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エルフの体はとっても便利です  作者: 南 六三
エルフの魂は仲間に甘い
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遺跡1



「ジンジロ毛玉定時連絡の時間だ」


仮想の脳内に響く少女の声。


・ミムナ、定時とは決まった時間の事ですが。 いつも時間が違いませんか? 昼だったり夜だったりしてませんか? 今はこちらは深夜なのですが?

「何を言ってるジンジロ毛玉! 私が1日の作業で暇になった時間が定時連絡の時間なのだ」


毎日では無いがミムナから状況確認の連絡が入る。 

常に水晶を通して監視もできる様だが、火星と地球が銀星勢力に攻勢をかけられているのだ、どちらにも対応している王女様は忙しい。


・後それと、毎回ジンジロ毛玉呼ばわりは少し凹むのですが?

「私はお前を案じて、あえてそう呼んでやってるのだぞ! 肉体よりも儚い水晶の中に引き篭もった意識、いつ壊れて無に期すかお前に心して欲しくてな」


ミムナの言う事は理解している。

今の俺は山上の時代に意識高い系の人間が使っていた”尻”とか”あれ草”みたいなアプリみたいな物で、会話が出来て、データベースに接続出来て、メールを読んだり、音楽を聞かせるのがお仕事。

睡眠も取らずにナームの耳元で常に待機する水晶玉。

なんで俺が? と何度も自問したが状況が変わるわけでも無し、ナームに大事に扱って貰うぐらいしか自分の生存?目的を見つけられなかった。

まぁ、可愛いエルフの少女の耳元で女性達の沐浴や生着替えを観察できるのだ、これはこれで何とも楽しい役割。

体が存在しないお陰でナームの頃は中性っぽかった性格が元の男性に大きく傾いて懐かしい感覚が心に湧きスケベェなのはそれはそれで楽しい。


・ナームの機嫌を損ねないで大切に扱ってもらえる様に頑張ります。 でも、ジンだけで読んでもらってもいいんですよミムナ? 

「イヤだ。 私の研究ノートのタグは『ジンジロ毛玉の大冒険!』になってるからな。 私も意識付けをしておかねば話している相手を普通の魂と誤認しかねない」

・はぁ、そうですか・・・。 では、近況報告をさせて頂きます


ミムナはなんだかんだ言っているが俺にはよくしてくれていると思う。

通信で使える衛星システムやドキアにあるデータベースに情報レベル5でアクセス権を付与してくれ専用のフォルダーまで設けてくれた。

ナームの頃よりも視野は広がり地球全体を俯瞰する物の見方が出来ている。

的確な情報を瞬時にナームに答えるには役に立たせてもらっている


「ジン明日の天気は?」

・晴れで最高気温は27度、最低気温は11度


と即答出来るくらいにはなっているのだ。

音楽も記憶の中の物を再構築してフォルダーにせっせと溜め込んでいる。

ナツメロとアニソンのカラオケバージョンは結構増えた。

流石にヴォーカルは作れていないので暇な時の課題にして手段を模索中だ、そのうち完成させてナームに喜んでもらおうと思っている。

少女の笑顔は見ていてとっても和むのだ。

数日前にシロンが言ってた「機嫌が悪そうなナームの側は居心地が悪い」には俺も同感した。

どちらかと言えばナームはいつも楽しそうな笑顔をしている。

俺にもあるナームの体に入っていた時の記憶でも、見る物は常に新しく感じて毎日がウキウキだった。

そして会う人、会う動物が笑顔で接していると笑顔を返してくれるのが嬉しかった。

おっさんだった俺が鏡に向かって笑みを浮かべても気持ち悪いだけだったが、女性の笑顔はその場の空気を明るく照らす力があるのだ。

人では為せない強大な力を有するエルフのナームが機嫌が悪いなど、閻魔大王の前に立たされた審判を待つ罪人の心境にも等しい。

俺が粉砕されない為にもナームにはいつも笑っていられる状況を作ってやらねばなるまい。

 



 最近ミムナに報告した内容をまとめるとこんな感じだ。

アトラの街を出発して訪れた一つ目の町で最低限の旅の品々を揃えたナーム達は、昼の移動を早々諦めた。

赤道直下の乾燥している大地では人間も動物も体力の消耗が激しくて移動距離が伸びなかった。

そしてその後にも訪れた町で奴隷達が人間扱いされないお陰でゆっくり休めず体力の回復が出来なかった。

結果として一行は夜の移動を基本とし昼は道を外れた見晴らしの良い場所でキャンプする事となった。

食材は通りかかった町で入手しているので問題ないし、水と火はナームの水晶があるので荷物は少なくて済む。

夜の移動も上空を飛ぶナームが一行の足元を広範囲で照らしてくれて問題はない。

野盗や野生動物達の襲撃も獣妖怪達が一蹴してくれて損害は皆無。

とうせんぼのリンの活躍が目立っていてポロアとの仲もとっても良くなっていた。

なんと言っても女の子がいきなり煙に包まれ大蛇に変わるのだ、その場を逃げない人間は失神した奴だけ。

リンがナームから変身煙の玉をもらって面白がって使っているせいもある。

温泉で手に入れた硫黄と木炭を粉にし混ぜて小さな煙が出る火薬をナームが作ったのだ。

変身時、陽炎に包まれるよりも白い煙から現れる方が人間は驚嘆していて俺も笑えた。

忍者が変化する時代劇がこの時代のアフリカに出現してしまったのを後世に残されてしまったらどうしようとも思ったがナームは意に介していなかった。

それよりも俺にとっては残念な事だが集団の女性達がゴブリナになってしまった。

ボロ切れにヨモの葉を縫い付け全身を緑の汁で肌を染めてしまったのだ。

男達は立ち寄った町でそれなりに使えそうな武器や防具を身につけ戦闘訓練をさせていたので、急な獣との攻防に遭遇しても対処できるまでにはなったが女性はそうはいかなかった。

水辺で食事の支度をしてもらっていた時に対岸からライオンの集団が襲って来た時は危うく死人が出る所まで接近されていたが、ナームが寸前で気付き光の矢をお見舞いしてライオンの皆さんにはお引き取り願った。

戦いになる前に姿を認識させない方法をシロンが提案してゴブリナに成って貰ったって訳だ。

ヨモの葉は虫も男達の視線も寄せ付けないので明るい会話が時折聞こえるほどには好評の様だ。

ナームも蠢くヨモの葉集団が懐かしいのか見つめる視線が優しい。

ただ一つ、ナームはテラミスの扱い方が特別で何かとヨウと仲良くして貰いたいらしくお節介を焼いている。

人間姿のヨウは細面のイケメンでテラミスと並んで立っているとお似合いの二人なのだが「距離感が遠い!」とかぶつくさ呟いて狐の毛繕いをテラミスにお願いして手伝わせたり、移動中も食事中も側を離さない様に気を使っていたりする。

俺にはなんでそんな事をしているか分からないが、女性陣と沐浴中にしている恋話に影響されているのかもしれない。

ある時俺が向ける女性の裸体を見る視線に気付き沐浴中はシロンに預けられる立場になってしまった。

ナームの心境の変化を常に感じれなくなってしまって、沐浴も見れなくなってしまって残念で仕方がない。

他人の恋話は犬にでも喰わせてやれば良いのに、旅が順調で暇なのが悪いのかもしれない。

美人さんを側にあてがわれてもヨウは至って変化はない。

ナームがそれとなく聞き出した話ではヨウは人間で生まれた経験はなく人間の姿もセトのエルフの男を遠目で見て真似た姿らしい。

イケメンな理由は分かったが人間の女性に対しては興味は湧かないと言うか、雌全般に興味は無いそうだ。

父親にも母親にもなった事は経験がなく、転生時はいつも強さを求める鍛錬と修行で終わってしまってるらしい。

シロンからは人間の転生も含めて親の経験を積む事を勧められている様だが返事は濁しているそうだ。

もう少し上の強さを手に入れてからが逃げ口上らしい。

 雑談混じりで詳細を報告するとミムナは火星の状況とこれからの地球に訪れる微細隕石の話を教えてくれた。

火星を砕く流星群は排除と誘導が順調に進行しているが依然地上の損害は甚大で緑の育たない赤い大地になるのは逃れられない。

銀星の地表を覆っていた地殻は広範囲に四散した為隕石となって地球にも降り注ぎ続ける。

大気圏で粉砕され微粒子になって降り注ぎ地球質量増加の要因になるだろうとの事だった。

最初にこの時代に来て重力の軽さを感じたが銀星の連中の仕業で俺の知る時代の重力にチリが降り積もる事でも近付いている。

最終的にはニビが地球衛星軌道へ投入される時の大量の水が原因だが、太陽の活動も増加しているのが気になるそうだ。

詳しくは俺には理解できなかったが太陽から放出されるのは光や熱だけではなく放射線や磁気嵐の他にも光速で飛ぶ粒子があるらしくそれが地球を重くするとかなんとか?

興味は湧く話だったが今は旅を無事終わらせなければならない、ナームに伝えられる位になる為には時間をかけた勉強をミムナのデータベースを利用させて貰いするしかなさそうだ。

これから向かうブービートラップの情報もせっせと集めている。

肝心な所は情報レベル5プラスなのでミムナとの会話の中で探りを入れて想像するしかないのだが、火星のトラップはミムナが解除したらしいが、ミムナが生まれる遠い過去に金星はトラップを作動させてしまい三次元世界は壊滅したらしい事は分かった。

生物と言えるかどうかは分からないが今でも金星には文明があり5次元世界で繁栄しているそうだ。

過去の反省からか三次元世界との交流は絶っているそうで、ミムナも何となく知ってるだけと言っていたが三次元での文明発展を諦める程の凄惨な攻撃を宙族は行ったのだろうと溢していた。

そんな者を呼び寄せる物がこの地球にも有ると知ってから見上げる天の川はとても恐ろしい物に感じた。

あの星の川の中心に蛮族も恐る種族が三次元限定で存在するのだと言われて震える体のない俺でも身震いを感じてしまった。

山上の時代まで起動しなかったのかそれとも俺達によって破壊されたのか、もしかしたらリザードマン達が見つけて破壊しているのかもしれない。

それはこの目で確認するまで分からない事であって今の不安を解消する遺跡はすぐそこに迫って来ていた。

この旅の目的、ブービートラップを内包しているナイル川下流の遺跡に到着するのは明日の夕方になっていた。

ミムナと最終の打ち合わせを済ませて鼻歌まじりで夜空を飛ぶナームの横顔を見る。

何を企んでいるのかニマニマ顔で先頭を歩くヨウとテラミスを眺めながらキャラバン全体を照らす光の水晶に力を注ぎ込んでいる。

重大案件が目の前なのに呑気な事だと思いながら、とりあえず楽しそうなので良しとしておこうと思った。

次は、遺跡2

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