31話 ヴァンパイア
読んでくださってありがとうございます
ガンツとゲイルとの戦いが終わり一息ついた時だった。
空間が歪むのを感じて思わず身構えると、そこから黒い角に黒い翼を持った人型の男が現れた。
さっきのガンツとゲイルに似ているが、その強さは比ではないだろう。
ステータスは俺より少し劣るくらい。
おそらく、こいつの正体は——
「ヴァンパイア、か?」
「ほぅ、我の正体に気づいたか」
やはりそうだったか。
これはまずいかもしれない。
ヴァンパイアが相手なら多少のステータスの差など簡単に覆されるだろう。
今は少しでも時間を稼いでグレンがブラッディオーガを倒すのを待つしかない。
「何を企んでるんだ?」
「我らが母を殺した者が建てたこの国を壊すことだ」
母とはおそらくオルレアン等が倒したヴァンパイアのことだろう。
このヴァンパイアの目的がこの国を壊すことなら、ここで逃したら大変なことになるだろう。
「そうか、それなら、俺がお前をここで倒す」
「お前がか?たった1人で何ができる」
返事はせずに魔法を放つ。
ヴァンパイアは火と光と聖属性の魔法が有効だ。
「無駄だ!眷属召喚」
ヴァンパイアの目の前に暗い色の魔法陣が輝く。
これがヴァンパイアの固有能力『眷属化』の能力の一つだ。
そして現れたのは真っ黒なゴブリン、コボルト、ガーゴイルなど、十体以上の魔物だった。
「フリージア!加勢するか?」
「いらない!グレンは先にそいつを倒してくれ!」
数が増えたことに気づいたグレンが手助けを申し出てくれる。それはありがたいが、ブラッディオーガを倒してからの方がいいだろう。
「浄化の波動」
広域浄化魔法、浄化の波動は効果は低いが、この距離なら全ての敵に効果を及ぼせる。
「アルティメットフォース聖•光•炎」
アルティメットフォースとは、複数魔法を纏う強化魔法のことだ。
3属性が最も効率のいいので、ヴァンパイアへの有利属性で固めた。
「うぉおぉおお!!」
ステータス任せな力技で眷属を掃討していく。
だが、ヴァンパイアも攻撃してくるし、数が減ると他の魔物を補充してくる。
はっきり言ってジリ貧だ。
それから1時間以上戦い続けたが、未だに相手への有効打は与えられず、また、こちらも大したダメージは受けていないものの、疲労が目立ち始めた。




