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30話 因縁



 褐色の肌に黒髪黒目、それどころか眼球は本来白いはずの部分まで全て真っ黒だった。

 明らかに異常。


「貴様は絶対に許さない。絶対に殺す」


 ガンツの口調は以前のような粗暴なものではなく、落ち着いたものだった。

 それに、話していて気づいたのだが、この2人にはおそらく記憶がない。

 ただ、俺に対する憎悪だけがこの2人を突き動かしているのだろう。


「そっちから仕掛けてきたんだ。逆恨みもいいとこだぞ」

「黙れ!貴様ごとき、あのお方に賜った力を使えば相手にならない」


 あのお方?


「お前ら、何があったんだ?その姿も、力も、まるで別人じゃないか」

「ふん、私たちはヴァンパイアの眷属となったのだ。お前らのような脆弱な人間とは違うのだよ!」


 2人の魔力がどんどん高まっていく。

 背中には黒い羽、頭には二本の角、歯は鋭く尖り、褐色だった肌が少しずつ黒くなっている。

 そして、理性もなくしているようだ。


「ググゥゥアアアァ!!」

「ヴゥォォォォォオオオ!」


 その咆哮を最後に飛びかかってくる。


「フィジカルブースト!」


 身体強化(フィジカルブースト)をかけるが、スピードとパワーに関しては少し劣る。

 おそらく、この膨大な量の魔力を全て身体強化に使われているのだろう。


「ディバインシールド」


 聖属性のシールドだ。

 この魔法は魔を祓う効果もあるので、ぶつかるだけでこいつらには大ダメージだろう。


「ググゥゥ」


 ガンツには直撃して大ダメージを与えられたが、ゲイルは本能で察知したのか、急に転回して後ろに下がっていった。


「ディバインアロー」


 距離を取れたならこっちのもんだ。

 まずは近くのガンツを、続いてゲイルを狙い撃つ。

 ガンツには直撃して灰となったが、ゲイルには回避された。


 そして、また速度任せ、力任せな攻撃が始まった。

 ディバインシールドはそう頻繁には使えない。

 消費魔力も多い上にクールタイムを必要とするのだ。

 さっきはあまりの速さに驚かされた。グレンのライトニングフォースには遠く及ばないものの、素の状態よりは速かったからだ。

 だが、


「終わりだ」


 そう宣言し、すれ違いざまに攻撃を叩き込む。

 ゲイルだったものもまた、灰となって消えていった。

 確かに、ガンツもゲイルも驚くべきほどのスピードとパワーを有していた。

 だが、それだけだ。

 理性もなく力任せに暴れるだけのやつなど俺の敵ではないのだ。


 そして、ちらりとグレンの方を見る。

 グレンも少しずつ優位に立ち始め、そう遠くないうちに勝敗は決するだろう。

 邪魔者も倒したことだし、グレンがブラッディオーガを倒すまでは休むとしよう。


 そう思っていた。

 だが、本当の戦いはまだ始まってすらいなかったのだ。


次は金曜日の17時更新予定です。

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