表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 空想
11/26

EP1-CP11 類の10の霊力

 祝祭日のためか、商店区は人々でにぎわっている。行列ができている店も少なくない。

 街の中に類と雪の姿もあった。雪は不機嫌そうに類の後ろ歩いている。


「ねぇー、あんたが普通に街歩いてもいいの?」


「俺を知ってる警察官はあの二人だけだ。あの二人にさえ合わなきゃ問題はない」


 類が冷たく言い放つ。

 雪は自分が質問したにも関わらず、その答えを聞かずに、周りをキョロキョロ見回す。


「やっぱり、東京はすごいなぁ」


 雪がぼそっと独り言をこぼす。

 類は聞こえていないのか、無視しているのか、ゆっくり自分の家に向かって歩く。


「ねぇ」


 それでも無視して歩き続ける。


「さっきの話で思ったんだけど、なんで会社を8時までに閉めるの?」


「……」


「ちょっと聞いてる?」


「……俺は興味のない話は聞かない主義なんで」


 さすがにイラッときた雪は、類の後頭部を殴ろうとした。が、後頭部からレイノが出てきたため、わっと悲鳴を上げて、尻餅をついた。

 雪は多数の周りからの視線を浴びた。


「俺をほいほい簡単に殴れると思ったら大間違いだ」


 類が初めて後ろ振り返って喋った。

 雪はすぐに立ちあがり、服のホコリを取り払った。


「最っ低」


 雪は不機嫌というレベルではなく、激怒というレベルで類を追い越し、早歩きで先に進む。

 類は、しょうがない、というため息をつき、雪に向かって掌をかざし、小さく呟いた。


思考共有ジョイント


 早歩きで俯き、愚痴をぼそぼそと呟く姿は、まるで危ない人である。

 すると、雪の脳内がなにかを捕らえた。

 

 サービス残業というものなくすために、残業そのものをなくして、午後8時の会社の入社は法律で禁止されてる。

 あと、さっきはごめん……ってレイノが。


 という言葉が頭に入ってきた。

 しばらく立ち止まり、許そう、と思ったあと、類のほうへ振り向いた。が、類はいなかった。

 雪が類のいたところまで引き返すと、そこの店で、商品を見つめている類を発見した。

 その店には女性客が多く、男性の類が少し目立つ。

 雪が店の看板を確かめるため、上を見上げると『ジュエル』と書かれていた。つまり、アクセサリー専門店というわけである。


「何やっての?」


 店内に入り、目をギラギラとさせ、アクセサリーを見る類に恥じらいと軽蔑けいべつの意味で小声で声をかけた。


「見ればわかるだろ〜、アクセ見てんだよ♪」


 類にしてはめずらしい、活き活きと楽しそうな感じだ。そんな類に雪は少し引いていた。

 そして雪は確信した。この男がアクセサリー好きということを。


「あれもいいが、これも捨てがたいし……」


 アクセサリーを見ながらぶつぶつと呟く。

 そんなにいいものなのかと、雪がガラスケースの中のアクセサリーを見ると、髑髏どくろやナイフなどのダークなアクセサリーばかりが並んでいた。

 類のポケットからはみ出るものをよく見ると、やはりダークアクセばかりだった。


「あ、金もってねぇーんだった。……は〜」


 類はひどく落ち込んだようで、愕然がくぜんとなり、店を後にした。

 あんな類を初めてみた衝撃に、しばらく雪はそのまま呆然としていた。



  ‡―†―†―‡



「……せんぱ〜い、疲れました」


 先に階段を上る勇に、甘えるように言った。

 勇は階段の手すりから顔を出した。


「あと少しだ。早く上って来い」


 縦長で狭い階段なので、よく声が響く。

 それにしても長い階段である。彼らはもうすでに1時間近く階段を上っている。

 しばらく上った後、途中にあるドアの前で立ち止まった。


「ここだ」


「あ〜、階段だけでも疲れるのに、まだ……」


 竜が息を切らし、絶望する。


「開くぞ……」


 勇がゆっくりとドアを開ける。


「遅い!」


 突然スナック菓子が勇の顔面を襲う!


「1分遅刻!129円ね」


 ピンクのカラーサングラスを頭にかけ、同色のピンクの瞳が勇たちのほうを睨む。さらにロングヘアーの黒髪がピンクの瞳を強調しているため、その鋭さはいっそう増している。

 さらに恐ろしいのは、椅子に座る彼女の周りにある大量のスナック菓子である。1000個、いやそれ以上と言ってもおかしくない量である。彼女のテーブルとドアを結ぶ床以外は、すべてそれで覆い尽くされている。


「ん?……おい勇!竜はどうした」


 テーブルの上に足を組み、大きな態度で勇に怒鳴る。


「俺の後ろにいますけど」


「ちょっと先輩!」


 竜はさっきからやけに怯えている。

 すると、スナック菓子がいきなり動き出し、竜を包み込む。強制的に、竜を自分のとなりに連れ込んだ。


「よしよーし、お前はホントにかわいいなぁ」


 竜をとなりに座らせ、頭の双葉を撫でてペったんこにするが、やはりすぐに元の状態に戻り、それを面白がって撫で続ける。

 勇からみれば、いつもやられいる分、いい気味だと思っているに違いない。

 見てわかるとおり、竜にとって彼女は唯一、反抗できない人間なのである。


「それで今日は何のようだ?」


「類について話があってここへ来た」


「ふ〜ん……それで?」


「それについては竜から……」


「話しますから、撫でるのやめてください。あかねさん」


 そう竜が言うと、茜は竜の頭から手を退いた。


「まず質問です。霊力自体が霊ってあり得ますか?」


 茜は撫でていた手をあごに当てた。


「まずないわね。それってつまり死んでるか、1度死んだことがあ……」


 茜は何かを思い出したように、そして思い出したことがとても重大というような表情をした。


「……訂正。やっぱあり得る。過去にそういう奴がいたから」


「え!」


「確か、200年前ぐらいのヨーロッパにいたという話があった。そいつは霊力を10も使えたと聞いてるわ」


「10も…」


 驚きというより、二人はあ然となった。


「もし、類って奴が、そいつの生まれ変わりだとしたら、その確率はゼロではないはず」


「……10っていうのは、ちょっと、ありすぎじゃないのか?俺や竜でも応用して2つだってのに。多種霊力者マルチサイキックだとしても、4,5が限界だ」


 勇は驚きのあまり取り乱していた。


「霊が霊力っていうのは、思ってるよりも強力。霊のすべての能力が使えるだから、基本それぐらいが当然。応用したら、計り知れないわね……」


「それりゃ、勝てないはずですよ」


 竜がため息をついて、さりげなく茜のそばから離れようとしたが、頭を鷲掴わしづかみされ、椅子に引き戻された。


「それで、類ってやつの能力はわかったの?」


 竜は苦笑いしながら答える。


「…えーっと、潜在能力ハイド瞬間移動テレポート、空飛ぶ能力に、特殊な霊力放出バーストです」


「20点。瞬間移動テレポートは既に存在するから、何か別の移動系列能力。空を飛ぶ能力は、空中浮遊フロートね」


 茜は立ち上がると、汚れ一つない白衣の科学服が姿を現した。

 そして、スナック菓子の中から『銀白糖』を取り出しては、すぐ袋を破き、中身を取り出して、2,3個口の中に入れた。


「とりあえず、しばらくあいつからは退きなさい。下手に関わると奴らにられるよ」


「だが……」


 すると、茜が鋭い眼差しで真っ直ぐ勇を睨む。


「これはお前だけの問題じゃない。竜にもあたしにも関係がある。命を無駄にさせるな!」


 茜は静かに怒鳴った後、ドアを開けて「今日は帰りな」と言って、二人を部屋から出した。


「そろそろあたし達も、本格的に動く時期かな……」


 口の中の飴をガリガリッと噛み砕いた。




 そのとき、追い出された勇たちは、ゆっくりと階段を下りる。


「竜。お前、俺に隠し事してないか?」


「……」


 竜は勇の質問に表情を変えずに、黙って階段を下りる。


「あの女からも、茜からも、俺に警告突きつけてくる」


 あの女とは澪のことである。あの時の澪の言葉を思い出した。言葉は違うが、警告していることが、茜が警告したことと同じような気がした。


「澪がお前がわかると言っていた……」


「先輩。俺は隠してる事なんかない。ただ、先輩だけが知らないだけだ」


「どういうことだ?」


 勇は途中で立ち止まり、後ろを振り返った。


「先輩以外の霊力者サイキックはみんな知ってる。先輩と裕輝以外が知らないだけで……」


読んでいただきありがとうございます^−^

誤字脱字や気になる点などがあればご指摘ください。

次話もよろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ