第四話 「幼い魔王は覚悟を決める」
23:00にもう一度投稿します。
「そうか、余の現在は父上の愛の証なのだな......」
レヴィは胸にじんわりと熱いものが染み込んでいくのを感じた。
「ダンジョンも、同じ街で魔族と人間種が暮らしている光景も、そして余自身も......」
「魔物や魔族と人間種が共存するためのシステムは、坊っちゃまの存在から思いついたと言います。魔族、魔物は戦闘を、人間種も素材や闘争本能を死のリスク無しに得られるダンジョンを」
子供らしくない感傷に浸るレヴィの体の向きを反転させて、リアは遠方を指差した。
「さあ坊っちゃま、あの木の後ろに一体魔物がいます」
レヴィはそれを聞いてリアの腕の先の方向を見つめる。
「ここ一帯の魔物は弱く、魔族の血を引く坊っちゃまに傷つけることなどできません」
リアは、一瞬不安の色を顔に浮かべたレヴィを背後からそっと抱きとめて耳元で囁く。
「それに坊っちゃまには先代が遺してくださった魔物を従えるチカラが宿っていますから。でも、坊っちゃまならきっとチカラ無しで主従関係を結べると思います」
「……余は父上の期待に応えてなければいけない、が、余は今それ以上に挑戦してみたい気分だ」
明日を見据えるような目でそう言い切ったレヴィは、リアに優しく背を押されるまま歩き出した。
「親離れのようで少しだけ、寂しいですね……」
だんだんと近くなってきた例の木。レヴィは足を潜めながら歩を進める。
「魔物……。リアは魔法を使えると言っていたな。い、いや、怖くなんてないぞ! 余は父上の息子なのだ、魔物の一体や二体……」
しかしさっきまでの威勢の良い表情は何処かへ行ってしまい、独り言まで始めてしまう。
リアの指差した木はそれなりに高く、生茂る葉の所々に赤い果実が見え隠れする。また幹が太いため反対側にいるという魔物の姿を確認することは出来ない。
それがレヴィの不安を一層煽る原因となったのか、木のすぐ前まで来たレヴィは足を止める。
「この反対側に、魔物がいるのだな……」
だがレヴィはふうっと息を吐いて覚悟を決めたようだ。一歩だけ下がって木の周りをゆっくり回り始めた。
ドクン、ドクン!
激しく音を立てる鼓動がレヴィをより焦らせる。春だというのに冷や汗が出て、レヴィの頰を伝って落ちていった。
(余は、余はレヴィアストル・クラディールーー!)
もどかしくなってしまったレヴィはバッと木の陰から飛び出て、遂にその魔物と対面するーー
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