろうな。


 俺の突拍子もない行動に付き添ってくれたことに感謝しつつベッドの上に寝かせる。


「ぅん……」


 寝返りをうつ七海さんを見つめる。


「ごくり」


 生唾を飲む。


 旗井夫妻が使っていたんだからお前も旗井夫妻として寝るべきではないかと邪な俺が脳内に直接語り掛けてくる。


「ユーヤ―ちゅかまえたぞー」


 がばっと俺の首元に抱き着きそのまま倒れ込む。


「な、七海さん」


 いやん。心の準備がまだ出来てない。


「トーマはユーヤがしゅきー……けっこんしたいのー」


「寝言かよ……てか、寝相悪いな。昔の夢でも見てるのか」


 がっしりと抱き着かれ身動きがとれない。脳筋め。


 安堵しきった緩んだ寝顔を見ていたらいつの間にか瞼が重くなっていた。


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