11話 昇格試験
10話 昇格試験
エーデルと話したことで、一層やる気が出てきた。
一刻でも早くエリクサーを手に入れたいところだが、焦りは禁物だ。
今の俺にできることを少しずつ積み重ねていく。
まずは目先の昇格試験からだ。
失敗はできない。一月も次の試験が受けられないとなったら俺の予定が大幅に崩れる。
そして1時間ほどかけてゴブリンの巣に着いたので準備を始めることにした。
巣の見張りや覗ける範囲内でのゴブリンの数から、おおよその数を予測する。
結果、大した群れではないと判断した。
群れを作るゴブリンの上位種は多くの種類がある。
弱い順にホブ、リーダー、ジェネラル、キング、ロード だ。
ランクはホブとリーダーがD、ジェネラルがC、キングとロードがB となっている。
群れの規模も大体は順番に大きくなるが、一つだけ例外がある。
ゴブリンロードの率いる群れの規模はゴブリンリーダーと同規模なのだ。
規模は同じとはいえ、危険度は比べ物にならない。
ゴブリンロードの群れは、通常のゴブリンは10%ほどで、80%がゴブリンメイジなどの変異種、残りはホブゴブリンなどの上位種となっている。
ゴブリンロード単独でのランクはBだが、ロードの群れは危険度Aとなっているのはこれが原因だ。
とはいえ、それは少しでも調査すれば分かることだし、ギルドが昇格試験に使ったと言うことはせいぜいがゴブリンジェネラルまでだろう。
そして、今回のはおそらくゴブリンリーダーだと思われる。
突入の前に見張りをなんとかしなければならない。
音を立てると警戒されてしまうので細心の注意を払わなければならない。
なので、見張りが交代したタイミングで空間魔法を使い、入り口を境に空間を隔絶した。これで音を立てても中に聞こえることはない。
デメリットは魔力を大量に使うことなので、しばらくは魔力の回復に努める。このために、見張りの交代直後を狙ったのだ。次の交代までしばらく時間があるだろう。
そして、30分ほどやすみ、魔力もすっかり回復したので突入に入る。
風、闇属性の合成魔法で気配、音、匂いなどを周囲に漏れないようにしてから中にはいる。
ゴブリンはあまり目が良くない。嗅覚と聴覚には優れるので、音と匂いさえ誤魔化せれば近くを通ってもバレにくい。
巣の中に入り、魔力探知を使いあたりを警戒していく。
はじめに違和感を感じたのは、中に入って5分くらい経った時だった。
奥の方にいる魔物は探知から推測してゴブリンリーダーだろう。
しかし、それにしては群れの規模が小さすぎる。
ホブゴブリンの群れと比べてもかなり小規模なくらいだ。
だが、すぐに思い直す。ギルドによる調査の過程である程度の数が間引かれた可能性に思い至ったからだ。
全滅させるのは難しくとも、安全を確保した上である程度減らすだけなら大して危険でもない。
そうして奥の部屋に入るとゴブリンリーダーと対峙する。
俺が現れてすぐに驚いた表情をすると、大声で叫び出した。
何かするつもりかもしれないので間合いを開けたまま風の刃で切り裂く。
あっという間にゴブリンリーダーは絶滅した。
「これで群れの統率はできない。あとは倒すだけだ」
そう思い、魔力探知を広げてみる。
「ッ!なんだ!?」
魔力探知には、ゴブリンリーダー以上の強さを持つ魔物が二体と、それを更に大きく上回る魔物が一体こちらに近づいてきている様子が映っていた。
それから数秒後、ゴブリンキングが二体と、見たこともない真っ黒で巨大なゴブリン一体が現れた。
その真っ黒なゴブリンから発せられる魔力は俺に勝るとも劣らない、加えて3メートルを超える身長に筋骨隆々とした体格をしている。
「ガアアアアアアアアアア!!!」
黒いゴブリンの咆哮で地面が揺れる。
気がつくと、咆哮を正面から受けた俺の体は小刻みに震えていた。
自分以上の強さの魔物一体と、ゴブリンキングが二体。
「絶体絶命」
頭の中にそんな言葉が浮かんできた。
ギルドの設定について補足を。
Cランクまでは昇格試験を受けなければランクが上がらない。
Bランク以上は信用がないとならない代わりに、昇格試験などはなく、実績などで決まる。
ただし、Sランク以上は昇格試験がある。




