54話 固有個体
緊急事態宣言に伴いほとんどの授業がオンラインになったのですが、5時間目にある面倒な授業一つだけが対面のままになってしまいました。
正直めんどくさいし、取ったこと後悔してます。
54話
さらに進むと、徐々に嫌な雰囲気を感じるようになってきた。
探知の範囲外なので正確には分からないが、Sランクオーバーの強敵の気配が複数感じられる。
元々、闇魔の森と天輪山はSランクの危険区域に定められていた。
Sランクオーバーの魔物が多くいる今の状態は間違いなく異常だ。
「闇魔の森を抜けるまであと一歩だ。このまま突き進むぞ」
闇魔の森と天輪山の狭間には魔物が現れないと言われている。
どうやら、闇魔の森に漂う「闇」の魔力と、天輪山の「光」の魔力が打ち消しあい、魔力の極めて少ない空間が産まれるかららしい。
「この先は魔物の数も多いし、強いものばかりだ。気を引き締めろ」
グレンの言葉通り、すぐに魔物は現れた。
頭に一本の大きなツノの生えた、黒い肌の大きな魔物。
頭にツノが生えているのはサイクロプスの特徴であるが、サイクロプスにしては大きすぎるし、肌の色も違う。
サイクロプスが闇魔の森の魔力で変質したユニークモンスターなのかもしれない。
「マリベルとフリージアは魔法で攻撃を、エイルはやつの気を引いてくれ!」
「分かったぜ!『威圧覇気』!」
覇気に当てられて敵の意識がエイルさんに向く。
「エクスプロージョン!」
「ブリザードランス!」
その隙にマリベルと合わせて全力の魔法を放つ。
このマリベルの爆発魔法は、「爆炎姫」によって味方に当たらないように調整されたものだ。
威力が下がるのもあるが、調整がめんどくさいのでほとんど使ったことがないらしい。
「影縛り」
魔法が直撃し、魔物の意識がこちらに向くと、今度はエイルさんが影で拘束をする。
ストーンウルドのように完全に抑え込めてはいないが、引きずられながらも俺たちに近づけないようにしていた。
「雷怒ッ!」
その間に距離をとって体勢を立て直し、代わってグレンが全力の一撃を撃ち込む。
「雷霆」と「限界突破」のエネルギーを全て込めたこの一撃は、サイクロプス程度はもちろん、並のAランクの魔物でも仕留めるほどだ。
だが目の前の魔物はほとんどノーガードで受けたにも関わらず、致命傷には至っていない。
もちろんだいぶ弱ってはいるが、まだ油断はできない。
「一斉攻撃だ!このまま押し切れ!」
「エクスプロージョン!」
「ブリザードランス!」
「影一閃」
「雷怒!」
「グガァァァァァァ!!!」
断末魔の呻き声をあげて魔物が倒れ込む。
すると、体中から黒い魔力を溢れ出てきた。
数秒後、魔力の流れがおさまると、そこには何も残っていなかった。
「‥‥なんだか気味が悪いが、とりあえず進もう」
そこから10分ほどで安全地帯に到達した。




