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エルフの体はとっても便利です  作者: 南 六三
エルフの体は旅をする
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ミムナとリハビリ



 昨日まで降り続いていた雨もおさまり今朝は久しぶりの青空が顔を覗かせていた。

この地に来てから241回目の雨季の終わりになった様だ。

もちろん俺は「再生睡眠」で大半を過ごしていたので、実感の時間経過は樹海での生活からキャロルちゃんまでが21日、新たに目覚めてから7日なので合計で28日目の感覚。

肉体のリハビリを終えたので、環境変化への順応リハビリが今日から始まる。

身体はキャロルちゃんと腕たせ伏せしたり腹筋したり、ランニングしたり模擬戦したりとキャロルちゃんと二人っきりで6日間の強化合宿。

 あの時の戦闘では敗北したがキャロルちゃんに思うところは無い、彼女は命令に従順に従っただけなのだから。

彼女は厳密には生物ではなかったし、実際とても優しいいい子だった。

全てラーラスが悪かったのだから。

彼らの規約違反してまでナームに追試を強要したのだ、そのおかげで「再生睡眠」を受ける羽目になったのだから。

 ミムナ団長が言うには

「スケジュールに若干の遅れは出たが、ナームは元々「再生睡眠」の計画が入っていたので問題は少ない」

との事だった。詳細はLv4、だそうだ。

今日は樹海まで送ってくれると言うので、玄関で待っていた。

玄関といっても山腹にある大きな洞窟の入り口だ。

山の内部は、山上光男人生で知る科学文明を遥かに凌駕する代物で、Lv3で入室を許可された部屋の散策全てを訪れる事はできない広大さ。

元々、巨人用の居住空間なのだから、今の俺のサイズの人間なら1万人は居住できそうな程だ。

”雲落ちの巨人”名の由来を聞くと

「最初のエルフ達が私たちの故郷はどこか?と聞くので、その時の火星を指差したのだが空には雲しかなくてな、Lv3の彼らには詳細は言えんからそのまま似てておったら”雲の上から落ちて来た巨人”で定着したのだろう。それと聞かれる前に言っておくが、私の元の体はラーラスと同じ、いやあんなのより立派な身体だ。 任務でこの姿なのだぞ。 決してお前の様な魔法少女趣味では無いぞ!」

だった。

もちろん俺の趣味も全否定しておいたが・・・。

空飛び、火球飛ばし、氷の矢を放つライト・○バー使いの美少女の総称がなんと言われていたかを思い出すと、否定できない自分が悲しい。


「ナーム早いな!」

「おはようございますミムナ団長、エルフのみんなの所へ行けるのが嬉しくて早起きしてしまいました」

「そんなものか?」

「250年ぶりに逢えるんですよ?」

「私やエルフ達とお前達小人族の時間感覚には差があるだろうからな・・・、私にはわからん」

「ミムナ団長は実際何歳になるんですか?」

「女性に歳を聞くのは失礼では無いか?」

「団長!女性だったのですか?」

「見るからに女性だろ?」

「いや、あのぉ・・・、魂の話ですが・・・」

「あぁー、そうだな・・・、私たちの種族は男女は区別要素には入っていないのでな」

「ちょっと意味わかりません」

「その先はLv4プラスだ、おっと鳥ちゃんが来たぞ、この先は団長禁止な! 立場はお前と変わらぬエルフで村長の娘で姫だからな」


雨上がりで雲の残る青空に鳥の姿が見えた。

火星人?なのだからUFOでも飛ばしてくれるのかと期待したが残念、鳥ちゃんか・・・?


「「鳳」じゃ無いですか?」

「そうだ鳥ちゃんだ」

「猛禽ですよ?肉食ですよ?」

「キャロルちゃんの友達だよ、心配いらん」

「・・・・」


もしかして名前の後ろに”ちゃん”が付くのには意味があるのか? 生態機械的な?

私たち二人のかなり手前で地面に降り立った「鳳」はよっこらよっこら歩いて来た。

近くで見るとかなりデカい。

小型のプライベートジェット機並か?片手を上げて手招きするミムナに小走りで近づいて来た、ちょっと可愛い。


「鳥ちゃん、エルフ村まで頼むよ」


タクシーの運転手に伝える感じで気軽に話しかけて、自動ドアでは無いが広げ下ろされた翼のタラアップをスタスタと上っていく、凶悪感溢れるクチバシと、鋭い眼光と瞬膜の瞬き腰が引けてしまう。


「ナーム早くしなさい!」

「はい、ハイ・・・、よろしくお願いします・・・」


小さな声になったが鳥ちゃんに一言お願いして搭乗タラップを早足で駆け上がった。


「よし行け! 鳥ちゃん!」


一瞬沈み込んだ姿勢から軽くジャンプしたかな?と思われたが直ぐに高空へと達していた。

洞窟入り口自体が山腹なのだから平地との標高差は数千メートルは有るのだ。

点在する雲を縫う様に鳥ちゃんは飛ぶ。

不安だった風は髪をなびかせる程度で息ができないくらいでは無い。

ゆっくり地上を観察する事ができた。


「結構快適ですねミムナさん」

「鳥ちゃんは優しいから、私達に不快な飛び方はせんよ」

「火星の技術とかでは無いんですか?」

「そう・・・、私達の技術なのかもしれない。 お前が知る社会とはちと構造が違うからな」

「社会の違いですか?」

「お前の大切な物とは、何だ?」

「・・・お金とか?ですかね、沢山あったら何でも手に入るし家族の生活も安定しますし・・・、ドキアの樹海では流通してませんが」

「私達の国でもお金と言われる物は使われていないよ、今のドキアと変わらない」


お金がない社会? 昔の日本は当然ながら物々交換で欲しい品物を手に入れていた。

貝殻・石・布・米など物品貨幣がその後使われ、金・銀・銅を使った貨幣と物品と交換してきた。

すべての人が一次産業であればそれも成り立つだろうが、二次産業ともなれば貨幣がなければ難しくなる。

なぜならば、大根を作っている人が家を建てたなら、その価値に見合った大根を納めなけれがならない、膨大な量を納める方も受け取る方も効率は良く無いだろう。

まして、三次産業は貨幣が流通していなければ不可能に思える。


「お金がなくても社会は成り立つのですか?」


そう言えばオンアもそんなこと言ってたな?と思い出した。


「当然だ、生きていくのには貨幣流通は必要ないし、有ったほうが無駄だ。そんな物を管理する存在を作るよりも、もっと別の方に大事な人材を使った方が良い」

「では、火星で大事にされるものとは何ですか?」

「称賛だよ」

「褒められる事ですか・・・?」

「少し違うな・・・・、喜ばれることかな?」

「ごめんなさい、少し俺では理解が出来ないみたいです・・・」

「別に構わん・・・」


「・・・鳥ちゃんは背中に乗ってる私達が、喜んでくれる飛び方をしてくれていると?」


その後ミムナは何も語らず優雅に飛ぶ鳥ちゃんの首筋を優しく撫でていた。


 鳥ちゃんは高度を落とし樹海の海原を滑る様に飛んでいく。

正面に小山の様に盛り上がった森が見えて来た。

エルフの森だ。

滞在期間は短かったがとても懐かしい。

隣接している星見のピラミッドの屋上へゆるらかに旋回しながら優しく着地してくれた。

俺たちを降ろした鳥ちゃんは直ぐに飛び立ち木々に遮られ姿は見えなくなった。

勿論お礼に首筋を撫で見えなくなるまで手を振っていた、最初は怖かったが優しい良い子だった。

勝手知ったる我が家如く西側の階段を下り、幾つもの吊り橋を渡り中央の広場へ向かった。

正午にはまだ早いが、あちらこちらの吊り橋を渡るエルフの姿は見つけた。

まずはオンアに挨拶してシャナウに会わなければ。

流行る心で小走りになっているが、ミムナはきちんと直ぐ後ろにいる。

広場に到着すると数人のエルフがたむろしていたので駆け寄る。


「ただいまー!」

「ナーム?!」


両手を広げて迎えてくれたのはボキアだ。

とりあえず胸へ飛び込んでハグしてもらった。


「あれ?」

「あれ?!」


二人が一緒に変な声を出す。


「おっきい!」

「ちっこい?」


元々ナームはエルフの中では身長が一番低かったが、ボキアの肩ぐらいの高さっだった。

なのに今は、おへそのあたりだ。


「本当にナームなの? 何でナーム縮んだの? 変なキノコでも食べたの?」

「あのー、そのー、私も訳わかんない・・・、長く寝過ぎたのかな・・・?」

「ゴブリンさん達と同じくらいに縮んじゃったみたいじゃない?」


近くにいたベイロともう一人の男のエルフは目が見開かれ眼球が溢れそうだ、イケメンが台無しだ。


後ろにいる俺よりちっこいミムナを見つけて3名が片膝をついた。

先頭のベイロが頭を下げたまま口にする


「ミムナ様でしょか?」

「そうです、私がミムナです」

「お初にお目にかかります。 長老が一人ベイロでございます」

「長老のペテイです」

「巫女のボキアです」

「オンアより、本日は”雲落ちの巨人”の所から、エルフ族の姫が来られると伺っておりました。出迎えは不要と伺っておりましたが、私どもに要望が御座いましたら何なりと申し付けください」

「見ての通りエルフ族の姫とは言え、小人サイズの小娘なのだ、何も畏る事は無い、気楽に気安く接してくれた方が私は助かる」

「では、お言葉に甘えさせて頂き、そう致します」


同じ姿勢のまま一礼し3名は立ち上がる。


「ではオンアを呼んでまいります」

「呼ばずとも構わん、こちらで出向くので心配はいらん、ナームよ案内頼む」

「え? 私がですか?」


3名が一斉に俺の顔を睨む。怖い。


「こちらです、ミムナ・・・様」

「ミムナで良い! 皆にも伝えておいてください。上下など無い同じエルフの民なのだと」


軽く会釈する三人の前を横切りオンアの部屋へと向かった。

元々ミムナはナームだったので、それこそ1500年はここに住んでいたはずだ。俺に案内させる必要は無いだろうが、建前か体裁が有るのだろう。

今後何かと察する必要がありそうだ。

忖度も必要か?

と考えていたらオンアの部屋の前だ。


「こちらがオンア長老の部屋です。 オンア長老、ナームです、ミムナ姫を連れて来ました」

「おぉ!帰って来たか!」


布の扉をめくりオンアが顔を出した。

240年前と全く変わらぬ病床から抜け出して来た老婆の姿で。

俺とミムナの背の高さに驚いたのか目を見開いたが、何かを納得した様子で部屋へ招く仕草を示す。

俺は一歩足を引きその場を退こうとしたがミムナに横腹を突かれた、話には俺もいた方がいいらしい。





次は、ナームのコレから

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