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エルフの体はとっても便利です  作者: 南 六三
エルフの体は空を飛ぶ
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追試



 巨大な鐘の音が収まった頃、俺はキャロルちゃんとの距離を大幅に広げ立っていた。 

薄暗いが戦闘するには広さは十分。 

高さは20mはあり飛行には適さないが回避では使えるはず。 

腰紐を解きモガ服の中に結び直す。 

水晶はモガ服の中にあるポケットに数種類ある。 

水晶の種類別にすぐさま取り出せる加工しておいて正解だった。 

まさか、ゲームの世界の様な戦闘をする羽目になるとは思っていなかった。

しかし、サバイバル用の準備をこんな事で使うとは・・・。


「ちっ!」


軽く舌打ちをした後、まずは相手の能力を確認する為両の手に「風」を握る。 

俺の4倍はあろう体格差では一撃を貰えばそれだけで俺の負けだろう。 

あの鋼の様な筋肉もそうだ。 

重さだけではなくスピードもあるに違いない。 

集中力を高める。 

これで周囲の時間経過を遅く感じられる。 

樹海で何度も使った緊急回避術だ。 

相手の力量を確かめるためのフェイントを仕掛ける! 

地を這う様な高さで疾風ごとく近づく。 

相手の間合いの一歩手前で停止し真横へ移動。 

キャロルちゃんの右腕が風を切った。

数本の髪と耳の先端数ミリを持っていかれてしまった。 

俺の思っていた間合いより少し広そうだ。 

少し左耳が痺れて出血を感じるが、痛みは感じない。持ち替えた「火炎」でキャロルちゃんの突き出された左足の拗ねを狙う。

心の中で(ファイアーボール)と叫んでみた。 

地面につく瞬間の避けられようが無い絶妙なタイミングだ。 

直撃した。 

間合いを十分取ったところで相手を見ると何事もない様に立っている。 

傷も火傷も無い。 

よく見ると鱗は若干濡れている様に見える、火には耐性が有りそうだ。 

では次! 

中腰で先ほどと同じ疾風で近づき間合い二つ手前で上を取る。 

「水」と「風」両方を握った右手から氷の矢が3本出現しキャロルちゃんの後頭部に向かって飛んでいく。 

俺の脳内では魔法少女が(アイスアロー)と叫んでいた。 

死角からの飛び道具だ。 

2本は鱗に弾かれ一本は鱗の隙間に突き刺さっていた。 

が浅い! 

何とか刺さった氷の矢を抜こうと手を伸ばしているが届かない。 

キャロルちゃんは必死にもがいている。 

離れた場所でシャナウのはしゃぐ声とモフの咆哮がするが、今は気を取られている場合では無い。

ナームに返すはずの体に傷を付けてしまったのだ。

それをしてくれたキャロルちゃんを許せるはずが無い! 

それを命令しているラーラスも! 

時計はまだ1/4を過ぎた所。 

お互い出血箇所は1箇所づつで軽傷。 

腕力では叶わないが速さでは少し俺が上を行ってそうだ。 

手持ちの水晶を使って接近戦を避けて遠距離からの波状攻撃で・・・。

右手に「光」、左手に「水」・「風」を準備。 

大きく体を揺さぶって氷の矢を振るい落としたキャロルちゃんの目は血走っていた。 

相手に傷を負わせるのが使命のキャロルちゃんだが、自分が傷を負わされるのは嫌いらしい。 誰でもそうだよな・・・。 

感傷に浸っている暇はないので収束レーザーを胸に向けてお見舞いする。

心の中で(ライトアロー)と呟く。 

声に出さないのは勿論、羞恥心からだ・・・。 

肉が焼ける音と一緒に血飛沫が上がる。 

これは効きそうだ。 

そう思った、瞬間よろけたキャロルちゃんが海老反りになり咆哮を発した。 

音量は低いが空気の振動が凄まじかった。 

こっちを見て勝ち誇ったトカゲ顔? 


「姉様上!」


シャナウの叫びを聞き上に目をやる。 

第2のフラグ回収だ。 失念していた。 

あのトカゲの咆哮は音を操れる様だ。 

俺の上だけ囲む様に先端の尖った鍾乳石が降ってくる。 

とっさに左手を上に向け(アイスアロー)を闇雲に打ち出す。 

水晶が空になる勢いで放たれた矢は、俺への直撃コースで落ちてくる鍾乳石の軌道を逸らしてくれた。 

辺りは砕けた鍾乳石の埃が舞い上がり視界を奪い、床に刺さった乱立する鍾乳石が壁になりキャロルちゃんを見失ってしまった。 

ヤバイ! 

時間は残り半分を切ってたはずだ。 

水晶を持ちかえながら辺りの気配を伺うが何も感じない。まじでヤバい! 

右手に「光」「風」「水」を握り、左手に「風」を2個握ってから深呼吸を一つする。

今まで一度も試したことがないが、魂の水晶は結構俺の想像通りに効果を発揮してくれている。 

ここは俺を信じて右手の中で握られた水晶に念じる。

(光剣)

細かい水が風の力で棒状の霧が現れ収束した光がそれを纏う。

(ライト・○バー)の完成だ。 

大振りしながら埃で視界の悪い中鍾乳石を切り裂いていく。 

少し進んでから真上へと飛翔し埃の少ない10mくらいの所で滞空した。 

案の定、キャロルちゃんは俺が壊し始めた鍾乳石の先から現れると踏んで位置取りをしていた。 

内心勝利を確信し、音を出さず天井の鍾乳石に近づく。 

さっきの仕返しだ! 

右手の光剣で鍾乳石を根本から断ち切り、左手の「風」でキャロルちゃんに向けて速度を増加させてお見舞いしてやった。 

悲鳴も方向も何も聞こえなかったがこれで終わりだろう。

多分経過時間は3/4位だろうと思いながらゆっくりと床の上へと降り立つ。


「追試はこれで終わりだろ? 不合格でいいからもう返してくれ! あんたにゃ付き合っていられない!」


どこかで聞いているだろうラーラスに向けて言い放った。 

階段の上の時計の針は間も無く真上を指しそうだ。 

残り1分もない。 

小石の崩れる音がした。

振り返ると、キャロルちゃんが貫かれ押しつぶされた鍾乳石の小山が爆散した。

中から血塗れのトカゲだった物が現れた。 

それは巨大な水晶が肉片を纏っている様に見えた。 

水晶の中に淡いオレンジ色の炎が灯った、と思った瞬間、俺の視界は闇へと変わり意識が暗闇へと落ちていった。


目覚めの後の驚愕

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