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  作者: 空想
10/26

EP1-CP10 新東京

 あの事件から1週間。連続殺人事件はピタッと止まり、今のところここ以外は平和続いてる。

 私こと雪は、類という変態の家で無理やり住まされているので、平和とは言えない。


 類が言うには「おまえは霊力もなんももたない、ひ弱で一般的な女子だから危険だ」と言って、私をこの家から出してくれない。

 当の類はというと、夕方に出て行っては、朝方に帰ってくるという繰り返し。その間は、愛用のソファーでグースカ寝てばかり。「これが俺の仕事なんだ……。わかったら眠らせてくれよ」と言うけど、彼の仕事が未だにわかんない。たぶん彼と初めて会ったときに言っていた『ゴーストマネージャー』だと思うけど、それが具体的に何をするのかは不明。

 澪さんはというと、あれ以来突然と姿を消した。類は「ほっとけ」と冷たく言い放つだけ。

 12月23日午前9時現在、誰もいないこの部屋で私は、朝のニュースを見てる。「もう少しで2008年も終わりですね」「もうすぐクリスマス!」的なことばかり報道している。

 誰もいない部屋で、一人テレビを見てたって寂しくないよ。だって今日は祝祭日。あの子達が来るから。


「よっ!ユキィー」


 ほら来た。

 彼女たちはあれ以来、暇があればここに遊びに来るようなった。


「あれ、あいつは?」


「まだ帰ってきてないよ」


「ふーん、じゃあ出かけない?」


「え…でも…」


 類からは、「絶対外に出るなよ。出ても、わかるからな」という、ストーカー的発言を受けていたので、外に出るのはあまり気が進まなかった。


「あいつのことはいいから。行こ!」


「…うん」


 私は、まぁ、いいかな、という気持ちで類の家を後にした。



   ‡―†―†―‡


 

 雪と実果と優奈、女3人で、類の家から500メートルも満たないカフェに来ていた。黒のバックに白い文字で『Coffee Black』と書かれた看板目印だ。

 有名店なのか駐車場や店内は混雑している。

 その混雑中、運良く4人テーブルに座る女性達の姿があった。


「ホント、雪も大変だねー」


 類と同居しているということに対してと、前聞いた、自殺未遂をしたことと、その理由について話したことについての同情だった。


「まあね」


 コーヒーを少し飲んだあと、ホッとため息をつく。


「私、東京でこんなに落ち着けたの初めて」


「え!そうなの?」


「うん。元々私、千葉にいたから」


 大して距離はないのだが、千葉と東京ではけっこう違いがあるのである。特にここ数ヶ月は…。


「へぇーどうして東京に?」


「仕事探しに……」


 実果は、悪いことを聞いてしまったような気がして、すぐに言葉が思いつかなったが、雪が話しを続けてくれてホッとした。


「やっぱ、中卒の私を雇ってくれるとこってあまりないし、東京だったらあるかなぁと思ってきたけど、やっぱだめだった」


 それでもやはり言葉が見つからなかった実果が、空気を壊さないために頑張って言葉を捜していると、以外なことに隣にいた優奈が口を開いた。


「それで、どうしたんですか?」


 その話から離脱して〜。

 実果が心から願った言葉である。


「それで自殺未遂。類と出会って、今ここでこうなってるってわけ」



 だが、実果が思ってるほど、雪は自分の自殺未遂に関しては何も思っていなかった。


「だけどさ。この東京には驚いたわよ。私がイメージしてたより非現実的だった」


「まぁ……。この数ヶ月で東京は180度回転したから」


「どんな風に?」


 好奇心に満ちた目で実果をじっと見る。


「まず、街の地形が変わったし、それに……」


「地形が変わった!?」


「ええ、そうだけど……」


「何、この東京という場所はシーズン置きに地形を変えるんですか?ていうかそんなことができるんですか?」


「それはわかんないけど……と、とにかく街が変わったし、学校の制度も変わったし……」


「女性3人も集まって、恒例のご近所話ですか?」


 するといきなり、空いていた雪の隣の席に座り、大きな態度でもたれた。


「ちょ、あんた何よ!」


 類が座ったことに実果が不機嫌そうな顔で怒鳴る。


「こいつが店から勝手に出るから悪いんだろ?」


 店?


 女性3人の頭に疑問が過ぎったが、そのまま聞き流した。


「今の話、俺が説明していいか?お前らも知らない部分もあるだろうし」


「あんたがすべて知ってるような言い草ね」


「だって現に知ってるし、俺天才だし」


 実果の顔がますます不機嫌になる。雪のほうは怒る気もせず、呆れていた。


「説明するぞー。まず、東京は3ヶ月前に工事をした。その工事で、道路から建物に至るまで、すべてを変えた。そして、東京23区は今や3区までに減った」


「いったいどうやって?」


「だまれ、質問は後だ」


 雪はさすがに実果と同じく不機嫌な顔になった。


「通勤区、通学区、商店区の3つ。通勤区は残業などをなくすために作られた会社密集地域で、午後8時以降の会社への侵入を禁止するシステムだ。しかも、会社はもはや個人の物ではなく、国のものになっている。建物そのものは国のものだが、内容はそれぞれ個人が管理している。だから、1つのビルに会社が何十個というのもおかしくはない。もちろん東京だけだが…」


「それはあたしも初耳」


 優奈も同じくというようにうなずく。


「それでちゃんとやっていけてんの?」


「ああ、もちろんだ。それで国の不景気は回復したし、順調そのもの。まぁ、その理由としては、会社が倒産しそうなときは国が支援するが、いらない会社は強制的にやめさせられる。だが、その連立する会社に勤めることができるから、失業者を最小限に抑えられるところかな」


「どうりで物価が安くなったはずだわ」


「で、おまえなんかが通う通学区は……」


「それは知ってる。1つの地域に小中高大の学校が密集していて、学校同士のコミュニケーションや、通学のし易すいようにできてるんでしょ?便利だよね〜。あと、寮も充実して、今では小学校の寮もあるんだよー」


 優奈が自慢げに話すが、類が興味ないという顔で目を背けている。


「もういい?」


 優奈がまた不機嫌な顔に戻った。


「商店区は別に説明するほどでもない。渋谷とか秋葉とかとなんら変わらん」


「思ったんだけど……」


 今まで聞いていた雪が問う。


「それを都民は了解したの?」


「当然だ。教育費、工事のための引越し代は国が負担。会社も倒産しにくいうえに、失業しないとなると断るほうがおかしい。だが、すぐにそれを信じるというわけではなかったがな」


「……あ〜あれですね。あれは誰も信じないかと思いましたけど、まさか証明するとは」


「まぁ、結局は霊力だったんだがな」


「そうだったんですか?」


 雪と実果を置いてふたりだけで話を進める。

 スイッチが入ったのか、今までにないテンションで類と会話する優奈に雪は少し驚いた。

 その気持ちを抑え、その次に思っていることを言い放った。


「ちょっと私たちを置いていかないでよ!」


「そうよ!あたしにも説明してよ」


 次は優奈が説明を始めた。


「東京が工事されるときね、本当にそんなことができるのかって、一部の都民が反論したの。それで、国が東京都のみで、テレビを通じて、それを証明させたのよ」


「見たかったな〜」


「でも、どうして国は、東京をそんなにまでして、改善させたかったの?それにどうやって短時間でここまで……」


「短時間でできたのは……正義の暗殺者キラーたちが全部霊力で工事したからさ。国がなぜそれをするかについては……あれだ。国の繁栄のためだろ?その考え方はいいが、方法が間違っている。正義の暗殺者キラー霊力者サイキックを殺して捕獲し、解剖して、霊力を国のものにするというのが目的だろうな。」


 すると、実果と優奈は目を丸くして、あ然とした。


「……サイキックって私達のことよね?それこそ初耳なんですけど」


「……もしかして、あの警告はこのために」


「そのとおりだ。あの警告は知り合いに頼んで、全霊力者サイキックに俺が警告した言葉だ」


 類は深刻な顔になって、二人に顔を近づけた。


「これから正義の暗黒者やつらはますます活発になる。自分達も含め、その周りの霊力者サイキックにも再度お前達からも警告しろ」


「でも国はどうしてこんなことを!?」


 雪が思わず大声で叫ぶが、人が混雑していて、周りにはあまり気づかれていない。


「国、政治家がやってるわけじゃない。お前には話したが、自殺者達の悪霊がそうさせているだけだ」


「まさか話しには聞いていたけどここまでの影響だったなんて」


 実果が顎に手を当てる。


「ん?お前らも知ってるのか?」


「はい…。私達の生徒会メイジャーの先生が、説明してくれたんです」


類の疑問に優奈が答える。


「ふ〜ん」


 そう納得して、類は立ち上がった。


「それじゃ、俺は行くわ。ホント、お前らと話してると疲れるっ。おい行くぞ」


 捨て台詞を残して、雪を引っ張り、類は店の外に出て行った。


「なんなのよあいつ!」


 実果は一気にコーヒーを飲み干して、乱暴に席を立ち、支払いを済ませて、二人は店を去った。


読んでいただきありがとうございます^−^

誤字脱字や気になる点などがあればご指摘ください。

次話もよろしくおねがいします。

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