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エルフの体はとっても便利です  作者: 南 六三
エルフの魂は仲間に甘い
120/156

遺跡の入り口


 何本もの石柱が立ち並ぶこの一画は高空映像からは確認できなかった。

三つ並んだピラミッドをオリオン座のベルトに例えると、ちょうどM42(オリオン座大星雲)がある場所になる。

さっきまで居た人面岩がリゲルの位置にあたるので禍々しいピラミッドには近い場所だ。

ポロアの顔色に変化は見られなかったが体調が心配だったので、狼妖怪化したシロンの背に乗ったままをお願いして、シロンには体調管理を厳しく指示した。

一人でここ一帯をくまなく散策して分かった事だが、上空のある方角から見なければ見つけられない道があった。

地上を歩く者は気が付かないであろうが、高さも太さも違う石柱の上に乗った大きさの異なる平らな石のブロックが空中に一本の道に見える場所を私は発見したのだ。

ミムナ曰く「空を飛べるまでの知恵を得た者に訪れる資格を与える道」との事だ。

つまり、技術が進化し空を飛べるまでになったかを試し、資格を得た生物に自らブービートラップを作動させ宇宙へ出る前に総攻撃で潰しにくる。

なんともへそ曲がりな思考回路。

生命の多様性を許容せずに武力を持って銀河を独占することに何の意味があるのだろう。

突如ミムナに捕獲指示された黄色のビルダーは、この遺跡群建造を目的に宙族が連れて来た生物で、火星においては文献で存在があったと記されるのみなので是が非でも手に入れたいらしい。

現存種捕獲調査は宙族の技術解明と真意を探るために必要な事だと話していた。

あの猿の体にラクダに似た頭を持つ巨人達を調べればその辺が理解できるのだろうか。

でも、私に捕獲しろとかいきなり言われてもそんなの無理。

身長はラーラス程もあり今の私の10倍はあるし、言葉も通じなければ巨大な石まで投げてくる。

1匹を拘束する事は出来なくもないと思ったが、こっからドキアまでどうやって運ぶとゆうのか!

周囲にいたビルダーの個体数を確認しただけで勘弁してほしい。

それに水晶玉だったジローはいきなり引き籠りオヤジの姿で目の前に現れるし、落ち込みが半端ない。

まぁ、その事は極々個人的な内容なのでトラップ解除を優先すべき今は考えるのをやめておこう。

後でシロンをとっちめてやる事で胃の腑に落とす。


「よしこの辺ね、二人ともこの場所からあの道の先に向かって降りて行くけど、なんか気付いたら私に教えてね」


前方に直線となった石畳を指差して話しかけると二人とも承諾の意を返して来た。

高さは30m目標地点は200m先、15%の降り勾配で進んむ。

空からの来訪者にしかわからない仕掛けがあるかもしれないので周囲を入念に観察しながらゆっくり進んだ。


「ナーム様下の石に何か模様が書いてあります」


ポロアが指差す石畳の上に確かに何かしらの模様が確認できる。


「見つけてくれてありがとうポロア。 ジロー直ぐに記録して調べて!」

「了解〜、な〜む〜」

「緑オヤジ、文句でもあるの?」

「な・い・で・す」

「なら子供の前でふて腐った感情表に出すのはやめて、恥ずかしいったらありゃしない!」

「はい・・・、なんか娘に叱られてる様で胃がいたい」

「またなんか言ったのかしら?」

「照合一致データ有りましたので読み上げます。 『叡智求め空歩む者よ、この道の先遥か高き空へ通ず』 と有ります」

「ありがと、見立ては間違っていなかったようね」


徐々に高度は下がり道の終点まで来て石畳に降り立つと小さな池が目に入った。

周囲には幾つも似た様な池が有るので今通って来た道はこの池を特定する為のものなのであろう。


「この石にも文字がありました。 『偽り無き己を種の門の前にてあかせ』 とあります」


ジローが足元の絵文字を読んで教えてくれる。


「種の門の前?」


辺りを見渡すが鳥居や扉らしきものは無い。

下に降りて石柱を調べてみるが文字らしきものが彫られた物もなし。

私の身長くらいの石柱が数本立ち並ぶ場所が数カ所と座った姿のラクダの石像がある他は無秩序に思える石柱と林の木々だけ。


「ふむ、どうしたものでしょうかね・・・」


池の周りを一周して門の手がかりを見つけようとしても目を惹きつけるものは無い。

時刻は昼なのか足元を見ると自分の影はかなり短かった。

シロンも地面に鼻を近づけて匂いを嗅ぎながら手がかりになりそうな物を探してくれている。

空の道標が載った石柱に背を持たれて池を眺めると、尖った影が目に入った。

最後の石のブロックが尖っているのだなと思って何となく見ていると、池の淵に立った2本の柱を影が指し示している感じがした。

首を左に向けると4本の柱、右には3本の柱、そして中央に2本。

影の先端は太陽が登って3・2・4を示す。

これってもしかしてあれかな? スフィンクスのなぞなぞかな?


「シロンちょっとこっち来て頂戴」

・なんか見つけたのか姉ちゃん

「私が知るこの地方のなぞなぞでね、朝は4本足、昼は2本足、夕は3本足この生き物はなぁ〜んだ? ってのがあるんだけど」

「あのぉ〜、ナーム様」

「どうしたのポロア?」

「僕、ちょっと、神狼様から降りても、いいですか?」

「構わないけど、体調は大丈夫? 具合悪くなってない?」

「大丈夫ですけど、オ、オシッコしたくて・・・」


お尻をモゾモゾとシロンの背中で動かし恥ずかしそうに話す。


「あら、大変。 お漏らしする前にその辺で済ませなさい。遠くへ行かなくていいから」


返事をすると腰を下ろして座ったシロンの背中を滑り降りてテケテケ池の方へ駆けて行くと恥ずかしいのか2本の石柱の裏へ姿を消した。


・なぞなぞ? 何それ?

「説明するとなると難しいわね・・・。 私がいつも食べてるものって何?」

・どんぐり

「そう、でもこんな感じで聞くのがなぞなぞなの。 帽子をかぶって風で揺られる、リスさんが大好きなのって、なぁ〜んだ」

・どんぐり

「どこの幼稚園児だよ、例えのセンス悪くない?」

「ジローなんか文句でもあんの? 遠くの山にでも行きたくなったのかしら?」

「どーぞ、お話を続けてください」

・それで? さっきのなぞなぞの答えは?

「答えの生き物は人間!」

・何で人間なの? 人間の足は2本しか無いだろ?

「そだねぇ〜! これはね朝から夕を生き物の一生に例えててね、生まれた時に赤ちゃんはハイハイで両手両足使って歩くから4本足で、成長して2本足で歩いて、歳をとって杖を一本ついて歩くと3本足ってのが答えの理由なの」

・嘘の質問で相手が悩んでるのを楽しむ言葉遊びなのか、何だか感じ悪い

「なんか身も蓋もない言い方ね・・・。 間違ってないけど」

・それで、そのなぞなぞでここの門がわかったの姉ちゃん?


そこで詰まってるのだ、4・2・3の答えは人間としてそれを誰にどんな手段で伝えれば良いのかが思い浮かばない。

もう一度飛んで上空からじっくり観察した方が良いのだろうか。


「ナーム様大変!」

・どうしたポロア!


眼前のシロンの姿が消失しポロアの声の方を向くと首根っこをシロンに咥えられ池の上に浮かぶ姿が目に映った。


「大丈夫、ポロア? 何があったの?」

「池のお水が無くなってく」


さっきまで縁いっぱいに水を湛えていた水面は見当たらず、音もなく渦を巻き吸い込まれていくのが見えた。

急いで淵まで近づき下を覗くと水位は下がり続けて暗闇に飲まれていった。

答えの提示もしてないのに何で変化があったのだろう。

呆気にとられながらも原因を考えているとシロンが隣に降り立ちポロアを解放してやる。

まずはポロアが無事でよかった、声をかけられた時は心臓が飛び上がる程動揺してしまったから。


「ナーム様、ごめんなさい。僕また変な事しちゃいました・・・」

「何いつも私に謝ってるの? ポロアは何も悪い事して無いでしょ? ほら見て私怒った顔して無いでしょ」


作り笑顔で私を見ているが右手を上げて指差した方には二本の金色の石柱が立っていた。


・ほっほ〜! 血液かと思っていたがオシッコか。 これはポロア君を連れて来て大正解じゃったなナーム


ミムナからの通信が耳に届くが意味が分からない。


・ナームの着眼点は悪くはなかったぞ、『種の門』はあの柱であろう。4足動物・2足動物・3足動物がそれぞれ持つ生物情報を検知して知恵の有無を判断するものなのであろう。 私は血液でもかければ反応するかと思っていたが、ポロア君は面白いな

「はぁ、そうですか。 私がやっと気付いたスフィンクスのなぞなぞは意味が無かったですか・・・。 それじゃ、ここは門の入り口で間違いない、で、よろしいでしょうかミムナ?」

・わからん!

「そんな無責任な!」

・火星の遺跡とはチト パターンが違っているのだ。 ブービートラップ解除にトラップは付き物、精々奴らとの知恵比べに負けない様に精進する事だな。 私は黄色ビルダーちゃんを連れて来てくれれば解析して傾向と対策を助言してやっても良いのだがお前はカンニングしたいのか?

「正解を教えてくれない傾向と対策じゃ、私には東大は受かりませんよ。 回答丸暗記に自信が無いですから!」

・それでは、私はテパばーちゃんのクッキーでも食べながら検討だけを祈ろう

「あのぉ、出来れば成功の方を祈って欲しいのですが・・・」


遠巻きに私の会話を聞いていた二人に向かってにっこり笑って「行ってみよー!」と声をかけたが、帰って来た視線は義心に満ちていたのは気づかないふりをしておいてあげた。

次は、遺跡の地下1

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