40話 第二王女
銀魂の映画観ました。
王都グレストの中心には、エルフ、人、獣人の友好の象徴である、巨大なグレスト城がある。
その城の長い廊下を走り、奥にある綺麗な扉の部屋に入る。
「姫様、ただいま戻りました」
「コホ、コホッ、ミーナおかえりなさい」
ベッドの上で体を起こした姫様は、エルフ特有の綺麗な緑髪と白い肌にびっしょりと汗をかいている。
姫様と私は幼い頃、獣人ということでいじめられていた私を姫様が助けてくれたことがきっかけで仲良くなった。
そして、数年が経った今は友達兼メイドとして、姫様の近くにいる。
「体調はどうですか?」
「少ししんどかったけど、寝たら大分楽になったわ」
姫様は障魔病という難病を患っている。
命に別状はないけど、エルフの姫様は魔力が高く、その分痛みも激しいみたいで、1日に何度か気を失うこともある。
姫様の病を治すには天輪花というとても貴重な花が必要だけど、今は手に入れるのが難しいみたい。
私は獣人特有の探索能力と、レアスキル『鑑定』を使って、姫様の痛みを軽減させる薬の材料を集める傍ら、天輪花を手に入れるために協力をお願いする相手を探して回っている。
「姫様聞いてください」
「なぁに?」
「昨日ユラシルで怖い人に絡まれた時、私たちと同じくらいの男の子に助けられたんですよ!」
「へぇ、小さいのにすごいわね」
「その人をなんとなく鑑定してみたら、レベルは低いのにステータスは見たことないくらいに高かったんです!」
「そんな人もいるのね」
「はい!あの人はきっとSランク冒険者になりますよ!そうなったら、姫様の病気を治す薬の材料の調達を依頼しましょう!」
つい興奮してはしゃいだ声で話してしまうが、姫様はクスクスと笑うだけで信じていないみたい。
なんだか悔しいけど、自分で言っていても信じられないことだから仕方ないかもしれない。
「姫様ったら信じてませんね」
「ふふっ、そうね。でも、本当にそうなったらいいわね」
姫様もほんの少しだけ期待しているみたい。
強くて、優しくて、眩しいくらいだった姫様がこんなにも苦しむ姿を見るのは私まで苦しくなる。
「そういえば、その人はなんていう名前なの?」
「あれ?言い忘れてました。彼の名前はフリージアさんです」
「フリージアさんね。分かったわ」
ふと時計を見ると、約束の時間まで後少ししかない。
「王様に報告に行くので失礼しますね」
「えぇ、またね」
「‥‥フリージアさん か」
ミーナがいなくなって1人になった部屋で小さな声でつぶやく。
私たちと同じくらいの男の子がSランク相当の実力者なんて言われても到底信じられない。だから全然期待してなんかいない。
だけど、ミーナがあんなに興奮した様子で言ってくるのだから、少しだけ、ほんの少しだけ期待してみてもいいのかもしれない。
「あっ、ぐうぅっ‥‥」
また障魔病の発作が起きた。
薬を飲んだおかげで少しは和らいでいるけど、それでも気を失いそうになるくらいに痛い。
ふと頭にさっき聞いた名前が浮かんでくる。
「フリージアさん、助けて‥‥」
そう気づけば口にしていた。
もしこの激痛から救ってくれるなら、私の全てを捧げてもいい。
わずかな希望を胸に、これからも耐えるしかない。




