二章「二人の新婚生活」3
ブクマありがとうございます。
「はぁ……引っ越しで汗掻いたわね。お風呂貰ってもいい?」
主に自転車取りに行ったせいで汗掻いただけだと思うが。
「もう沸かしてあるから先に入っていいよ」
時刻は七時過ぎ。外はもう暗くなっている。
「さ、先に!? 勇也も一緒に入るの?」
「んえ?」
素っ頓狂な声が出る。一緒に入るって。ええ!?
「俺も入ってもいいの?」
「……いいわよ。だって私達夫婦だし」
「そうだね。だって夫婦だものな」
お互い顔を真っ赤にしてぼそぼそと呟く。
「やっぱり待って。私汗臭いから一度お風呂に入ってからじゃないと嫌よ」
「意味がわからん。のぼせるぞ……さすがに一緒に入るのはまだ早いんじゃないかな。俺達には俺達のペースってもんがあってだな」
「なに、勇也びびってんの。おちん〇んに自信ない系男子?」
「今すぐ見せたろうか」
「やー! 何脱いでるのよ! エッチスケッチワンタッチ」
「懐かしい言い回しだな……あははは」
「……ふふふ。勇也と居ると子供の頃の楽しい気持ちが戻ってくるわ」
何気ない会話も楽しいな。
「じゃあ私、お風呂入ってくるから」
七海さんはバスタオルと着替えを持って居間を出る。
「覗きまでは許すゾ」
居間の扉から顔だけ出してニヤニヤと話をする七海さん。
この野郎。俺に勇気がないとバカにしやがって。
数分後。浴室に続くの洗面室の扉をそっと開ける。
覗き込んであんちくしょうに恥ずかしい思いをさせてやる。
どうせ見栄を張っているだけだ。
覗けば「きゃー勇也さんのえっちー!」と、乙女な反応をするだろう。
「しかし、風呂に入ってる音だけでもなんか……こう……エロいな」
シャワーを浴びているのか。引き戸越しにうっすらと肌色が見える。
変な気持ちになってきたな。たまらん。
そっと、そっと浴室へと歩みを続ける。
「ん?」
ふと手を掛けた触り心地の良い感触が。
なんだこれ? 布切れか? サラサラしてる。
「パンティー」
思わずネイティブ発音が出てしまう。
これって当然だが七海さんのおパンツだよな。
「(おおおおおおおおおー!!)」
何とか声を押し殺すことができた。
ほんのり生暖かいということは脱ぎたて……!!
どうする?
→嗅ぐ
→頭に被る
→食べる
俺の選択肢! 全部変態っ!
「あー! 本当に覗きに来たんだ」
ふと、浴室の扉が全開になる。
「いえいえ、私はガス管の修理業者で……」
思わず見惚れてしまう。綺麗だ。
引っ込む所は引っ込んでて出るところは出てる。Dカップいや、Eカップか。
「な、何……ガン見されるとさすがに恥ずかしんだけど」
手で大事な所を隠しながら頬を染める七海さん。
「お、お邪魔しましたー」
居間のソファに倒れ込む。脳裏から彼女の裸体が離れない。
あ、あれが俺のお嫁さん。
大人になりたての俺にはまだ早かったかもしれない。
「あら、お風呂随分と早かったのね」
七海さんはリビングの窓を開けてベランダに足を伸ばしてる。
「こっちに来たら? 涼しいわよ」
「そうするかな」
僕は七海さんの隣に座る。
「化粧してないからあまり顔を見ないでくれるとありがたいわ」
タオルで髪を拭きながら口を尖らせる。
「そんな変わらないと思うが」
垂れた髪を掻き上げた時に見えた額の傷に目が行ってしまう。
「七海さんが前髪長くしてるのって、その傷の所為だよな」
「まぁ……そうね。今は化粧で隠してるからそれほど気にしてはないけどね。子供の時は奇異な視線を向けられることもあったわね」
額の傷を摩りながら不器用に微笑む。
「でもこの傷のおかげで責任とってくれた優しい人に出会えたから今は気にならないかな」
「七海さん、愛してるよ」
愛おしい。
唯一無二の感情は初めてだ。
「やっと勇也から好意の言葉を聞けた。全然言わないからちょっと不安だったのよ」
「そうだったっけ?」
「そうよ。プロポーズされてから好きだって言ってるの私だけよ」
「その言葉もしゅきーとかテンションがおかしい感じだけどな」
「うっさいわね。こっちはまだまだ大きく実った初恋が爆発中なのよ。もっとラブラブイチャイチャしないときっとこの症状は治まらないわ。あぁ、それと冷蔵庫に入ってる麦茶いただいたから。勇也の分も用意してあるわ」
「ありがとう。七海さん、いただくとか他人行儀なこと言わなくていいから。この家はもう七海さんの家でもあるんだぜ」
「それもそうね。うーん……疲れたー!」
大きな背伸びをして後ろへ仰向けに倒れ込む七海さん。
同じシャンプーを使っているはずなのになんでこんなに香りがするのだろう。
「今日は本当に色々あったからな。お疲れさん」
七海さんのグラスにこつんと当てて乾杯する。
「まさか結婚するとは思わなかったわ」
「なー」
七海さんを真似て仰向けになる。
「今更だけどなんで私達結婚したのかしら?」
「それを言うか……結婚する運命にあったんだな俺達は」
「そっか。運命なら仕方がないか」
「仕方ないなら抗わないのか? なんか性格的には力業でどうにかできてしまいそうだけど」
「するもんですか。だって、勇也のことずっとずっと好きだもん」
なんだこの胸の高鳴りは。
「俺も好きだ……七海さんっ」
抑えきれない衝動で彼女の手をぎゅっと握る。
「んにゅぅぅぅ~! 優しくぎゅってされるのしゅきー!」
にぎにぎと力を弱めたり強めたりしてくるぅ。
あ、あ、あ、すごくいい。
しばらくお互いの手の感触を楽しむように握り合っていた。




